デイヴ・グルーシンDave Grusin1934年6月26日 - )は、アメリカ合衆国コロラド州リトルトン出身のジャズピアニストフュージョンアダルト・コンテンポラリー及び映画音楽を代表するピアニスト、編曲家作曲家音楽プロデューサー。フュージョン/アダルト・コンテンポラリー・レーベルであるGRPレコード創設者の一人で、社長を務めていた。1995年以降はソロ活動に身を置き、後にフィル・ラモーンN2Kエンコーデッド・ミュージックの設立にも参画。

デイヴ・グルーシン
Dave Grusin
デイヴ・グルーシン(2008年)
基本情報
出生名 Robert David Grusin
生誕 (1934-06-26) 1934年6月26日(90歳)
出身地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 コロラド州リトルトン
ジャンル ジャズフュージョンアダルト・コンテンポラリー
映画音楽
職業 ピアニスト編曲家音楽プロデューサー、レーベル創設者、作曲家
担当楽器 ピアノキーボード
活動期間 1962年 -
レーベル コロムビアGRPN2K
公式サイト www.grusinfilm.com

代表曲に、シドニー・ポラック監督映画コンドル』のテーマ曲、ウール・グロスバード監督映画『恋におちて』のテーマ曲「Mountain Dance」(同名のアルバムからの採録)、マーク・ライデル監督映画『黄昏』のテーマ曲等がある。

米国グラミー賞受賞10回、ノミネーション1回、アカデミー賞受賞1回、ノミネーション7回、ゴールデン・グローブ賞ノミネーション4回。

プロデューサーでキーボーディストのドン・グルーシンは実弟にあたる。

バイオグラフィ

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音楽一家に育ち、幼い頃から音楽を学んでいる。1956年、コロラド大学音楽科を卒業後、兵役に就く。除隊後に再びニューヨークで修学(ネット上では大学で獣医学を学んだという経歴が書かれている[1][2]が誤りである)。高校生までは獣医になるつもりであったが、大学へ進むにあたって音楽の道へ路線変更している[3][4]

1960年代に入ると『アンディ・ウィリアムズ・ショウ』の音楽監督を務め、以後様々なドラマや映画に楽曲を提供していく。この頃よりモダン・ジャズを演奏するようになる。1967年12月にはグルーシンが音楽の一部を担当した映画『卒業』が公開され、同作のサウンドトラック・アルバム『卒業-オリジナル・サウンドトラック』(1968年)により、グルーシンはポール・サイモンと共に、自身初となるグラミー賞受賞を果たした[5]1970年代に入るとクロスオーバーのムーブメントに乗り、クインシー・ジョーンズセルジオ・メンデスと共に活動の幅を広げる。ギタリストのリー・リトナーやサックス・プレイヤーの渡辺貞夫とも共演を重ねる。

1972年、元ドラム奏者で、レコーディング・エンジニアのラリー・ローゼンと独立系音楽製作事務所 “グルーシン・ローゼン・プロダクションズ(Grusin/Rosen Productions)” を共同設立。後述のヒットメイカーとしての好成績を上げた後、1978年アリスタ・レコード(Arista Records)のディストリビューションのもと、GRPレコード(GRP Records)を設立。その後1983年MCAにディストリビューションを移籍。そして1986年モータウンゲフィンなどと共にMCAに買収される。GRPレコードは、米国でも最大手のフュージョン/アダルト・コンテンポラリー・レーベルの一つとなった。

1972年のGRP設立以降、グルーシンは、パートナーのローゼンとともに、プロデューサーとしてアール・クルーノエル・ポインタートム・ブラウンデイヴ・バレンティンボビー・ブルーム横倉裕パティ・オースティンアンジェラ・ボフィルダイアン・シューア等数多のアーティストを輩出した。

GRPのビジネスやプロモーションでの来日に加えて、1973年にはクインシー・ジョーンズ率いるビッグバンドの一員として、1978年にはリー・リトナーのバンド ”フレンドシップ(ジェントル・ソウツ)” のメンバーとして、他にも渡辺貞夫のグループに参加するためや、自らビッグバンドを率いるなどしてコンスタントに来日しており[6][7][8][9][10]、2024年11月にもリー・リトナーと共に日本へ来る予定である。

リー・リトナーとの合作、『Harlequin』収録「Early A.M. Attitude」で第28回(1985年度)グラミー賞ベスト・アレンジメント部門を受賞している。1988年には、映画『ミラグロ/奇跡の地』でアカデミー作曲賞も受賞している。同年にバークリー音楽大学より、翌1989年には母校であるコロラド大学より、それぞれ名誉博士号を授与されている。

1994年トミー・リピューマがMCAの取締役に就いたことから、リピューマがGRP社長に就任。その後ローゼンが会長を、グルーシンが副会長を務めている。なお、ビリー・ジョエルなどの作品でグルーシンと関わりのあるフィル・ラモーンによるN2Kエンコーデッド・ミュージックの設立にも関与し、グルーシンはラモーンの制作による『ウェストサイド・ストーリー』をリリースしている。

2000年に再びリトナーとコラボレートし、クラシッククロスオーバーした『Two Worlds』を発表。2008年にもこのクラシック・クロスオーバーの企画の第2弾『Amparo』を発表している。

2018年には、伝記的内容のドキュメンタリー作品『Dave Grusin:Not Enough Time』が制作・公開された[11]

受賞歴

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グラミー賞
  • 第10回グラミー賞(1968年分) 最優秀作曲(映画もしくはテレビ向け) 『卒業』 - The Graduate , Dave Grusin & Paul Simon(作曲者)
  • 第26回グラミー賞(1983年分) 最優秀インストゥルメンタル編曲 "Summer Sketches '82"(編曲者)(『ライブ・アット・武道館』 所収)
  • 第28回グラミー賞(1985年分) 最優秀インストゥルメンタル編曲 "Early A.M. Attitude", Dave Grusin & Lee Ritenour(編曲者)(『ハーレクイン』所収)
  • 第32回グラミー賞(1989年分) 最優秀インストゥルメンタル・バックグラウンド作曲アルバム(映画もしくはテレビ向け) 『恋のゆくえ:オリジナル・サウンドトラック』 - The Fabulous Baker Boys(作曲者)
  • 第32回グラミー賞(1989年分) 最優秀インストゥルメンタル編曲(ボーカルあり) "My Funny Valentine"(編曲者)(『恋のゆくえ:オリジナル・サウンドトラック』所収)
  • 第32回グラミー賞(1989年分) 最優秀インストゥルメンタル編曲『ミラグロ/奇跡の地』 - Suite From The Milagro Beanfield War(編曲者)
  • 第34回グラミー賞(1991年分) 最優秀インストゥルメンタル編曲 "Medley: Bess You Is My Woman/I Loves You Porgy"(編曲者)(『ガーシュウィン・コネクション』所収)
  • 第36回グラミー賞(1993年分) 最優秀インストゥルメンタル編曲 "Mood Indigo"(編曲者)(『デュークへの想い』所収)
  • 第37回グラミー賞(1994年分) 最優秀インストゥルメンタル編曲 "スリー・カウボーイ・ソングス"(編曲者)(『オーケストラル・アルバム』所収)
  • 第45回グラミー賞(2002年分) 最優秀インストゥルメンタル編曲(ボーカルあり) "Mean Old Man"(編曲者)(ジェームス・テイラー(『オクトーバー・ロード』所収)
アカデミー賞
その他の賞
  • Charles E. Lutton Man of Music Award Recipient, Phi Mu Alpha Sinfonia Fraternity - 1991年

ディスコグラフィ

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1960年代
  • Subways are for Sleeping 1962年
  • Piano, Strings, and Moonlight 1963年
  • Kaleidoscope 1964年
1970年代
  • Three Days of the Condor (DRG/EMI) 1975年
  • 『ディスカバード・アゲイン!』 - Discovered Again!(1976年6月録音)(Sheffield Lab) 1976年
  • ワン・オブ・ア・カインド』 - One of a Kind (Polydor/GRP) 1977年(#3."Catavento"が『鶴瓶・新野のぬかるみの世界』のオープニング・エンディング曲に使用された)
  • チャンプ:オリジナル・サウンドトラック』 - The Champ (Varèse Sarabande) 1979年(サウンドトラック)
  • 『マウンテン・ダンス』 - Mountain Dance (GRP) 1979年(#5のタイトル曲はのちに『恋におちて』のテーマ曲に採用された)
  • The Electric Horseman (Varèse Sarabande) 1979年
1980年代
1990年代
2000年代
  • リー・リトナーと共同名義, 『トゥー・ワールド』 - Two Worlds (Decca) 2000年
  • 『ディナー・ウィズ・フレンズ』 - Dinner with Friends (Jellybean) 2001年(サウンドトラック)
  • 『NOW PLAYING:映画テーマ集:ソロ・ピアノ』 - Now Playing: Movie Themes - Solo Piano (GRP) 2005年
  • ザ・ヤクザ』 - The Yakuza (Motion Picture Soundtrack) 2005年(サウンドトラック。3,000部限定。)
  • Lucas limited edition, 2000 copies (Varèse Sarabande) 2006年
  • Author! Author! limited edition, 2000 copies (Varèse Sarabande) 2007年
  • The Scorpio Letters limited edition of 3000 copies (Film Score Monthly) 2007年
  • リー・リトナーと共同名義, 『トゥー・ワールド Vol.2』 - Amparo (Decca) 2008年
  • 0022アンクルの女:オリジナル・サウンドトラック』 - The Girl from U.N.C.L.E. (Varèse Sarabande) 2008年
  • The Heart Is a Lonely Hunter limited edition, 3000 copies (Film Score Monthly) 2009年
2010年代
  • THE HENRY MANCINI INSTITUTE ORCHESTRAと共同名義, An Evening with DAVE GRUSIN (Heads Up) 2010年
  • One Night Only! (C.A.R.E./Intergroove) 2011年

フィルモグラフィ

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テレビ出演

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  • 『Song to soul〜永遠の1曲』 (BS-TBS)第31回

楽曲の主な扱い

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脚注

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  1. ^ Dave Grusin - TOWER RECORDS ONLINE”. tower.jp. 2024年7月31日閲覧。
  2. ^ [インタビュー|OFFSTAGE]デイヴ・グルーシン | News & Features”. Blue Note TOKYO (2024年). 2024年7月31日閲覧。
  3. ^ Dave Grusin | Encyclopedia.com”. www.encyclopedia.com. 2024年7月31日閲覧。
  4. ^ News” (英語). DAVE GRUSIN (2020年9月1日). 2024年7月31日閲覧。
  5. ^ The Graduate - Simon & Garfunkel | AllMusic - Charts & Awards - GRAMMY Awards
  6. ^ デイヴ・グルーシン来日記念特集 | Special”. Billboard JAPAN. 2024年11月6日閲覧。
  7. ^ クインシー・ジョーンズ 日本公演 1973”. 音楽感想文 (2021年7月4日). 2024年11月6日閲覧。
  8. ^ Mothers 通信 |マザーズ通信、10月3日、リー・リトナー、デイヴ & ドン・グルーシン、スティーヴ・フォアマン、エイブラハム・ラボリエル、アレックス・アクーニャ、フレンドシップ!!”. mothersrec.blog.fc2.com. 2024年11月6日閲覧。
  9. ^ 『Dave Grusin and The GRP All-Stars Live In Japan』”. "楽音楽"の日々. 2024年11月6日閲覧。
  10. ^ 『ライヴ・アット・武道館:デイヴ・グルーシン&ドリーム・オーケストラ』”. かえるの音楽堂. 2024年11月6日閲覧。
  11. ^ Bentree, Barbara (2018-04-01), Dave Grusin: Not Enough Time, Tom Brokaw, Dave Grusin, Quincy Jones, https://www.imdb.com/title/tt9858456/ 2024年7月31日閲覧。 

外部リンク

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