システィーナ歌舞伎(システィーナかぶき)は、徳島県大塚国際美術館システィーナホールで行われる歌舞伎の公演である。「和と洋のコラボレーション」をテーマとしており、演目は同公演のための書き下ろし新作歌舞伎である[1]

概要

編集

大塚国際美術館は大塚製薬グループによって設立された陶製複製画の展示を目的とした美術館であり、館内のシスティーナホールはバチカン宮殿システィーナ礼拝堂を模したホールである。部屋自体がシスティーナ礼拝堂の内部を原寸大再現[2] し、ルネサンス期の壁面画・装飾絵画などの文化財を模した模造芸術であるとともに多目的ホールとしても利用され、2009年より松竹の制作で歌舞伎公演が行われているほか、同ホールはシスティーナ歌舞伎が始まったのと同じ2009年からは将棋王将戦の会場としても利用されている。

公演期間中は美術館全体が貸切休館となる。公演チケットを購入した観客は館内の観覧が可能。

主催は松竹と大塚国際美術館。初回より「文化立県とくしま推進事業」に採択されており、県の助成を受けるほか、地元徳島新聞社が共催している。

主として上方歌舞伎の俳優によって演じられており、特に第3回公演からは片岡愛之助を中心とした配役で上演されている。また、第6回と第8回、第9回の公演には女優が出演しているが、これは歌舞伎の公演、とりわけ松竹の歌舞伎の公演としては極めて珍しい[注 1]

2021年新型コロナウイルス感染症拡大防止のため公演を開催しないことが発表され[3]、翌2022年[4]2023年[5]も同様の理由で公演を開催しないことが発表された。

公演

編集
回数 公演年 演目 主な出演者 題材 備考
第一回 2009年9月 きりしたんでらいぶん がらしゃ
『切支丹寺異聞 伽藍紗』
上村吉弥坂東薪車 細川ガラシャ 梅若六郎原案・山本東次郎作の「伽藍紗」に基づく。
脚色・演出:水口一夫
作曲:苫舟、振付:藤間勘十郎[6]
第二回 2010年11月 『スサノオ susanoo』 上村吉弥、坂東薪車、中村壱太郎 スサノオ 近松門左衛門『日本振袖始』より
作・演出:水口一夫
作曲:苫舟、振付:藤間勘十郎、装置:前田剛
石見神楽小笹社中
(財)阿波人形浄瑠璃振興会
弦楽四重奏:徳島室内楽団[7]
第三回 2011年11月 『GOEMON 石川五右衛門』 片岡愛之助、中村壱太郎、上村吉弥、上村吉太郎、石田太郎伊礼彼方
小島章司(特別出演・フラメンコ舞踊家)
石川五右衛門 作・演出:水口一夫
作曲:苫舟、振付:藤間勘十郎、装置:前田剛[8][9]
2013年2月と2014年10月には大阪松竹座、2016年には新橋演舞場で再演され[10][注 2][11][12] 2021年10月に改めて大阪松竹座で再演が予定されている[13]
第四回 2012年11月 しゅてんどうじ
『主天童子 Shiro Amakusa』
片岡愛之助、中村壱太郎、中村種之助、上村吉弥、上村吉太郎、坂東薪車、津嘉山正種 天草四郎
酒呑童子
作・演出:水口一夫
振付:藤間勘十郎、作曲:苫舟、装置:前田剛、照明:高山晴彦、音響:畑中富雄[14]
第五回 2014年2月 まんげつ あわのよばなし
『満月阿波噺 フィガロ』
~恋のアラベスク~
片岡愛之助、上村吉弥、中村壱太郎 フィガロの結婚[15] 作・演出:水口一夫、振付:藤間勘十郎[16]
第六回 2015年2月 ゆりわかまるゆみのいさおし
『百合若丸弓軍功 ユリシーズ』
片岡愛之助、大和悠河、上村吉弥、中村種之助、市村橘太郎、張春祥 百合若伝説
/『オデュッセイア[注 3][17]
作・演出:水口一夫
振付:藤間勘十郎[18]
第七回 2016年2月 『La Belle et la Bȇte 美女と野獣』 片岡愛之助、中村壱太郎、上村吉弥、木場勝己 美女と野獣 作・演出:水口一夫、振付:藤間勘十郎[19][20]
第八回 2018年2月 『GOEMON ロマネスク』 片岡愛之助、上村吉弥、中村壱太郎、中村種之助、佐藤浩希彩輝なお 石川五右衛門[注 4][21] 作・演出:水口一夫、振付:藤間勘十郎[22]
第九回 2019年2月 しんしょこくものがたり
『新説諸国譚 TAMETOMO』
片岡愛之助、舞羽美海、中村壱太郎、市川猿弥、上村吉弥 椿説弓張月
アーサー王物語
作・演出:水口一夫、振付:藤間勘十郎[23][24]
第十回 2020年2月 『NOBUNAGA』 片岡愛之助、中村壱太郎、上村吉弥、今井翼[25]、舞羽美海 織田信長 作・演出:水口一夫、振付:藤間勘十郎[26]
(-) 2021年、2022年、2023年は公演を実施せず[3][4][5]

脚注

編集

注釈

編集
  1. ^ かつて東宝が女優を出演させた東宝歌舞伎を志向した経緯がある。このほか近年の松竹の取り組みとしては超歌舞伎日本舞踊の女流舞踊家が参加している。
  2. ^ また2020年10月にも大阪松竹座での再再演が企画・予定されたが新型コロナウイルス感染症の流行により全日程が中止となり、替わって『GOEMON抄』と題して口上によるあらすじ説明やフラメンコ舞踊などの要素を抽出した特別公演が上演された。
  3. ^ 坪内逍遥の論文「百合若伝説の本源」にある「百合若物語はオデッシー(オデュセイア)の粗筋を翻案したるもの」という説に基づいて着想されている
  4. ^ 第3回で上演された『GOEMON』の外伝的位置づけ

出典

編集
  1. ^ “第五回 システィーナ歌舞伎『満月阿波噺』製作発表 2013年12月”. (2013年12月5日). http://enterminal.jp/2013/12/2014sistinakabuki/ 2019年7月5日閲覧。 
  2. ^ システィーナ礼拝堂天井画完全再現の意味|大塚国際美術館の特徴|大塚国際美術館 - 四国
  3. ^ a b 【お知らせ】2021年システィーナ歌舞伎公演について』(プレスリリース)大塚国際美術館、2020年10月20日https://o-museum.or.jp/publics/index/905/2021年1月18日閲覧  - 大塚国際美術館
  4. ^ a b 【お知らせ】2022年システィーナ歌舞伎公演について』(プレスリリース)大塚国際美術館、2021年10月12日https://o-museum.or.jp/publics/index/1014/2021年12月30日閲覧 
  5. ^ a b “大塚国際美術館「システィーナ歌舞伎」について”. 歌舞伎美人(かぶきびと) (松竹). (2022年8月19日). https://www.kabuki-bito.jp/news/7737 2022年8月22日閲覧。 
  6. ^ 平成21年(2009)9月5~6日 システィーナ歌舞伎(第一回)
  7. ^ 公演情報 その他公演 システィーナ歌舞伎 スサノオ”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹. 2019年7月4日閲覧。
  8. ^ 第三回 システィーナ歌舞伎 大塚国際美術館システィーナ・ホール”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹. 2019年7月4日閲覧。
  9. ^ 愛之助、吉弥、壱太郎がシスティーナ歌舞伎への思いを語りました”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹 (2011年9月5日). 2019年7月4日閲覧。
  10. ^ 愛之助が語る、新橋演舞場『GOEMON 石川五右衛門』”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹 (2018年8月30日). 2019年7月4日閲覧。
  11. ^ 片岡愛之助×今井翼、歌舞伎とフラメンコの奇跡の融合!『GOEMON』大阪松竹座で10月に上演”. えんぶの情報サイト 演劇キック。. (株)えんぶ (2020年2月27日). 2021年8月25日閲覧。
  12. ^ 「GOEMON抄」大阪松竹座で初日開幕”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹 (2020年10月16日). 2021年8月25日閲覧。
  13. ^ 塚田文香 (2021年8月25日). “片岡愛之助×今井翼『GOEMON』歌舞伎味溢れる五右衛門を!制作発表会レポート”. エンタメ特化型情報メディアスパイスSPICE. イープラス. 2021年8月25日閲覧。
  14. ^ 第四回 システィーナ歌舞伎”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹 (2012年9月5日). 2019年7月3日閲覧。
  15. ^ “14日から「システィーナ歌舞伎」”. 産経新聞. (2014年2月9日). https://www.sankei.com/article/20140209-KD3LDFKMZ5KDFHCLDZUOBEVRYQ/ 2019年7月5日閲覧。 
  16. ^ 愛之助、吉弥、壱太郎が語る「システィーナ歌舞伎」”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹 (2013年11月26日). 2019年7月3日閲覧。
  17. ^ 愛之助が語る「第六回 システィーナ歌舞伎」”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹 (2014年12月10日). 2019年7月3日閲覧。
  18. ^ イベント・お知らせ|大塚国際美術館
  19. ^ 第七回 システィーナ歌舞伎”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹. 2019年7月4日閲覧。
  20. ^ 愛之助、壱太郎が語る「第七回 システィーナ歌舞伎」”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹 (2015年11月25日). 2019年7月3日閲覧。
  21. ^ 壱太郎が語る『GOEMON ロマネスク』”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹 (2018年2月8日). 2019年7月4日閲覧。
  22. ^ 第八回 システィーナ歌舞伎”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹 (2017年11月11日). 2019年7月4日閲覧。
  23. ^ 「システィーナ歌舞伎」『TAMETOMO』主な配役発表”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹 (2019年1月28日). 2019年7月4日閲覧。
  24. ^ 佐藤常敬 (2019年2月24日). “徳島)システィーナ歌舞伎”. 朝日新聞. https://www.asahi.com/articles/ASM2R5K7SM2RPUTB00S.html 2019年7月4日閲覧。 
  25. ^ ““2人の織田信長”を片岡愛之助が演じるシスティーナ歌舞伎新作、今井翼の出演も”. ステージナタリー. (2019年11月25日). https://natalie.mu/stage/news/356893 2019年12月3日閲覧。 
  26. ^ 第十回 システィーナ歌舞伎|大塚国際美術館システィーナ・ホール”. 歌舞伎美人(かぶきびと). 松竹 (2020年2月12日). 2020年6月27日閲覧。

関連項目

編集

外部リンク

編集