ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン
『ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン』(原題:Blues Breakers with Eric Clapton)は、イギリスのブルースロック・バンド、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズが1966年に発表したスタジオ・アルバム。
『ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ・ウィズ・エリック・クラプトン』 | ||||
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ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 | 1966年5月 ウエスト・ハムステッド デッカ・スタジオ[2] | |||
ジャンル | ブルースロック | |||
時間 | ||||
レーベル |
デッカ・レコード ロンドン・レコード | |||
プロデュース | マイク・ヴァーノン | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
チャート最高順位 | ||||
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ジョン・メイオール アルバム 年表 | ||||
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背景
編集メイオールが1964年12月に録音・1965年に発表したリーダー・デビュー作『ジョン・メイオール・プレイズ・ジョン・メイオール』には、ロジャー・ディーン、ジョン・マクヴィー、ヒューイ・フリントが参加していたが、間もなく元ヤードバーズのエリック・クラプトンがディーンの後任として加入した[4]。バンド側は、ヤードバーズの曲「ガット・トゥ・ハリー」を聴いて感銘を受け、クラプトンに白羽の矢を立てたという[5]。ただし、クラプトンは1965年8月にバンドを一時的に脱退しギリシャへ旅行したため、ピーター・グリーン(後にブルースブレイカーズの正式メンバーとなる)が代役を務めたが、同年のうちにクラプトンが復帰した[6]。
メイオールは当初、クラプトン、フリントおよびジャック・ブルースを迎えた編成で、ライブ・アルバム制作を前提とした録音をソーホーの「フラミンゴ・クラブ」で行うが、録音状態が悪かったことから、スタジオ・アルバムの制作に変更された[2]。なお、フラミンゴ・クラブ公演における録音は、後にメイオール名義のアルバム『プライマル・ソロズ』(1977年)に収録され[7]、2006年には本作のデラックス・エディション盤のボーナス・ディスクにも収録された。
そして、1966年5月には、オリジナル・ベーシストのマクヴィーを含む編成で本作が録音された。
クラプトンは1960年製のギブソン・レスポール・スタンダードと1962年製のマーシャル・アンプを使用した[2]。本アルバムで聴かれる、レスポールとマーシャルという組み合わせから奏でられたディストーションの効いたギターは、現在にまで至るロックギター・サウンドの基礎となったと言われている。
また、本作にはジョニー・アーモンド、アラン・スキドモア、デニス・ヒーリーから成るホーン・セクションも参加しており、メイオールは以前より、ジャズ・クラブでスキドモアの演奏を聴いてきたことから、レコーディングに抜擢したという[5]。
「オール・ユア・ラヴ」はオーティス・ラッシュが1958年に発表した曲のカヴァーである[8]。「ハイダウェイ」はフレディ・キングのカヴァーで、本作ではエルモア・ジェームスの録音による「ダスト・マイ・ブルーム」のリフが挿入された[8]。「ホワッド・アイ・セイ」はレイ・チャールズのカヴァーで、本作ではフリントのドラム・ソロに続いて、ビートルズの「デイ・トリッパー」のリフが挿入された[9]。「さすらいの心」はロバート・ジョンソンのカヴァーで、クラプトンが正式なレコーディングにおいて、初めてリード・ボーカルも兼任しており、クラプトンはソロ転向後のライブでもこの曲を取り上げて、ライブ・アルバム『エリック・クラプトン・ライヴ』(1975年発表)に収録された[8]。
ジャケット写真において、クラプトンがコミック雑誌『The Beano』を読んでいることから、本作は「The Beano Album」という通称で呼ばれることも多い[2]。
反響・評価
編集母国イギリスでは、1966年7月30日付の全英アルバムチャートで初登場27位となり[10]、最終的には17週にわたりチャート入りして、最高6位を記録するヒットとなった[3]。一方、アメリカではチャート・インを果たせなかった[1]。
Bruce Ederはオールミュージックにおいて満点の5点を付け「ブルース・ギタリストとしてのエリック・クラプトンが正当に評価された初のアルバムという以上に、1960年代に発表されたブルース・アルバムとしては特に影響力が強く、恐らくブリティッシュ・ブルース史上最高のアルバムで、ブルースブレイカーズの最高傑作でもある」と評している[11]。『ローリング・ストーン』誌が2003年に選出した「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」では195位となるが[12]、2020年の改訂版ではリストから外された。2013年には、『クラシック・ロック』誌による「クラシック・ロック・ロール・オブ・オナーズ賞」でクラシック・アルバム賞を受賞した[13]。2021年には、uDiscoverMusicのスタッフが選出した「ブルース・アルバムのベスト120」(順不同)の一つとして挙げられた[14]。
影響
編集本作は、当時生産終了となっていたギブソン・レスポールの人気を再燃させたことで知られ、1968年にはレスポールの生産が再開された[15]。
ゲイリー・ムーアは、本作の1曲目の「オール・ユア・ラヴ」を聴いた瞬間に人生が変わったと述懐しており[16]、自身のアルバム『スティル・ゴット・ザ・ブルーズ』(1990年)で同曲を取り上げた。ムーアはさらに、1992年のアルバム『アフター・アワーズ』で、本作収録曲「愛の鍵」をカヴァーしている[17]。
収録曲
編集特記なき楽曲はジョン・メイオール作。2. 11.はインストゥルメンタル。
- オール・ユア・ラヴ - All Your Love (Otis Rush) - 3:37
- ハイダウェイ - Hideaway (Freddie King, Sonny Thompson) - 3:17
- リトル・ガール - Little Girl - 2:37
- アナザー・マン - Another Man - 1:46
- ダブル・クロッシン・タイム - Double Crossing Time (John Mayall, Eric Clapton) - 3:03
- ホワッド・アイ・セイ - What'd I Say (Ray Charles) - 4:29
- 愛の鍵 - Key to Love - 2:06
- パーチマン・ファーム - Parchman Farm (Mose Allison) - 2:24
- ハヴ・ユー・ハード - Have You Heard - 5:57
- さすらいの心 - Ramblin' on My Mind (Robert Johnson) - 3:10
- ステッピン・アウト - Steppin' Out (Memphis Slim) - 2:30
- イット・エイント・ライト - It Ain't Right (Walter Jacobs) - 2:42
40周年記念デラックス・エディション盤
編集ディスク1
編集本編12曲のモノラル・ヴァージョンとステレオ・ヴァージョンの両方を収録。
ディスク2
編集- クローリング・アップ・ア・ヒル(BBCサタデー・クラブ・セッション) - "Crawling up a Hill" - 2:06
- クロコダイル・ウォーク(BBCサタデー・クラブ・セッション) - "Crocodile Walk" - 2:22
- バイ・バイ・バード(BBCサタデー・クラブ・セッション) - "Bye Bye Bird" (Sonny Boy Willamson, Willie Dixon) - 2:47
- アイム・ユア・ウィッチドクター - "I'm Your Witchdoctor" - 2:09
- テレフォン・ブルース - "Telephone Blues" - 3:56
- バーナード・ジェンキンス - "Bernard Jenkins" (E. Clapton) - 3:47
- ロンリー・イヤーズ - "Lonely Years" - 3:17
- チーティン・ウーマン(BBCサタデー・クラブ・セッション) - "Cheatin' Woman" - 2:01
- ノーホエア・トゥ・ターン(BBCサタデー・クラブ・セッション) - "Nowhere to Turn" - 1:40
- アイム・ユア・ウィッチドクター "I'm Your Witchdoctor" - 2:08
- オン・トップ・オブ・ザ・ワールド(ステレオ・ミックス) - "On Top of the World (Stereo mix)" - 2:49
- 愛の鍵(BBCサタデー・クラブ・セッション) - "Key to Love" - 2:01
- オン・トップ・オブ・ザ・ワールド(BBCサタデー・クラブ・セッション) - "On Top of the World" - 2:32
- ストーミー・マンデイ(ライヴ・アット・ザ・フラミンゴ・クラブ) - "They Call It Stormy Monday" (T-Bone Walker) - 4:33
- イントロ〜モーディ(ライヴ) - "Intro into Maudie" (John Lee Hooker, J. Mayall) - 2:25
- イット・ハーツ・トゥ・ビー・イン・ラヴ(ライヴ) - "It Hurts to Be in Love" (Julius Dixon, Rudolph Toombs) - 3:21
- ハヴ・ユー・エヴェー・ラヴド・ア・ウーマン(ライヴ) - "Have You Ever Loved a Woman" (Billy Myles) - 6:42
- バイ・バイ・バード(ライヴ) - "Bye Bye Bird" (S. Williamson, W. Dixon) - 3:49
- フーチー・クーチー・マン(ライヴ) - "Hoochie Coochie Man" (W. Dixon) - 3:53
参加ミュージシャン
編集- ジョン・メイオール - ボーカル、ピアノ、ハモンドオルガン、ハーモニカ
- エリック・クラプトン - ボーカル(on #10)、リードギター
- ジョン・マクヴィー - ベース
- ヒューイ・フリント - ドラムス
アディショナル・ミュージシャン
脚注
編集- ^ a b Gallucci, Michael (2016年7月22日). “When John Mayall Retooled for 'Blues Breackers With Eric Clapton'”. Ultimate Classic Rock. Townsquare Media. 2022年12月1日閲覧。
- ^ a b c d Smith, Sophie (2022年7月22日). “'The Beano Album': John Mayall’s Bluesbreakers And Eric Clapton Create A Classic”. uDiscoverMusic. 2022年12月1日閲覧。
- ^ a b JOHN MAYALL | full Official Chart History | Official Charts Company
- ^ Unterberger, Richie. “John Mayall, John Mayall & the Bluesbreakers - Plays John Mayall Album Reviews, Songs & More”. AllMusic. 2022年12月1日閲覧。
- ^ a b Shapiro, Harry (2018年5月4日). “John Mayall's Bluesbreakers with Eric Clapton: The Making of 'the Beano album'…”. loudersound.com. Future.plc. 2022年12月1日閲覧。
- ^ Jurek, Thom. “John Mayall Biography, Songs & Albums”. AllMusic. 2022年12月1日閲覧。
- ^ Ruhlmann, William. “John Mayall - Primal Solos Album Reviews, Songs & More”. AllMusic. 2022年12月1日閲覧。
- ^ a b c “Eric Clapton's 50 Greatest Guitar Moments”. Guitar World. Future plc (2015年3月30日). 2022年12月1日閲覧。
- ^ Fanelli, Damian (2016年5月12日). “Flashback: Eric Clapton Injects George Harrison's "Day Tripper" Riff Into a Ray Charles Cover”. Guitar World. Future plc. 2022年12月1日閲覧。
- ^ Official Album Chart Top 30 - 24 July 1966 - 30 July 1966 | Official Charts Company
- ^ Eder, Bruce. “John Mayall & the Bluesbreakers, John Mayall - Bluesbreakers with Eric Clapton Album Reviews, Songs & More”. AllMusic. 2022年12月1日閲覧。
- ^ “The RS 500 Greatest Albums of All Time”. Rolling Stone (2003年11月18日). 2008年12月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年12月1日閲覧。
- ^ “Black Sabbath pick up Classic Rock's legend award”. BBC (2013年11月15日). 2022年12月1日閲覧。
- ^ “The 120 Best Blues Albums: Classic Records You Need To Hear”. uDiscoverMusic (2021年9月15日). 2022年12月1日閲覧。
- ^ 佐藤輝 (2016年8月13日). “レスポールとレス・ポール〜ある偉大なギタリストの軌跡〜”. TAP the POP. 2022年12月1日閲覧。
- ^ Shapiro, Harry (2016年8月12日). “Gary Moore: the story of Still Got The Blues”. loudersound.com. Future plc. 2022年12月1日閲覧。
- ^ Gary Moore - After Hours Album Reviews, Songs & More | AllMusic