チタン石
チタン石[1](チタンせき、titanite、チタナイト)またはくさび石[2](くさびいし、sphene、スフェーン)とは、ケイ酸塩鉱物の一種で、組成にチタンを含む(そのことがチタナイトという名前の由来となっている)。「チタナイト」と表記する場合は鉱物として、また「スフェーン」と表記する場合は宝石として扱う場合が多い。
チタン石(くさび石) titanite | |
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分類 | ケイ酸塩鉱物(ネソケイ酸塩鉱物) |
化学式 | CaTiSiO5 |
結晶系 | 単斜晶系 |
へき開 | 二方向に明瞭 |
モース硬度 | 5 - 5.5 |
光沢 | ダイヤモンド光沢、樹脂光沢 |
色 | 黄色、緑色、赤色、褐色、灰色 |
条痕 | 白色 |
比重 | 3.52 - 3.54 |
プロジェクト:鉱物/Portal:地球科学 |
チタン石としては1795年にマルティン・ハインリヒ・クラプロートにより記載され、くさび石としては1801年にルネ=ジュスト・アユイにより記載された[3]。1982年、先名権から国際鉱物学連合の新鉱物・鉱物名委員会によりチタン石が有効名とされた[4]が、論文においては今もなおくさび石の名が用いられることがある。
成分・種類
編集化学組成はCaTiSiO5。他に微量な不純物として鉄、マンガン、クロム、セリウム、イットリウムなどが含まれ、様々な色を発色する。モース硬度は 5 から 5.5 。比重は 3.52 から 3.54 。
産出地
編集主産地はブラジル、マダガスカル。他にオーストリア、スイス、イタリア、ロシア連邦、パキスタン、ミャンマー、中国、カナダ、アメリカ合衆国など。
性質・特徴
編集多色性があり、また透明度の高い石はダイヤモンドよりも輝くといわれる。ただ、モース硬度が 5 から 5.5 と低く、また脆いため、ルースとして扱うには注意を要する。
用途
編集宝石としてはクロムの影響により黄色や緑色を発色し、透明度の高いものが使われる。上記にあるように扱いにくいが、ダイヤモンド以上に輝くため人気は高い。また大きな結晶は希少性があり、カットされずそのまま収蔵されることが多い。
工業的には二酸化チタンの素材として使われ、塗料や顔料となる。また、放射年代測定のフィッショントラック法で使われることもある。
脚注
編集- ^ 文部省編 『学術用語集 採鉱ヤ金学編』 日本鉱業会、1954年、全国書誌番号:54001659。
- ^ 文部省編 『学術用語集 地学編』 日本学術振興会、1984年、ISBN 4-8181-8401-2。
- ^ Titanite, mindat.org
- ^ Hey, M. H. (December 1982). “International Mineralogical Association: Commission on New Minerals and Mineral Names”. Mineralogical Magazine 46 (341): 513–514. Bibcode: 1982MinM...46..513H. doi:10.1180/minmag.1982.046.341.25.
参考文献
編集- 松原聰 『日本の鉱物』 学習研究社〈フィールドベスト図鑑〉、2003年、ISBN 4-05-402013-5。
- 国立天文台編 『理科年表 平成20年』 丸善、2007年、ISBN 978-4-621-07902-7。
関連項目
編集外部リンク
編集- ウィキメディア・コモンズには、チタン石に関するカテゴリがあります。
- Titanite (mindat.org)
- Titanite Mineral Data (webmineral.com)
- チタン石(くさび石)(地質標本館)