グリーナムステークス
グリーナムステークス(Greenham Stakes)は、イギリスのニューベリー競馬場で行われる競馬の競走。2000ギニーの前哨戦として知られる。2014年の格付はG3。
グリーナムステークス Greenham Stakes | |
---|---|
開催国 | イギリス |
競馬場 | ニューベリー競馬場 |
創設 | 1906年 |
2014年の情報 | |
距離 |
芝7ハロン (約1408メートル)・直線 |
格付け | G3[1] |
賞金 | 賞金総額60,000ポンド[1] |
出走条件 | 3歳牡馬・騸馬 |
負担重量 |
9ストーン (約57.15kg) |
概要
編集グリーナムステークスは、ヨーロッパの平地競馬シーズン初めの4月に行われる3歳牡馬の競走である[2]。クレイヴンステークスとともに、ヨーロッパ各地の牡馬クラシックレースの重要な前哨戦とみなされている[2][3]。1970年にヨーロッパにグループ制が敷かれて以来、G3に格付けされている。
ヨーロッパクラシック戦の前哨戦
編集グリーナムステークスは定量戦で、2歳時の成績に関係なく同じ斤量で出走できるため、有力な3歳馬にとってシーズン最初のグループ競走となる場合も多い。歴代優勝馬の中でその年に特筆すべき成績を残したものとしては、1909年優勝のミノル(Minoru、この年のクラシック二冠)、1923年の優勝馬パース(Parth、この年の凱旋門賞優勝)、ミルリーフ(Mill Reef、この年の全欧年度代表馬)、クリス(Kris、この年の全欧チャンピオンマイラー)などがいる。
近年のグリーナムステークスの優勝馬の中で最も活躍したのは2011年のフランケルである。フランケルはグリーナムステークス優勝を皮切りに、2000ギニーをはじめG1を無傷のまま4連勝、この年の全欧年度代表馬に選出された[2]。
このほか、グリーナムステークスの優勝馬で2000ギニーに勝ったものとしては、ミノル(Minoru)、オーウェル(Orwell)、ウォロー(Wollow)がいる。また、1992年にグリーナムステークスで4着だったロドリゴデトリアーノがその後2000ギニーで優勝している[2]。イギリス以外では、1998年の優勝馬ヴィクトリーノート(Victory Note)がプール・デッセ・デ・プーラン(フランス2000ギニー)に勝った[2]。
スプリングトライアル開催
編集イギリスでは秋から春にかけてが障害競馬のシーズンとなっており、ニューベリー競馬場でも3月の末に障害戦がフィナーレを迎える。そして4月になると、いよいよ平地競走のシーズンが始まり、3歳クラシック戦線がスタートする。ニューベリー競馬場では毎年4月に恒例の「スプリングトライアル開催(Spring Trials Meeting)」を行っている[4]。近年は航空関連会社のドバイデューティーフリーがスポンサーとなって、「ドバイデューティーフリー・スプリングトライアル開催」として行われている。
この開催では、3歳牡馬の2000ギニーの前哨戦としてグリーナムステークス、3歳牝馬の1000ギニー前哨戦のフレッドダーリンステークス、古馬の重賞としてクラシック距離のジョンポーターステークス(G3、1マイル4ハロン5ヤード=約2419メートル)が行われる[5]。
2014年のスプリングトライアル開催にはエリザベス女王が臨席した[6]。
レース名について
編集グリーナムステークスの名前は、ニューベリー競馬場があるグリーナム行政教区に由来する[4]。
原語の“Greenham”の日本語カタカナ転記については「グリーナム」「グリーンハム」などが見られるが、本項では日本での競馬関係文献での一般的表記として「グリーナム」で統一する。
スポンサー名について
編集グリーナムステークスでは、1970年代に生命保険会社のClerical Medical社、1980年代から1994年までは金融会社のSinger & Friedlander社がスポンサーを務めた。1995年から4年間Tripleprint社がスポンサーとなり、「トリプルプリントステークス」の名称で行われていた時期がある。ただしこの時期でも競走成績書には「グリーナムステークス」と記載される。2000年からはレーンズエンド牧場(Lane's End)、バズウィックタイヤ社(Bathwick Tyres)、トートスポーツドットコム(totesport.com)、エーオン社がスポンサーとなり、いずれも競走名にスポンサー名を冠して開催された。これらの場合も、競走成績書には「グリーナムステークス」と記載される[4][7]。
なお、上述のスプリングトライアル開催でグリーナムステークスと同日に開催されるフレッドダーリンステークスは、イベントのスポンサー名から「ドバイデューティーフリーステークス」の名称で行われるが、競走成績書には本来の「フレッドダーリンステークス」と記載される[8]。同様にジョンポーターステークスも、イベント開催上は「ドバイデューティーフリー・ファイネストサプライズステークス」の名称でおこなわれるが、成績書上は「ジョンポーターステークス」となる[9]。
歴史
編集グリーナムステークスは1906年に創設され、第二次世界大戦が始まるまでは1マイル(約1609メートル)で行われていた[4]。1941年から1948年までの間は中断され、1949年に再開された時に7ハロン60ヤード(約1463メートル)になった。1956年からは7ハロン(1408メートル)に短縮されて行われている[4]。
2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響により開催中止となった。
記録
編集最多勝騎手
編集- スティーヴ・ドナヒュー(en:Steve Donoghue) - 5勝。1911年、1919年、1920年、1924年、1934年
- ジョー・マーサー - 5勝。1955年、1968年、1973年、1979年、1984年
最多勝調教師
編集- ヘンリー・セシル調教師 - 6勝。1976年、1979年、1982年、1986年、1999年、2011年
- リチャード・ハノン調教師(en:Richard Hannon, Sr.) - 6勝。1990年、2002年、2007年、2008年、2010年、2013年
歴代勝馬
編集*印は日本輸入馬。(国際競走出走のための一時的なものも含む)
1906年-1940年(1マイル時代)
編集- 1906: Rocketter
- 1907: Donna Caterina
- 1908: Sir Toby
- 1909: Minoru
- 1910: Bronzino
- 1911: Sydmonton
- 1912: Jingling Geordie
- 1913: Shogun
- 1914: Sunny Lake
- 1915: Let Fly、Sunfire※
- 1916: Analogy
- 1917: 中止(第一次世界大戦)
- 1918: 中止(第一次世界大戦)
- 1919: *ポリグノータス
- 1920: Silvern
- 1921: 中止
- 1922: Weathervane
※1915年は同着。
1941年-1955年(7ハロン60ヤード時代)
編集- 1941: 中止(第二次世界大戦)
- 1942: 中止(第二次世界大戦)
- 1943: 中止(第二次世界大戦)
- 1944: 中止(第二次世界大戦)
- 1945: 中止(第二次世界大戦)
- 1946: 中止(第二次世界大戦)
- 1947: 中止(第二次世界大戦)
- 1948: 中止(第二次世界大戦)
- 1949: Star King
- 1950: Port o'Light
- 1951: 中止
- 1952: Serpenyoe
- 1953: March Past
- 1954: *インファチュエイション
- 1955: Counsel
1956年以降(7ハロン時代)
編集施行年 | 格付 | 優勝馬 |
---|---|---|
1956 | *ラティフィケイション | |
1957 | Pipe of Peace | |
1958 | Paresa | |
1959 | Masham | |
1960 | Filipepi | |
1961 | Primus | |
1962 | *ロムルス | |
1963 | Fighting Ship | |
1964 | Excel | |
1965 | Silly Season | |
1966 | 中止 | |
1967 | Play High | |
1968 | Heathen | |
1969 | Tower Walk | |
1970 | G3 | Gold Rod |
1971 | G3 | Mill Reef |
1972 | G3 | Martinmas |
1973 | G3 | Boldboy |
1974 | G3 | Glen Strae |
1975 | G3 | Mark Anthony |
施行年 | 格付 | 優勝馬 |
---|---|---|
1976 | G3 | Wollow |
1977 | G3 | He Loves Me |
1978 | G3 | Derrylin |
1979 | G3 | Kris |
1980 | G3 | Final Straw |
1981 | G3 | Another Realm |
1982 | G3 | *カジュン |
1983 | G3 | *ワッスル |
1984 | G3 | Creag-an-Sgor |
1985 | G3 | Bairn |
1986 | G3 | Faustus |
1987 | G3 | Risk Me |
1988 | G3 | Zelphi |
1989 | G3 | Zayyani |
1990 | G3 | Rock City |
1991 | G3 | Bog Trotter |
1992 | G3 | Lion Cavern |
1993 | G3 | Inchinor |
1994 | G3 | Turtle Island |
1995 | G3 | Celtic Swing |
1996 | G3 | Danehill Dancer |
1997 | G3 | Yalaietanee |
1998 | G3 | Victory Note |
1999 | G3 | Enrique |
2000 | G3 | Barathea Guest |
※2000年はニューマーケット競馬場で開催。
施行年 | 格付 | 優勝馬 |
---|---|---|
2001 | G3 | Munir |
2002 | G3 | Redback |
2003 | G3 | Muqbil |
2004 | G3 | Salford City |
2005 | G3 | Indesatchel |
2006 | G3 | Red Clubs |
2007 | G3 | Major Cadeaux |
2008 | G3 | Paco Boy |
2009 | G3 | Vocalised |
2010 | G3 | Dick Turpin |
2011 | G3 | Frankel |
2012 | G3 | Caspar Netscher |
2013 | G3 | Olympic Glory |
2014 | G3 | Kingman |
2015[10] | G3 | Muhaarar |
2016[11] | G3 | Tasleet |
2017[12] | G3 | Barney Roy |
2018[13] | G3 | James Garfield |
2019[14] | G3 | Mohaather |
2021 | G3 | Chindit |
2022[15] | G3 | Perfect Power |
2023[16] | G3 | Isaac Shelby |
2024[17] | G3 | Esquire |
脚注
編集出典
編集- HRUK Greenham Stakes History2014年4月26日閲覧。
- FRIX Greenham Stakes2014年4月26日閲覧。
- ニューベリー競馬場公式サイト スプリングトライアル開催2014年4月26日閲覧。
基礎情報
編集- IFHA(国際競馬統括機関連盟)HP Greenham S.2014年4月26日閲覧。
各回結果
編集- Galopp-Sieger Greenham Stakes2014年4月26日閲覧[18]。
「グリーナム」表記の出典
編集- 『日本の種牡馬録8』白井透・著、サラブレッド血統センター・刊、1998、p26
- 『サラブレッド種牡馬銘鑑』第2巻,日本中央競馬会・刊,1972、pVII
- 『サラブレッド血統事典』山野浩一・吉沢譲治、二見書房、1992、1996、p617
- 『新・世界の名馬』原田俊治・著、サラブレッド血統センター・刊、1993、p163
注釈・出典
編集- ^ a b 2014 International Cataloguing Standards Book Great Britain2014年12月19日閲覧。
- ^ a b c d e Betting-Directory.com Greenham Stakes2014年4月26日閲覧。
- ^ HRUK Greenham Stakes History2014年4月26日閲覧。
- ^ a b c d e FRIX Greenham Stakes2014年4月26日閲覧。
- ^ ニューベリー競馬場公式HP スプリングトライアル開催2014年4月26日閲覧。
- ^ ZIMBO Dubai Duty Free Spring Trials2014年4月26日閲覧。
- ^ Galopp-Sieger Greenham Stakes2014年4月26日閲覧。
- ^ FRIX Fred Darling Stakes2014年4月26日閲覧。
- ^ FRIX John Porter Stakes2014年4月26日閲覧。
- ^ 2015年レース結果 - racingpost 2015年4月20日閲覧
- ^ 2016年レース結果 - racingpost 2016年4月19日閲覧
- ^ 2017年レース結果 - racingpost 2017年4月23日閲覧
- ^ 2018年レース結果 - racingpost 2018年4月22日閲覧
- ^ “2019年グリーナムS”. レーシングポスト (2019年4月13日). 2019年4月14日閲覧。
- ^ “2022年グリーナムS”. レーシングポスト (2022年4月16日). 2022年4月18日閲覧。
- ^ 2023年グリーナムステークスレーシングポスト、2023年4月22日配信・閲覧
- ^ 2024年グリーナムステークスレーシングポスト、2024年4月20日配信・閲覧
- ^ 一部回次欠落部については英語版による。
関連リンク
編集- クレイヴンステークス
- ヨーロピアンフリーハンデキャップ - クレイヴン開催で行われる3歳戦で、2000ギニーの前哨戦。
- 2000ギニートライアルステークス