デイゴ
デイゴ(梯梧、Erythrina variegata)は、マメ科デイゴ属(エリスリーナ属)の落葉高木[1]。デイコやエリスリナともいう。インド、マレー半島などの熱帯アジア、オーストラリアが原産[1][2]。日本では沖縄県[1](あるいは奄美大島[3])が生育の北限とされている。
デイゴ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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樹形(沖縄県那覇市、2007年3月)
花
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分類(APG III) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Erythrina variegata | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
デイゴ |
鹿児島県奄美群島でも加計呂麻島の諸鈍海岸で約80本の並木道となっているなど、あちこちでデイゴの大木が見られるが、交易船の航海の目印とするため等で沖縄から植栽されたものといわれる[4]。
生態
編集極めて丈夫で、生長がとても早い樹である[5]。花は深紅色の総状花序[6]。花期は沖縄では3月から5月頃である[6]。ただし、デイゴの開花度は植栽されている場所や植物の個体によって異なり、同一個体の中でも位置や枝によってかなり差異がある[3]。
葉は全縁の三出複葉[1]。葉身は広卵形ではっきりした葉脈があり、長い葉柄を持つ[2]。落葉樹であり本来は開花に先立って落葉するが、沖縄では落葉しないままのデイゴも多く、北限に近い亜熱帯で湿潤な気象環境などの影響により結果的に落葉しないまま非開花状態となっていると考えられている[3]。
観賞用や緑化庇蔭樹として利用されるほか、漆器(琉球漆器)の材料としても使われる[3]。
デイゴの生育に関しては、台湾方面から飛来・帰化したとされるコバチの一種デイゴヒメコバチ (Quadrastichus erythrinae) による被害が相次いでいる[7]。
名称
編集学名の属名 Erythrina(エリスリーナ)はギリシア語の「赤い」という言葉の意味からきており、デイゴの花の明るい赤色に基づく[5]。英名を coral tree(コーラル・ツリー)といい、花の赤色を珊瑚に見立てたものである[5]。
デイゴの和名の由来はよく分かっておらず、一説には「大空」が訛ってデクと言ったことからの名だという説もある[2]。デイゴの名称(和名や学名)は歴史的に混乱がみられたと指摘されている[3]。呉継志の『質問本草』(1837年)には「梯姑」「デーグ」「デイコ」とあるが、漢字の読み方および方言名の呼び方の文字化については研究者で意見が分かれる[3]。また『沖縄物産誌』、『中山物産考』、『質問本草』など古書に由来する呼称は、デイグ、デイコ、デーグ、デーゴの4つで、デイゴはこれらには含まれていない[3]。
学名も学者によって同一でなく、園芸書によってまちまちだったと指摘されている[3]。
なお、海紅豆(かいこうず)が別名とされることが多いが、これは別種のアメリカデイゴ(鹿児島県の県木)のことである。
沖縄県外では奄美群島のほか、小笠原諸島にも自生しており、現地ではムニンデイゴやビーデビーデ、南洋桜(なんようざくら)などとも呼ばれる[8]。ただしこの小笠原諸島のデイゴを本種とは別のムニンデイゴ(Erythrina boninensis)という固有種であるとする説もかねてより存在している[9]。
ハワイ産のシロバナデイゴ(Erythrina variegata f. alba[10][11])も沖縄県に導入され、デイゴより早く咲くことが知られる[10][12]。
県花
編集沖縄県の県花でもあり、1967年(昭和42年)に県民の投票によって「沖縄県の花」として選定された。オオゴチョウ、サンダンカとともに沖縄県の三大名花に数えられる[1]。沖縄本島の那覇空港を出たところや、那覇市内に続く道筋にはデイゴの並木が続いている[5]。
デイゴが見事に咲くと、その年は台風の当たり年で、天災(干ばつ)に見舞われるという言い伝えがある(THE BOOMの楽曲「島唄」の歌詞にも書かれている)。また、県内では「やしきこーさー(屋敷壊さー)」とも呼ばれることもあるが、これは根の力が強く、家の近くに植えると根が伸びて家を傾かせてしまうからであるという[13]。
脚注
編集- ^ a b c d e “デイゴ”. 林野庁 西表森林生態系保全センター. 2023年6月23日閲覧。
- ^ a b c 辻井達一 1995, p. 219.
- ^ a b c d e f g h 上里健次、外山利章「沖縄におけるデイゴの開花特性とその花成要因」『沖縄農業』第28巻第1号、日本植物防疫協会、1993年、2-10頁。
- ^ 鹿児島県瀬戸内町役場商工観光課編『まんでぃ「加計呂麻島・請島・与路島をめぐる旅」』p158「デイゴ並木」 2016年、鹿児島市、トライ社
- ^ a b c d 辻井達一 1995, p. 218.
- ^ a b “沖縄県のシンボル”. 沖縄県. 2023年6月23日閲覧。
- ^ “デイゴヒメコバチ”. 天敵Wiki版Web昆虫図鑑. 2012年8月18日閲覧。
- ^ ダニエル・ロング、橋本直幸『小笠原ことばしゃべる辞典』 3巻、南方新社〈小笠原シリーズ〉、2005年5月1日、157頁。ISBN 4-86124-044-1。
- ^ 豊田武司 編『小笠原植物図鑑』(第2版)アボック社、1981年10月10日、100頁。ISBN 4-900358-15-0。「小笠原固有の種としたが,自生説,移植説もあり,特に近年,屋久島~琉球,台湾にかけて分布するデイゴと同一種とする意見が多くなっている。」
- ^ a b 池原直樹『沖縄植物野外活用図鑑』 7巻、新星図書出版、1989年2月16日、235頁。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003年). “シロバナデイゴ”. 植物和名ー学名インデックス YList. 琉球大学熱帯生物学研究センター西表研究施設. 2024年3月27日閲覧。
- ^ 池田哲平「白いデイゴ 清らかに咲く 「赤」より寒さに弱く、貴重な姿」『琉球新報』2024年2月28日。2024年3月27日閲覧。
- ^ a b “デイゴとアメリカデイゴと土用”. 一般社団法人北九州緑化協会. 2023年6月23日閲覧。
参考文献
編集- 辻井達一『日本の樹木』中央公論社〈中公新書〉、1995年4月25日、218 - 219頁。ISBN 4-12-101238-0。