ジューディア・パール
ジューディア・パール(Judea Pearl、1936年9月4日 - )はイスラエル系アメリカ人の計算機科学者で哲学者。人工知能への確率的アプローチとベイジアンネットワークを発展させたことで知られている(確率伝搬法を参照)。また、構造モデルに基づいた因果的かつ反事実的推論の理論を発展させた。
ジューディア・パール Judea Pearl | |
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NIPSにて(2013年) | |
生誕 |
1936年9月4日(88歳) イギリス委任統治領パレスチナ テルアビブ |
国籍 |
イスラエル アメリカ合衆国 |
研究分野 |
計算機科学 統計学 |
研究機関 | カリフォルニア大学ロサンゼルス校 |
出身校 |
イスラエル工科大学 ラトガース大学 ブルックリン・ポリテクニック・インスティテュート |
博士論文 | Vortex Theory of Superconductive Memories (1965) |
博士課程 指導教員 |
Leonard Strauss Leonard Bergstein |
博士課程 指導学生 |
Rina Dechter Hector Geffner Elias Bareinboim |
主な業績 |
人工知能 因果性 ベイジアンネットワーク |
主な受賞歴 |
ベンジャミン・フランクリン・メダル(2008) チューリング賞(2011) |
プロジェクト:人物伝 |
「確率的および因果的推論の算法を発展させることで、人工知能に基礎的貢献をした」として、2011年のACMチューリング賞を受賞[1][2]。
パールの息子ダニエル・パールはジャーナリストだったが、アメリカ人でかつユダヤ人だということから、2002年にアルカイダと国際イスラム戦線の関係者とされる者にパキスタンで誘拐され殺害された[3][4]。
経歴
編集1936年、イギリス委任統治領パレスチナ(現在のイスラエル)テルアビブで生まれる。1960年、イスラエル工科大学で電気工学の学士号を得た。卒業後アメリカに移り、ラトガース大学で物理学の修士号を取得し、1965年にはブルックリン・ポリテクニック・インスティチュートで電気工学の博士号を得た。その後、RCAの研究所で超伝導を使った記憶装置などを研究。さらに Electronic Memories, Inc. で最先端の記憶装置を研究した。1970年、UCLAの工学および応用科学部門で教職につき、2012年現在はそこで計算機科学と統計学の教授となっており、認知システム研究所の所長も務めている。妻ルース (Ruth) との間に3人の子をもうけた。2011年現在、NGO Monitor の国際諮問委員を務めている[5]。
息子ダニエル・パール殺害事件
編集息子のダニエル・パールはウォール・ストリート・ジャーナルで働くジャーナリストだった。2002年、彼はパキスタンで誘拐され殺害された。そのためジューディアと家族や友人が Daniel Pearl Foundation を創設[6]。ダニエルの死の7周年となった日、ウォール・ストリート・ジャーナルにジューディアの Daniel Pearl and the Normalization of Evil: When will our luminaries stop making excuses for terror? と題した記事が掲載された[7]。
研究
編集ジューディア・パールはベイジアンネットワークと人工知能への確率的アプローチの先駆者の1人であり、実験的科学の因果モデルを数学的に定式化した先駆者の1人である。また、高度な認知モデルの研究も行ってきた。科学哲学、知識表現、非古典論理学にも関心を寄せている。UCLAの計算機科学教授 Richard Korf はパールを「人工知能分野の巨人の1人」と称した[8]。Association for Computing Machinery はパールの因果性についての業績について「統計学、心理学、医学、社会科学において、因果律についての理解に革命をもたらした」と評している[9]。
主な貢献
編集著作
編集- Heuristics: Intelligent Search Strategies for Computer Problem Solving, Addison-Wesley, 1984
- Probabilistic Reasoning in Intelligent Systems: Networks of Plausible Inference, Morgan-Kaufmann, 1988
- Causality: Models, Reasoning, and Inference, Cambridge University Press, 2000。日本語訳は「統計的因果推論 -モデル・推論・推測」共立出版 ISBN 978-4320018778。
- I Am Jewish: Personal Reflections Inspired by the Last Words of Daniel Pearl, Jewish Lights, 2004.
- The Book of Why: The New Science of Cause and Effect, Basic Books, 2018。日本語訳「因果推論の科学 「なぜ?」の問いにどう答えるか」文藝春秋 ISBN 978-4163915968。2022年9月12日。監修・解説:松尾豊。
論文
編集講演
編集- "The Algorithmization of Counterfactuals" Rumelhart Lecture(2011年7月21日)の動画
- "On Causes and Counterfactuals" 記念シンポジウム(2010年3月12日)での講演の動画
- トロント大学での名誉博士号授与式でのスピーチの動画 (2007年6月21日)
- "The Art and Science of Cause and Effect" - パールによる講演の記録
- Reasoning with Cause and Effect
学術賞・栄誉
編集- 1999年 - IJCAI Award for Research Excellence(国際人工知能会議)[11]
- 2000年 - Classic Paper Award(AAAI)[12]
- 2001年 - ラカトシュ賞
- 2003年 - ACMアレン・ニューウェル賞[13]
- 2007年 - 名誉博士号(トロント大学)
- 2008年 - ベンジャミン・フランクリン・メダル (フランクリン協会)[14]
- 2011年 - ラメルハート賞[15][16]
- 2011年 - IEEE Intelligent Systems の人工知能の殿堂入り[17][18]
- 2011年 - ACMチューリング賞[1][2]
- 2011年 - ハーヴェイ賞
- 2015年 - ディクソン賞科学部門
- 2021年 - BBVA Foundation Frontiers of Knowledge Award
科学アカデミー会員
編集- 1988年 - IEEEフェロー
- 1990年 - アメリカ人工知能学会フェロー
- 1995年 - 全米技術アカデミー会員
- 2015年 - ACMフェロー
出典
編集- ^ a b c Judea Pearl – A. M. Turing Award winner, ACM, retrieved 2012-03-14.
- ^ a b Gold, Virginia (2012年3月15日). “Judea Pearl Wins ACM A.M. Turing Award for Contributions that Transformed Artificial Intelligence”. The Association for Computing Machinery. 2012年3月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年3月15日閲覧。 “ACM, the Association for Computing Machinery today named Judea Pearl of the University of California, Los Angeles the winner of the 2011 ACM A.M. Turing Award for innovations that enabled remarkable advances in the partnership between humans and machines that is the foundation of Artificial Intelligence (AI).”
- ^ Fonda, Daren (September 27, 2003). “On the Trail of Daniel Pearl”. TIME 2011年7月20日閲覧。.
- ^ Escobar, Pepe (June 28, 2003). “Who killed Daniel Pearl?”. Book Review. Asia Times Online. 2011年7月20日閲覧。
- ^ “International Advisory Board Profiles”. NGO Monitor (2011年). 2011年7月20日閲覧。
- ^ “Biography of Dr. Judea Pearl”. Daniel Pearl Foundation (2011年). 2011年7月20日閲覧。
- ^ Pearl, Judea (February 3, 2009). “Daniel Pearl and the Normalization of Evil”. The Wall Street Journal: p. A15 2011年7月20日閲覧。
- ^ Amundson, Marlys (Fall 2004). “A Profile of Judea Pearl – Computer Science Pioneer,Visionary” (PDF). UCLA Engineer (UCLA Henry Samueli School of Engineering and Applied Science) (12): 16–17 2011年7月20日閲覧。.
- ^ “ACM HONORS INNOVATORS WHO CHANGED THE SCIENTIFIC WORLD”. New York: Association for Computing Machinery (April 27, 2004). 2011年7月20日閲覧。
- ^ “Short Annotated Bibliography”. amturing.acm.org. 2012年9月6日閲覧。
- ^ “IJCAI-99”. 2012年9月6日閲覧。
- ^ “2000 AAAI CLASSIC PAPER AWARD”. 2012年9月6日閲覧。
- ^ “ACM HONORS INNOVATORS WHO CHANGED THE SCIENTIFIC WORLD” (2004年4月27日). 2012年9月6日閲覧。
- ^ “2008 Franklin Institute Awards”. The Franklin Institute. 2012年9月6日閲覧。
- ^ “Research Biography of Judea Pearl”. The David E. Rumelhart Prize. 2012年9月6日閲覧。
- ^ “Rumelhart Prize Symposium in Honor of Judea Pearl” (2011年7月22日). 2012年9月6日閲覧。
- ^ “AI's Hall of Fame”. IEEE Intelligent Systems (IEEE Computer Society) 26 (4): 5–15. (2011). doi:10.1109/MIS.2011.64 .
- ^ “IEEE Computer Society Magazine Honors Artificial Intelligence Leaders”. DigitalJournal.com. (2011年8月24日) 2011年9月18日閲覧。 Press release source: RWeb (Vocus).
外部リンク
編集- bayes.cs.ucla.edu/jp_home.html 本人の公式サイト
- Daniel Pearl Foundation
- Interview with Judea Pearl from the U.S. Holocaust Memorial Museum
- Interview with Judea Pearl on Robots and Free Will
- Judea Pearl - Mathematics Genealogy Project
- Judea Pearl at the AI Genealogy Project