デアドラ
デアドラ(ディアドラ(Deirdre)もしくはデアドリー(Derdriu))はアイルランド神話のアルスター伝説群(アルスターサイクル)に登場する悲劇のヒロイン。
デアドラはフェリミ・マック・ディル (Fedlimid mac Daill) の娘として生まれ、ドルイドのカスバド (Cathbad) により「素晴らしい美女になるが、王と卿(戦士)が彼女の為に争い命を落すことになるだろう」と予言され、「災いと悲しみを招く者」「危険」という意味を持つデアドラと名づけられる[1][2]。その予言を聞き、居合わせた戦士達はデアドラを殺すことを提案するが、アルスター王のコノール・マック・ネッサ(コンホヴァル・マク・ネサ)が彼女を助け、自らが育てて、後に妻にすることを申し出て引き取ることになった[1][2]。デオドラはコノール・マック・ネッサの元で、砦に隔離されて成長する。
年頃になったデアドラは、ウシュナハ族のノイシュ (Naoise) と恋におち、彼の兄弟とともにスコットランドへと逃げ出す。しかし、ノイシュと彼の兄弟は、コノール王の策略により、ファーンマグの王イーガン・マクダルハクトに殺され、この間の戦いにより多くのアルスターの戦士が命を落とした。デアドラはコノール王の元に戻されるが、鬱々として楽しまず日々を過ごした。1年ほど経ったときに、コノール王に嫌いなものを尋ねられたデアドラは、愛するノイシュに死をもたらしたコノール王とイーガンと答える。答えを聞いたコノール王は、自分だけでなくイーガンにもデアドラを与えると言い出し、2人の間にデアドラを座らせて馬車(または戦車)を走らせ、嫌いなものに挟まれているデオドラを嘲笑するという行動に出る。この仕打ちにデアドラは車から身を投げ出し、岩に頭を打ち付けて自殺する[1][2]。
デアドラの墓からはイチイの木が生え、同じくノイシュの墓から生えたイチイと枝を絡ませ、引き離すことができなくなったという[1]。
脚注
編集関連作品
編集- 『デアドラ』 1907年発表のウィリアム・バトラー・イェーツによる悲劇。
- 『悲しみのデアドラ』1910年発表のジョン・M・シングによる悲劇。
関連項目
編集- ディアドラ (哨戒艦) - この人物の名に由来するアイルランド海軍の哨戒艦。退役済み。
- ディアドラ (競走馬) - この人物の名に由来する日本の競走馬。
- グラーニア - ケルト神話の中の「年配の王と若い婚約者(妻)女性と若い男性の三角関係」という類型譚のヒロイン。
- ヘレネー - トロイア戦争の引き金となった美女。