スウェーデンの福祉
スウェーデンの福祉(Welfare in Sweden)は、社会民主主義福祉レジーム(ノルディックモデル)国に位置づけられ、国民の家構想に基づく高負担高福祉国家として知られている[2][3]。
大部分が税金を原資としており、どの分野も公的・民間の両方が存在する。
所管は複数の省庁に分かれており、保健・社会政策はスウェーデン保健・社会政策省、教育はスウェーデン教育研究省、労働政策はスウェーデン雇用省となっている.[4]。
また全国民に国民番号制度が採用されており、確定申告、社会保障給付申請、免許証新成人申請時の個人認証、自動車登録、建築許可申請、出生届、婚姻届、年金手続、医療機関予約など、幅広く使用される[5]。
財政
編集2003年では、GDPに占める租税率は35.5%(OECDで3位)、さらに社会保障負担を含めると50.6%(OECDで1位)であった[7]。個人所得税はGDP比で15.8%(OECDで2位)、地方税率は平均32%ほどである(2005年)[7]。
スウェーデン財務省のシミュレーションでは、納めた税・保険料のうち、45%はその年のうちに本人にサービス還元され、また38%は生涯のうちに本人に還元され、残り18%は他者への再配分となる[8]。
健康・社会サービス | 24% |
個人・家庭ケア | 24% |
児童福祉 | 10% |
教育 | 24% |
その他 | 18% |
保健・社会政策
編集スウェーデン保健・社会政策省は、傷病・高齢者・社会サービス・医療・健康づくり・こどもの権利・障害者支援・政府の障害者政策策定などを所管している[10]。
保健医療
編集医療はランスティング、高齢者看護はコミューンと役割分担が徹底されている[11]。不要な入院の場合はコミューンにペナルティ支払いが生じ、社会的入院防止措置がなされている[11]。
老人介護
編集スウェーデンでは親を介護する責務はコミューンにあり、その子供への扶養義務は廃止されている(1956 年社会福祉法)[2]。在宅医療と老人福祉施設の両面について、コミューンが責務を持つ。
社会保障
編集スウェーデンの社会保障は主にスウェーデン社会保険庁が所管しており、他にも個別に保障制度が存在する[12] 主なものは以下。
- 児童手当(Barnbidrag)および両親手当(Föräldrapenning):子供の16歳までの金銭的支援、および子供一人あたり480日分の育児休業支援。加えて疾病および障害児への手当もある[13]。
- 住宅手当(Bostadsbidrag):住居を持つことについての支援。所得制限がある[13]。
- 傷病手当(Sjukpenning)、傷病補償年金(Sjukersättning)、障害者所得補償金(Handikappersättning):病気や障害で働けない場合の手当[13]。
- 生計費補助(Försörjningsstöd):適正な生計を立てられない人全て(子供を含む)に支給される。純粋にこの支援を必要とするものだけに支給され、サービスは地方自治体によって管理される[14]。
年金
編集年金は全国共通制度であり、主に賦課方式の所得比例年金(年金保険)と、補助的な最低保証年金(一般税原資)の組み合せである[15]。最低保証年金とはミーンズテストに基づいており、所得比例年金が増えるにしたがって減額され、ある基準以上では完全にゼロになる[15]。所得比例年金の支給については、積立高を平均寿命で割った金額として機械的に決定される[15]。
教育
編集労働市場
編集脚注
編集- ^ Government at a Glance (Report). OECD. 2015年. doi:10.1787/22214399。
- ^ a b 『スウェーデンの地方自治 (PDF)』(レポート)、財団法人自治体国際化協会、2004年3月。
- ^ 『平成24年版厚生労働白書』(レポート)、厚生労働省、2012年、81–82頁。
- ^ “Regeringskansliet med departementen” (Swedish). 2010年2月26日閲覧。
- ^ 翁百合ほか 2012, Chapt.3.4.
- ^ Revenue Statistics (Report). OECD. doi:10.1787/19963726。
- ^ a b c 星野泉『スウェーデンの地方財政と地方財政調整制度 (PDF)』『平成17年度比較地方自治研究会調査研究報告書』(レポート)、財団法人自治体国際化協会、2006年3月。
- ^ 飯野靖四「スウェーデンの社会保障と所得再分配」『海外社会保障研究』第159巻、国立社会保障・人口問題研究所、2007年、40-41頁。
- ^ OECD Social Expenditure Statistics (Report). OECD. 2011年. doi:10.1787/socx-data-en。
- ^ “Socialdepartementets ansvarsområden” (Swedish). 2010年2月26日閲覧。
- ^ a b 翁百合ほか 2012, p. 204.
- ^ “Social Insurance in 10 minutes” (PDF). Försäkringskassan. 2011年5月15日閲覧。
- ^ a b c 海外情勢報告 2013, p. 285.
- ^ “Ekonomiskt bistånd” (swedish). Government offices of Sweden. 2011年5月15日閲覧。
- ^ a b c 翁百合ほか 2012, Chapt.5.
参考文献
編集- 『2011〜2012年 海外情勢報告』(レポート)、厚生労働省、2013年3月、Chapt.3-4。
- 翁百合; 西沢和彦; 山田久; 湯元健治『北欧モデル : 何が政策イノベーションを生み出すのか』日本経済新聞出版社、2012年11月。ISBN 978-4-532-35543-2。