サギング・ホギング
サギングおよびホギング(英語:Hogging and sagging)は、梁などの長尺形状物を縦方向に折り曲げる力(曲げモーメント)が働く現象である。中央部が下向きに曲がる状態をサギング、中央部が上向きに曲がる状態をホギングと呼ぶ。
船舶の場合
編集外洋では常に波長の長い波が発生している。浮力と重力の作用により船首と船尾が波の頂上に持ち上げられ船体中央が波の谷間に沈む状態を「サギング」、船体中央が持ち上げられる状態を「ホギング」と呼ぶ。大波の波長が船の長さと同じ時に最悪の条件になり、ひと波ごとに船底中央を縦貫する太い構造部材であるキール(Keel、竜骨)や多数の縦隔壁に影響を及ぼす。悪影響としては、長期間にわたる金属疲労などや既存の欠陥の拡大と、荒天時などの短期的で大きな負荷によるものとがあり、両者の複合によってより悪い結果となりうる。船体の変形や、最悪では切断に至った事例もある。
2002年11月19日に石油タンカーMV プレスティージがスペイン北西沖で難破・沈没したのは、メンテナンス不良で船体が劣化していたところに荒天でサギング・ホギングにより過大な力を受けて船体に亀裂が生じ、結果的に破断に至ったことが原因とみられている[1]。
ホギング、またはホグという語は、特に木造船においてキールの半永久的な湾曲を意味することもある。USS コンスティチューションでは1992年の修理時に13インチ(33センチ)のホグが見つかっている[2]。3年間に及ぶ乾ドックでの修理の間に中央のキール部材は徐々に短くなり、ホグは落ち着いていった。また、以前の修理の際に取り外されていたホギング対策の補強部材が再び取り付けられた。ほぼ同サイズのUSSコンステレーションは、1994年に安全ではないと非難を浴びて修理に入ったが、実に36インチ(91センチ)ものホグが生じていた[3]。
荷積みまたは荷卸しの際にも、積み荷の重量分布によって船体が曲がり、サグまたはホグが生じる場合がある。
脚注
編集- ^ “メンテナンス不良による石油タンカー沈没事故”. 失敗知識データベース. 2017年5月16日閲覧。
- ^ Otton, Patrick (1997年8月11日). “USS Constitution Rehabilitation And Restoration”. 2006年7月2日閲覧。
- ^ “Constellation”. Dictionary of American Naval Fighting Ships. 2006年7月2日閲覧。