ジョン・クレランド
ジョン・クレランド(John Cleland, 1709年9月24日 - 1789年1月23日[要出典])は、イギリスの小説家。近代エロチック小説の鼻祖『ファニー・ヒル』 の作者として知られる。
生涯
編集サリーのキングストン・アポン・テムズ生まれ、ロンドン育ち。3人兄弟の長男。
父は英国陸軍士官(後に公務員)だったウィリアム・クレランド(William Cleland)、母はルーシー・クレランド(Lucy Cleland)。父は詩人アレキサンダー・ポープの友人であり、ルーシー・クレランドもまたポープ、ボリングブルック(Viscount Bolingbroke、政治家・文筆家)、チェスターフィールド伯爵(Chesterfield、外交官)、ホレス・ウォルポール(Horace Walpole、『オトラント城奇譚』の著者)らの友人知人であった。一家は財産家であり、ロンドンの文学や芸術のサークルに属していた。
ジョン・クレランドは1721年にウエストミンスター・スクールに入学したが、1723年に中退もしくは退学させられている(理由は財政的なものではないが、不明)。その後、東インド会社に入社。1728年から1740年までボンベイに在住。父の死に際してロンドンに帰還。
1748年、840ポンド(2005年の相場換算だと約10万ポンド)の負債により逮捕され、フリート刑務所に収監される。その獄中でクレランドは『ファニー・ヒル』を執筆し、1748年11月と1749年2月の二度に分割して出版された。
1749年3月に釈放されるが、同年11月には『ファニー・ヒル』の出版元、印刷業者と共に逮捕された。『ファニー・ヒル』は公式に発禁とされ、その後100年以上にわたり再版は認められなかった。この裁判でクレランドは、自分が作者であることを公式に否定し、書物の内容について全く関与していないとの見解を取った。
だが発禁処分にもかかわらず『ファニー・ヒル』は地下出版物として異例のヒットを続け、アンダーグラウンドで海賊版が出版され続けた。この海賊版には、男性同性愛に関する新たな記述が付け加えられるなど、当時の社会ではいっそう許容され得ないものとなっていった。
クレランドは1750年3月に『ファニー・ヒル』の削除修正版を製作出版するが、再び起訴された。
『Monthly Review』誌に掲載されたクレランドの死亡記事には、クレランドが『ファニー・ヒル』にこれ以上猥褻な加筆を行わない補償として100ポンドの政府年金を与えられたと記された(ただしこの年金に関する公式な記録はなく、クレランドのファンによる創作ではないかともされる)。
クレランドはデビッド・ギャリック(David Garrick、著名な俳優、劇作家)の友人となり、ジェイムズ・ボズウェル(James Boswell、法律家、作家)は彼の就職先を捜すなどした。
釈放後、クレランドは雇われ作家となり、様々な作品を執筆している。
「Memoirs of a Coxcomb」(1751)と「The Woman of Honour」(1768)の 2つの長編、 悲劇「Titus Vespasian」(1755)、2編の喜劇「The Ladies Subscription」(1755)と「Tombo-Chiqui, or, The American Savage」(1758)、フランスの小説の翻案「Dictionary of Love」(1753)、韻文「"The Times!"」(1760、1761)、ロバート・ドッズリー(Robert Dodsley)の「The Oeconomy of Human Life」をネタにしたバーレスク(戯作)「The Oeconomy of a Winter's Day」(1750)、ポンパドゥール夫人の伝記(1960)などである。
また、その他多くの翻訳や批評を行い、1749年から1787年までの間、30の批評を『Monthy Review』誌に、200以上の記事を『Public Advertiser』誌に寄稿した。
クレランドは1789年に未婚のまま死去し、ロンドンウェストミンスター寺院の隣にある聖マーガレット教会に埋葬された。
日本語訳一覧
編集- 『ファニー・ヒル』[1]
- Fanny Hill、Memoirs of a Woman of Pleasure、Memoires de Fanny Hill、femme de plaisir
- 『ファニー・ヒル』原笙二訳 園書房(美和書院)1951年
- 『情婦ヒル』松戸淳訳 紫書房 1951年。改訂版・論創社 2004年
- 『ファニイ・ヒル』清水正二郎訳 浪速書房 1965年。改題『ファニー・ヒル』浪速書房 1967年
- 『ファーニィ・ヒル』江藤潔訳 角川書店(角川文庫)1968年。Kindle版 2003年
- 『一娼婦の手記』中地知夫訳 田園書房 1969年
- 『ファニー・ヒル』中込純次訳 三笠書房 1969年
- 『ファニー・ヒル』吉田健一訳 河出書房新社(人間の文学1)1965年
- 『新訳 ファニー・ヒル』及川寛平訳 宝島社(宝島社文庫)2005年
- 『ファニー・ヒル 快楽の女の回想』小林章夫訳 平凡社ライブラリー 2012年
- 『ファニー・ヒル』伴吉彦訳 グーテンベルク21 Kindle版 2015年
- 上記以下の作品
- 『道楽者の手記』吉田健一訳 河出書房新社(人間の文学2)1966年
- 『ファーニィ・ヒルの娘』須賀慣訳 角川書店(角川文庫)1977年。Kindle版 2013年