ティンメン/事の起こりはキャデラック
「ティンメン/事の起こりはキャデラック」(Tin Men)は1987年のアメリカ合衆国のコメディ映画である。監督はバリー・レヴィンソン、出演はリチャード・ドレイファス、ダニー・デヴィート、バーバラ・ハーシーなど。1963年のボルチモアを舞台に、小さな自動車事故から始まった2人のセールスマンの滑稽な争いを人情味豊かに描く。
ティンメン/事の起こりはキャデラック | |
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Tin Men | |
監督 | バリー・レヴィンソン |
脚本 | バリー・レヴィンソン |
製作 | マーク・ジョンソン |
出演者 |
リチャード・ドレイファス ダニー・デヴィート バーバラ・ハーシー |
音楽 | ファイン・ヤング・カニバルズ |
撮影 | ピーター・ソーヴァ |
編集 | ステュー・リンダー |
配給 | タッチストーン・ピクチャーズ |
公開 |
1987年3月6日 劇場未公開ビデオスルー |
上映時間 | 112分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | $11,000,000 |
興行収入 | $25,400,000 |
あらすじ
編集セールスマンのビル"BB"・バボウスキー(リチャード・ドレイファス)は、買ったばかりのキャデラックで自動車ディーラーから道路に出ようとした途端、同業者のセールスマンのアーネスト・ティリー(ダニー・デヴィート)が運転するキャデラックと衝突してしまう。2人とも非を認めず激しく罵り合った。
BBは詐欺まがいの巧みなセールストークでリフォーム用外壁材を売り歩く腕利きセールスマン。上等なスーツを着てキャデラックを乗り回し、同僚たちと仕事の自慢話をするのが日課だった。一方ティリーはセールスの才能にあまり恵まれておらずいつも機嫌が悪い。しかもわずかな収入を競馬に使い込んでしまうので妻のノラ(バーバラ・ハーシー)との関係は冷めきっていた。
ある晩、BBは偶然見つけたティリーの車のヘッドライトを壊し、翌日ティリーはBBの車のガラスを全部叩き割って仕返しした。すると今度はBBはノラを誘惑し、女房を寝取ってやったぞとティリーに電話をした。見兼ねた同僚たちが話し合いの場を設けてやるが喧嘩はますますエスカレートし火に油を注ぐ結果となった。
だがあるとき、BBの大先輩のモー・アダムス(ジョン・マホーニー)が仕事中に心臓発作で倒れた。貯金も年金も保険も無いから家族に何も残してやれないと弱音を吐くモーの姿にBBは動揺する。ティリーのほうは税金を滞納したせいで家と家財を差し押さえられてしまい、ノラはBBの家に住むことになった。もはや喧嘩どころではなく、2人の感情に変化が表れ始めた。
巷では悪徳リフォーム業者の苦情が相次いでおり、州は住宅改善委員会を発足して調査を始めた。ティリーの上司(J・T・ウォルシュ)は営業成績の悪いティリーを差し出して委員会と取り引きする魂胆だ。BBは自らが犠牲になって証言台に立つつもりだった。公聴会に召喚されたBBとティリーは販売員許可証を取り消された。ティリーは最後まで納得がいかない様子だがBBはむしろ清々しい気分だった。
会場を出るとティリーの車が国税局に持って行かれ無くなっていた。BBは足のないティリーを車に誘う。すっかり打ち解け合った2人は早速次の仕事の話しを始めるのだった。
出演
編集出演 | 役名 | 役柄 |
---|---|---|
リチャード・ドレイファス | ボブ”BB”・バボウスキー | セールスマン |
ダニー・デヴィート | アーネスト・ティリー | セールスマン |
バーバラ・ハーシー | ノラ・ティリー | ティリーの妻 |
ジョン・マホーニー | モー・アダムス | BBの同僚 |
シーモア・カッセル | チーズ | |
マット・クレイブン | ルーニー | |
アラン・ブルーメンフェルド | スタンリー | |
リチャード・ポートナウ | カーリー | |
マイケル・タッカー | ベーグル | |
ブルーノ・カービイ | マウス | ティリーの同僚 |
ジャッキー・ゲイル | サム | |
スタンリー・ブロック | ギル | |
J・T・ウォルシュ | ウィング | ティリーの上司 |
ブラッド・サリヴァン | マスターズ | 委員会の審査員 |
ファイン・ヤング・カニバルズ | - | クラブのバンド |
作品概要
編集バリー・レヴィンソン監督の故郷であるボルチモアを舞台にした4部作のうち本作は2作目である[1]。他の3作は「ダイナー」(1982)、「 わが心のボルチモア 」(1990)、「リバティ・ハイツ」(1999)。
映画ではセールスマンらがダイナーで会話に興じるシーンが何度か見られるが、これはレヴィンソン監督の若いころの記憶が基になっているという[2]。『1963年頃にダイナーで友人たちと食事をしていると、隣のテーブルに座る年上の男たちが詐欺のような会話をしていた。派手なスーツを着て世間に対して反抗的な雰囲気の人たちだった』。ダニー・デヴィートたちが朝食をとるシーンで、後ろの席にいる若者グループがその頃のレヴィンソンたちである。劇中にたびたび登場するダイナーは「ダイナー」と同じ場所を使用しており[3]、「ダイナー」でマイケル・タッカーが演じたベーグルというキャラクターが本作にも登場している[4]。
また、撮影スタッフが「道路から少し奥まった、芝生の庭がある3階建ての木造住宅」という条件に見合ったロケ地を探しているとき、レヴィンソン監督は「それならスプリングデール・アベニュー4211番地に行けばあるよ」と教えた。そこはレヴィンソンが生まれ育った家であった。リチャード・ドレイファスとジョン・マホーニーがLife誌の取材だと言って客を騙すシーンで使用された[5]。
プロダクションノートには一般的なセールスマンのバックグラウンドが詳細に書かれている[6]。
- 『午前11時頃、セールスマンたちはダイナーに集まって遅い朝食をとり、ピムリコ競馬場で遊んでから仕事へ出かける。次に調査員に扮した同僚と一緒にキャデラックを転がして、くたびれた住宅を探し回る。キャデラックは客を信用させるのには最適なアイテムだ。
- 家に上がると住人がうんざりするほど長居をして契約書にサインしたくなるよう仕向ける。すかさず施工業者が材料を搬入し、真っ赤なペンキで「この面からスタート」と外壁に書いて後戻り出来ないようにする。キャンセルはされない。中断したらご近所に「金に困ってるのだろう」と噂されるからだ。彼らにとってセールスとは合法的な詐欺のようなものだ。
- 工事費が1,000ドルならば契約額は2,400ドル。バックマージンは800~900ドルで、セールスマンと調査員とで6:4の割合で受け取る。
- 営業所は郊外にあり看板も掲げていないので実態がわかりにくい。セールスマンらは会社に拘束されるのを嫌がりフリーランス契約のため、営業所にいる時間はほとんどなく車や飲食店が仕事場になっている。彼らの勤務時間は1日に4時間程度で週に4日しか働かない。成功して大金持ちになった者もいるが、ほとんどがギャンブルや酒に使ってしまい貯金もなければ保険にも加入せず年金も保証されない。
- 1963年にメリーランド州は住宅改善委員会を開設し、訪問販売に一定のルールを設けたため多くのセールスマンが転職を余儀なくされた。』
なお、タイトルの“Tin Men”「ブリキ男たち」とは、アルミサイディング(金属製の外壁材)のセールスマンを揶揄した当時の俗語である。
挿入歌
編集曲名 | 邦題 | アーティスト |
---|---|---|
Sweet Lorraine | スウィート・ロレイン | ナット・キング・コール |
Good Thing | グッド・シング | ファイン・ヤング・カニバルズ |
Social Security | 社会保障 | |
Hard as It Is | アズ・ハード・アズ・イット・イズ | |
Tell Me What | テル・ミー・ホワット | |
Try a Little Tenderness | トライ・ア・リトル・テンダネス | オーティス・レディング |
All the Things You Are | 君は我がすべて | ジョー・スタッフォード |
You Belong to Me | ユー・ビロング・トゥ・ミー | |
The Girl From Ipanema | イパネマの娘 | アントニオ・カルロス・ジョビン |
How Insensitive | お馬鹿さん | |
The Man Who Shot Liberty Valance | リバティ・バランスを射った男 | ジーン・ピットニー |
In the Wee Small Hours of the Morning | 夜は更けて | フランク・シナトラ |
It's Not for Me to Say | お目当てちがい | ジョニー・マティス |
La Bamba | ラ・バンバ | リッチー・ヴァレンス |
His Latest Flame | マリーは恋人 | エルヴィス・プレスリー |
Wishin' and Hopin' | ウィッシン・アンド・ホーピン | ダスティ・スプリングフィールド |
Life's Too Short | 人生短し | ザ・ラフェイエッツ |
評価
編集批評家の反応は概ね好評で、Rotten Tomatoesでは78%、Metacriticでは75%の支持を得ている。
外部リンク
編集出展
編集脚注
編集- ^ (英語) Tin Men (1987) - Trivia - IMDb 2024年9月25日閲覧。
- ^ Jim (2015年3月4日). “Barry Levinson's "Tin Men": An Appreciation • The Conflicted Film Snob” (英語). The Conflicted Film Snob. 2024年9月25日閲覧。
- ^ “Filming Locations for Tin Men (1987), in Baltimore, Maryland.”. The Worldwide Guide to Movie Locations. 2024年9月26日閲覧。
- ^ (英語) Tin Men (1987) - Trivia - IMDb 2024年9月25日閲覧。
- ^ “Filming Locations for Tin Men (1987), in Baltimore, Maryland.”. The Worldwide Guide to Movie Locations. 2024年9月26日閲覧。
- ^ Jim (2015年3月4日). “Barry Levinson's "Tin Men": An Appreciation • The Conflicted Film Snob” (英語). The Conflicted Film Snob. 2024年9月25日閲覧。