グラフキー
グラフキーとは、NECのPC-8000シリーズ・PC-8800シリーズ・PC-9800シリーズ・PC-9821シリーズ、MSX、シャープのMZシリーズ・X1シリーズ、富士通のFM-8・FM-7シリーズ・FM-11シリーズなど、主に1970 - 1980年代に発売された日本製パーソナルコンピュータのキーボードにあった、GRPHまたはGRAPHと刻印されたキーである。
スタンドアロンBASIC環境下で、 JIS C 6220 (いわゆるANKコード)の未定義領域に設定された「グラフィックキャラクタ」と呼ばれる特殊文字を、キーボードから直接入力するために用意されたキーである。各メーカーによる独自拡張であり、メーカーや機種によって仕様は異なる。
ここではそのキーと、文字のグラフィックキャラクタについても扱う。
概要
編集1970年代から1980年代初頭にかけての当時の一般的なコンピュータで採用されていた文字コードであるASCII(7ビット、全128文字)は、英数字など限られた文字しか表示できなかった。ASCIIの拡張版である JIS C 6220 (1987年に「JIS X 0201」に改称)では、ASCIIを8ビットに拡張し(全256文字)、レジでレシートを発行する時などに必要な円記号「¥」を収録、さらに最上位ビット(MSB)が1の区画に「片仮名用図形文字集合」としてカタカナを収録することで日本語が利用可能となったが、やはりそれだけの文字では実用に難があった。
そこで、JIS C 6220の「片仮名用図形文字集合」の未定義領域(0x80 - 0x9F および 0xE0 - 0xFE)に、表などを書くための罫線素片、「円」の漢字、その他の漢字や記号、などを含ませることで、全256文字という枠内で何とか実用性を確保しようとした。それらの文字はグラフィックキャラクタ(略して「グラフ」)と呼ばれた。「グラフ」の入力方法として用意されたのが「グラフキー」である。
PC-8001以後のNECのパソコンでは、これらの文字を、キャラクタROMの0x80 - 0x9F および 0xE0 - 0xF7に配置した。また、MSXでは0xE0 - 0xF7に配置された。
なお、Shift_JISは第1バイトに同じ未定義領域を使用しているため、グラフィックキャラクタと混在させることはできない[1][2]。
1980年代後半になると、JIS第2水準漢字まで収録した漢字ROMと日本語入力システム(かな漢字変換システム)を搭載したパソコンが普及し、わざわざ「グラフ」を使わなくても漢字や記号を入力することが可能となった。そのため、グラフキーを使うことはなくなった。
グラフキーは、「グラフ」を入力する意味を無くした後も、互換性確保の為に1990年代に展開されたPC-9821シリーズでもキーボードに搭載され続けた。当時は既にWindows時代であり、PC/AT互換機用ソフトウェアの移植などで、Altキーの代わりに用いられた(文字コードのMSBを1にする、という機能としてはほぼ同等のキーである)。
入力できた文字
編集ブロック要素
編集- ▁▂▃▄▅▆▇█▏▎▍▌▋▊▉▔▕
- [3]
罫線素片
編集- ┼┴┬┤├─│┌┐└┘╭╮╰╯═╞╡
三角
編集- ◢◣◥◤
スート
編集- ♠♦♥♣
丸
編集- ●○
斜線
編集- ╱╲╳
漢字
編集- 円年月日時分秒
MSXでは以下の文字も入力可能
- 火水木金土百千万大中小π
各社製品
編集脚注
編集- ^ 『続 PC110番 NECPC-9800シリーズ編』ラジオ技術社〈実践パソコンQ&A集〉、1985年8月10日、31頁。doi:10.11501/12629521。
- ^ 『新 PC110番 NECPC-8800シリーズ編』ラジオ技術社〈実践パソコンQ&A集〉、1987年7月1日、85-87頁。doi:10.11501/12629506。
- ^ MS ゴシックとMS 明朝だと4つ目の文字の高さが正しくない