シェア型書店

書店の種類

シェア型書店(シェアがたしょてん)とは、利用者が書棚の一画を借りて書籍などを販売する書店の形態である[1]棚貸し書店(たなかししょてん)[2]シェア型本屋(シェアがたほんや)[3]棚貸し本屋(たなかしほんや)[3]共同型書店(きょうどうがたしょてん)とも呼ばれる[3]。棚貸しだけを行うシェア型書店の他に、新刊や古書の書店が書棚の一部を利用者に貸す形態、カフェが貸し書棚を設ける形態など、複数の種類が存在する[4]

歴史

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2021年時点において、日本で約40店のシェア型書店が開業している[5]毎日新聞の2022年の記事では、シェア型書店は全国各地に広がっており、「店主同士が交流を深めたり、商店街のにぎわいづくりに一役買ったりしている」と報じられた[6]

2022年、水野久美と樋口尚文の共同プロデュースによるシェア型書店「猫の本棚」が東京都神保町で開業した[7]。同店では、著名な映画人の蔵書を集めて展示する催しも不定期で行われており[8]、それらの書籍は一部を除いて閲覧や購入も可能である[9]。これまでに、大島渚の生前の蔵書を陳列した大島渚文庫[9]秋吉久美子が自らの蔵書を陳列した秋吉久美子文庫[8]青山真治の生前の蔵書を陳列した青山真治文庫が開催された[10]

同年、鹿島茂のプロデュースによるシェア型書店「PASSGAGE by ALL REVIEWS」が神保町で開業した[11]。書評ウェブサイトの「ALL REVIEWS」が母体となっている[12]。店名はフランスパサージュ(アーケード商店街)に由来している[13]。当初は、「ALL REVIEWS」に参加していた書評家から棚主を募集したが、その後、一般人からも棚主を募集するようになった[14]。開業3か月で全ての棚が埋まった[15]。棚が空くたびに棚主を募集して抽選しており、競争倍率は約40倍に上ることがある[15]

脚注

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  1. ^ 「私の本棚」営業中”. 読売新聞 (2022年4月10日). 2023年5月4日閲覧。
  2. ^ あなただけの「ミニ本屋」 棚貸し書店、首都圏で広がる”. 日本経済新聞 (2023年3月2日). 2023年5月4日閲覧。
  3. ^ a b c あなたも「ひと箱の本屋さん」 新スタイルの古書店めぐる6つの物語”. 朝日新聞 (2021年12月5日). 2023年5月4日閲覧。
  4. ^ 《シェアで書店主》本は一棚、店番は一日 誰でも"本屋"に 黒崎亜弓”. 週刊エコノミスト (2022年4月30日). 2023年5月4日閲覧。
  5. ^ 《シェアで書店主》ビジネスモデル解剖 小売店であり、コミュニティー 棚貸し本屋の"肝"はバランス 和気正幸”. 週刊エコノミスト (2022年5月2日). 2023年5月4日閲覧。
  6. ^ 減り続けるまちの本屋さんに新風 各地に広がるシェア型書店とは”. 毎日新聞 (2022年3月10日). 2023年5月4日閲覧。
  7. ^ 映画館ルックの隠れ家的なシェア型書店「猫の本棚」、本の街・神保町に誕生! 店主に聞く”. 映画.com (2022年1月20日). 2023年5月4日閲覧。
  8. ^ a b 秋吉久美子文庫、誕生! 神保町「猫の本棚」に自宅書架の多彩な愛読書を展示”. 映画.com (2022年9月11日). 2023年5月4日閲覧。
  9. ^ a b 大島渚監督が生前愛読した蔵書約300冊、「大島渚文庫」としてシェア型書店「猫の本棚」に展示”. 映画.com (2022年5月1日). 2023年5月4日閲覧。
  10. ^ 青山真治監督との出会いから別れまで... 妻・とよた真帆が明かす新作映画の存在”. 映画.com (2023年1月19日). 2023年5月4日閲覧。
  11. ^ 《シェアで書店主》シェア型本屋をプロデュース 仏文学者・鹿島茂さん 「棚は自己表現の手段。選んで価値を創造できる」”. 週刊エコノミスト (2022年5月1日). 2023年5月4日閲覧。
  12. ^ 推し本が並ぶ書棚は「自己表現の場」 有名作家や書評家の「体験」が買えるユニークな書店オープン (1/3)”. AERA (2022年4月10日). 2023年5月4日閲覧。
  13. ^ 推し本が並ぶ書棚は「自己表現の場」 有名作家や書評家の「体験」が買えるユニークな書店オープン (2/3)”. AERA (2022年4月10日). 2023年5月4日閲覧。
  14. ^ 注目のブックビジネス【前編】鹿島茂が手がける「PASSAGE」&「ALL REVIEWS」の革新性 (1/2)”. Real Sound (2022年11月2日). 2023年5月4日閲覧。
  15. ^ a b PASSAGE 人気沸騰のシェア書店。空き棚の競争率は40倍に”. 日経BOOKプラス (2023年4月26日). 2023年5月4日閲覧。

関連文献

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