ゲーミングチェア
ゲーミングチェアは、ゲームプレイに特化したイスの総称。背中と肩を支えるハイバック仕様であり、レーシングカーのバケットシートを原型としたデザインが特徴である[1]。
歴史
編集2000年代の自動車市場の停滞を背景として、当時レーシングシートを生産していたアメリカ合衆国のDXRACERが人間工学に基づいたデザインを活用し、2006年に世界初のゲーミングチェアを発売した[2]。
以降、eスポーツの人気上昇とともに世界のゲーミングチェア市場は拡大しており[3]、日本では2020年に新型コロナウイルス緊急事態宣言に伴う在宅勤務・テレワークの推奨に伴ってゲーミングチェアの人気も高まった[4]。
また、実際に日本のプロスポーツのプレイヤーズベンチでも、疲労軽減効果をもたらす設計や座り心地の観点からゲーミングチェアの導入事例が増加しつつあり、Jリーグでは味の素スタジアム、プロ野球(NPB)では明治神宮野球場、楽天モバイルパーク宮城、東京ドーム(監督用座席のみ)といったスタジアムで導入されている[5][6][7]。
概要
編集ゲーミングチェアは、長時間のゲームプレイでも疲れにくく、集中しやすい姿勢を維持できるように人間工学に基づいた機能が備わっている。
日本国内のゲーミングチェア所有者を対象とした調査結果によると、使用目的は仕事とゲームが半々であり、全体の87.9%が購入したゲーミングチェアに満足している[8]。
ゲーミングチェアの特徴的な機能としてはヘッドレスト、ランバーサポート、オットマン(足乗せ)があり、リクライニングにより寝ることもできる。リクライニング機能などはそのままに座椅子形状のゲーミングチェアも登場している[9]。
ゲーミングチェアはオフィスチェアなどに比べて低価格な製品が多く、手頃な値段により幅広いユーザーに人気を得た[4]。耐久性は3年から5年程度とされており、製品、使用頻度、環境などによって異なる[10]。
ゲーミングチェアとオフィスチェアの違い
編集ゲーミングチェアとオフィスチェアにそれぞれに明確な定義はないが、ゲーミングチェアは後傾姿勢に最適化されているものが多く[11]、オフィスチェアは前傾姿勢に最適化されているもの(前傾チルト搭載など)が多いとされる[11]。ゲーミング家具ブランド Bauhutte によればFPSゲームに向くのは後傾姿勢[12]であるものの、今のゲーマーは前傾姿勢が多いとされる[12]。一方、オフィスチェアを扱うメーカー(Herman Miller、オカムラなど)もゲーミングチェアへと参入したが、オフィス系のメーカーは前傾姿勢に向けたゲーミングチェアを発売するようになった[13][14]。
またゲーミングチェアはレーシングシートが由来であることからモータースポーツのフルバケットシート、セミバケットシートを思わせるレーシングハーネス用の穴が開いたデザインと大きなリクライニング機能を有する製品が多く、それがオフィスチェアとの明確な違いでもあった[注釈 1][4]。しかしながらその後レザー調以外のゲーミングチェアが増え、またゲーミングチェアを扱うメーカーがオフィス向けモデルへも進出し[15]、ゲーミングチェアとオフィスチェアの明確な違いはなくなりつつある。
素材
編集表面素材はポリウレタンレザー製とファブリック製がある。2021年にはDXRACERから世界初のフルエアメッシュ製ゲーミングチェアが発売され[16]、オフィスチェアのようなメッシュ製も増えてきている。
クッションではウレタンのもの、モールドウレタンのもの、ポケットコイルのものなどが存在する[17]。ゲーミング家具ブランド Bauhutteのアンケート調査によればチェアのユーザーはクッション性を重視する人が多く、クッション性では柔らかめを求める人と硬めを求める人が居たとされる[17]。
耐久性・安全性
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ゲーミングチェア自体には耐久基準や安全規格が無いものの、一部のメーカーはオフィスチェアの規格[注釈 2]を準用して性能試験したことを謳うゲーミングチェアを出している(AKRacingのPremiumシリーズ[20]、コンティークス[21]、noblechairs[22]など)。
付加機能
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スピーカーを搭載したゲーミングチェア(「GTRacing ゲーミングチェア スピーカー」[23]など)や、マッサージ機能を搭載したゲーミングチェア[24][25]も存在する。
価格帯と主なメーカー
編集日本では、黎明期から販売している先述のDXRACERや中国のAKRacing[26]などが高価格帯として人気であるが、近年はネット通販を中心に格安の中国製品やそれに対抗する国内メーカーも増えている。
国内メーカーは中低価格帯が多く、中価格帯は関家具のContieaks(コンティークス)、ビーズのBauhutte(バウヒュッテ)などが、低価格帯だとGTRacingやCyberGround、アイリスオーヤマが人気を博している。
海外では独自性の高いデザインのゲーミングチェアも人気であり、ゲーミングチェアブランドは年々増えている。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ “The complete history of gaming chairs: 2006-2020”. CHAIRSFX. 2020年12月31日閲覧。
- ^ “DXRACER brand introduction”. DXRACER. 2020年12月31日閲覧。
- ^ “The Global Gaming Chair Market is expected to grow by USD 71.3 mn during 2020-2024, progressing at a CAGR of 6% during the forecast period”. Yahoo Finance. 2020年12月31日閲覧。
- ^ a b c “在宅勤務で疲れない、上半身を支えるゲーミングチェア”. NIKKEI STYLE (日本経済新聞社). (2020年8月19日) 2021年12月17日閲覧。
- ^ 【ヤクルト】神宮球場のベンチがモデルチェンジ! プロゲーマー愛用の会社が製作 座り心地抜群 - スポーツ報知 2021年3月12日
- ^ 楽天のベンチシートが15年ぶりに総入れ替え「AKRacing」の特注ゲーミングチェア - Sponichi Annex 2022年3月23日
- ^ 読売巨人軍、AKRacingのゲーミングチェアを採用 東京ドームベンチ内の監督用チェアとして設置 - gamebiz 2021年3月22日
- ^ “ゲーミングチェアに新たな刺客「ニトリ」登場! ゲーミングチェア実態調査で人気ブランドの第3位に”. GAME Watch. 2021年9月14日閲覧。
- ^ 工藤エイム (2017年1月27日). “座椅子タイプのゲーミングチェア“極坐”を家に持ち帰って実際に試してみた”. ファミ通.com. 2021年8月16日閲覧。
- ^ “寿命は?ゲーミングチェアの劣化を写真付で解説”. GAMINGCHAIR GEEK. 2020年12月31日閲覧。
- ^ a b “ゲーミングチェアとオフィスチェアの違いは? パソコン作業におすすめのチェアをご紹介”. コクヨ. 2023年12月29日閲覧。
- ^ a b “エイム精度を引き上げろ。エイミングデスクで後傾姿勢を作る方法。”. BE-S. 2023年12月29日閲覧。
- ^ ハーマンミラー、ゲーマーの身体的負担を軽減する『エンボディゲーミングチェア』を発売。アーロンチェアなどで知られる家具ブランドがロジクールGと共同開発 ファミ通 2020年7月27日
- ^ オカムラ,前傾姿勢に対応する国産ゲーマー向けチェア「STRIKER」を2021年1月に発売。実勢価格は7万円台後半を予定 4Gamer.net 2020年11月10日
- ^ “AKRacing Premium オフィス向けハイエンドモデル”. 2020年12月31日閲覧。
- ^ “DXRACER Air”. DXRACER. 2021年9月21日閲覧。
- ^ a b “おしりが痛い!あなたの椅子が原因かも?”. BE-S. 2023年12月29日閲覧。
- ^ 安心・安全なイスの選び方 日本オフィス家具協会
- ^ オフィスチェア家庭用と業務用チェアのテスト基準の違い。 村田家具
- ^ Premiumシリーズ - JIS規格に基づく性能試験を実施し、より確かな品質のチェアをお届け テックウインド 2017年11月2日
- ^ -コンティークスについて- 関家具
- ^ 高品質へのこだわり アーキサイト
- ^ 9,980円から買える!お手頃ゲーミングチェアおすすめ10選 Impress 2023年10月31日
- ^ Acerから“マッサージ機能”つきゲーミングチェアが登場 Impress 2019年9月5日
- ^ 【2023年版】マッサージ機能付きゲーミングチェアのおすすめ8選! xwa 2023年7月20日
- ^ 石田賀津男 (2015年12月14日). “ゲーミングチェアブランド「AKRacing」代表李峰氏特別インタビュー”. GAME Watch. 2021年8月16日閲覧。