クレーター湖(クレーターこ、英語: Crater Lakeクラマス語: giiwas[1])は、アメリカ合衆国西部に位置するオレゴン州南中部のカルデラである。クレーターレイク国立公園のシンボルであり、青色で透き通った水が有名である。

クレーター湖
リムビレッジから見た冬の景色のパノラマ
クレーター湖の位置(オレゴン州内)
クレーター湖
クレーター湖
クレーター湖の位置(アメリカ合衆国内)
クレーター湖
クレーター湖
湖底調査に基づく地形
位置 オレゴン州クラマス郡
座標 北緯42度57分 西経122度06分 / 北緯42.95度 西経122.10度 / 42.95; -122.10座標: 北緯42度57分 西経122度06分 / 北緯42.95度 西経122.10度 / 42.95; -122.10
湖の種類 火山湖
主な流入 降水と積雪のみ
主な流出 蒸発、ウッドリバーへの地下浸透
集水域面積 23.3 sq mi (60 km2)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
延長 6 mi (9.7 km)
最大幅 5 mi (8.0 km)
面積 20.6 sq mi (53 km2)
平均水深 1,148 ft (350 m)
最大水深 1,949 ft (594 m)
水量 4.49 cu mi (18.7 km3)
滞留時間 157年
沿岸線の延長1 21.8 mi (35.1 km)
水面標高 6,178 ft (1,883 m)
ウィザード島
ファントムシップ
1 沿岸線の延長は厳密な測定によるものではない。
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クレーター湖のパノラマ画像(2016年春)

概要

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この湖は、マザマ山英語版の崩壊により約7700年(±150年)前に形成された[2]深さ655mのカルデラ[3]の一部を占める。流入河川や流出河川はなく、降雨や降雪と蒸発の関係は250年ごとに水が全て入れ替わる位の割合である。水深は594 m[4]でアメリカ合衆国の中で最も深い。世界だと最大水深では第9位[5]、平均水深では第3位である[6][7]

クレーター湖は「湖の老人」と名付けられた成木の切り株が1世紀以上にわたって浮かんでいることで知られる[8][9]。水温が低いためこの切り株は分解されることなく長年にわたって水面を浮き沈みしている。

クレーター湖には2つの小さな島がある。一つは湖の西岸近くにある約128 haの面積を持つ噴石丘、ウィザード島英語版である。もう一つは湖の南岸にある自然に出来た石柱であるファントムシップである。

土着の魚個体群はなかったが、1888年から1941年まで湖で多くの魚が飼育された。数種の魚は持続可能な個体群を成している[10]。2002年から、州の登録プレートのデザインのひとつにクレーター湖が採用された[11]。2005年にアメリカ合衆国造幣局から発行されたオレゴン州の25セント硬貨は、クレーター湖の絵が裏面に描かれている[12]

 
クレーター湖をイメージしたオレゴン州の25セント硬貨

場所

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クレーター湖はクラマス郡にあり、郡庁所在地であるクラマスフォールズから北西に約97 km、メドフォードから北東に約130 kmの場所にある[13]

1853年6月に探険家のジョン・ウェズリー・ヒルマンがアメリカ原住民以外では初めてこの湖を発見し、「ディープ・ブルー・レイク」と名づけた。その後、ブルー・レイク、レイク・マジェスティーと改名され、最終的にクレーター湖となった[14][15]

大きさと水深

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ウィザード島(クレーターレイク国立公園内)

クレータ湖は差し渡し8.0×9.7 kmで、周縁の標高は2,100~2,400 m、平均水深は350 mである。最大水深は天候によってわずかに変動するが[3]、測定時は594 mであった[3][4][16][17]。最大深度に基づくと、アメリカ合衆国の中で最も深く、北アメリカ大陸ではカナダにあるグレートスレーブ湖の次に深く、世界で9番目に深い湖である[5]。クレーター湖はよく世界で7番目に深い湖といわれるが、南極大陸にある4,000mの氷の下にあるボストーク湖と、チリアルゼンチンの国境沿いにある最新の測深儀を使用して計測していないオイギンス湖を除いた順位である[18][6][19]

平均水深で考えたとき、クレーター湖は西半球で最も深く、世界で3番目に深い湖となる。クレーター湖研究所の所長で陸水学者のオーウェン・ホフマン氏は、「湖盆全体が海水面より上にある湖の中では、平均水深で比較した場合クレーター湖が最も深い。バイカル湖タンガニーカ湖のほうがクレーター湖よりも深いが、どちらも湖盆の一部が海面下に広がっている」と言及した[6][7]

地形と湖の形成

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湖の標高別に色分けされた地形図

カスケード山脈火山弧の一つであるマザマ山は少なくとも40万年の間安山岩デイサイトリョーダサイトで形成されていた。カルデラは6,000~8,000年前の噴火によって作られ、マザマ山の陥没につながった。この噴火によって約50km3のリョーダサイトが噴出した。それ以来、マザマ山の噴火は全てカルデラ内で起こるようになった[20][21]

溶岩の噴火によって、中央プラットホーム、その上に被さったリョーダサイト、ウィザード島、メリアムコーンなどの小規模な火山的特徴が形成された。堆積物や地すべりの残骸もカルデラの底を覆っている[22]

その後カルデラは冷却され、降雨と降雪によって湖が形成された。カルデラの周縁からの地すべりによって、湖底に扇状堆積地やタービダイトの堆積物が生じた。活動的な噴気孔熱水泉がこの期間中よく見られた。しばらくしてカルデラの周縁の斜面が多かれ少なかれ安定し、放射状に山から流れる渓流が回復し、密集した森林が不毛の土地を覆った。湖を現在の水深 (594 m) まで埋めるために約720年必要であると推定されている。これらの現象の多くは、現在より降雨が少ない気候が優勢のときに起きた[23]

いくつかの水熱活動が湖底に沿って活動しており、将来的にマザマ山が噴火する可能性があることを示唆している[24]

気候

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クレーター湖は亜寒帯気候で標高が高く、オレゴン州の全域と同じように小笠原気団の影響を強く受けるため、珍しい乾夏型ケッペンの気候区分Dsc)である。夏は小笠原気団の影響を受けて乾燥した穏やかな気候であるが、冬はアリューシャン低気圧の影響で寒冷で平均降雪量は12.83 m、最大降雪量は3.53 mとなる。この雪は7月中旬まで解けず、周辺の山々で氷河を形成する。1949~1950年の冬には22.48 mの降雪があったが、降雪量が少なかった1981~1982年の冬は4.88 mしか降らなかった[25]。最も降雪があった日は1971年の2月28日で、降雪量は94.0 cmであった。同年の6月と9月には1回の暴風で51 cmの降雪も見られた。この湖では夏にも霜が発生する。平均的な年で氷点下の気温が見られるのは8月19日から7月7日まで、観測可能な降雪 (0.25 cm以上) が見られるのは10月1日から6月15日までである。

クレーター湖の気候
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
最高気温記録 °F°C 64
(18)
66
(19)
67
(19)
71
(22)
80
(27)
95
(35)
100
(38)
94
(34)
93
(34)
81
(27)
71
(22)
64
(18)
100
(38)
平均最高気温 °F°C 33.8
(1)
35.2
(1.8)
37.3
(2.9)
42.8
(6)
50.5
(10.3)
58.6
(14.8)
69.6
(20.9)
69.6
(20.9)
63.0
(17.2)
52.0
(11.1)
40.1
(4.5)
34.6
(1.4)
48.93
(9.4)
日平均気温 °F°C 25.8
(−3.4)
26.8
(−2.9)
28.3
(−2.1)
32.6
(0.3)
39.4
(4.1)
46.3
(7.9)
55.2
(12.9)
55.1
(12.8)
49.7
(9.8)
41.2
(5.1)
31.8
(−0.1)
26.8
(−2.9)
38.25
(3.46)
平均最低気温 °F°C 17.7
(−7.9)
18.3
(−7.6)
19.2
(−7.1)
22.3
(−5.4)
28.2
(−2.1)
33.9
(1.1)
40.7
(4.8)
40.6
(4.8)
36.3
(2.4)
30.3
(−0.9)
23.4
(−4.8)
19.0
(−7.2)
27.49
(−2.49)
最低気温記録 °F°C −21
(−29)
−18
(−28)
−7
(−22)
−3
(−19)
5
(−15)
10
(−12)
18
(−8)
23
(−5)
16
(−9)
3
(−16)
−7
(−22)
−18
(−28)
−21
(−29)
降水量 inch (mm) 10.20
(259.1)
7.93
(201.4)
7.74
(196.6)
4.96
(126)
3.22
(81.8)
2.31
(58.7)
0.75
(19)
0.95
(24.1)
2.08
(52.8)
1.94
(49.3)
9.25
(235)
11.14
(283)
62.47
(1,586.8)
降雪量 inch (cm) 96.2
(244.3)
82.0
(208.3)
82.2
(208.8)
45.3
(115.1)
19.7
(50)
3.9
(9.9)
0.2
(0.5)
0.1
(0.3)
2.8
(7.1)
21.4
(54.4)
60.8
(154.4)
90.4
(229.6)
505
(1,282.7)
出典:Western Regional Climate Center[26]

水質

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ウィザード島とクレーター湖のパノラマ

クレーター湖は支流からの流入口や支流への流出口がないなどの特殊な要因によって汚染物質が無いため、水質の純度は世界最高クラスである。セッキ円板によって測定した透明度は一貫して、30 m強から20 m中ほどの値を示す。1997年には、53.3 mという記録的明瞭度を記録した。

クレーター湖は比較的高濃度の溶解塩、総アルカリ度、伝導度を有する。平均pH度は一般的に7~8の間である[27]

クレーター湖信仰

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太陽と雲を反射するクレーター湖

祖先がマザマ山の陥没とクレーター湖の形成を目撃していたインディアンの一部であるクラマス族は長い間湖を聖地として崇めていた。クラマス族の伝説では、天空の神であるスケルと地底の神であるラオ英語版との間の戦いについて語っている。伝承ではマザマ山はこの戦いで破壊され、クラマス語で「giiwas」と呼ばれる湖を形成したとされている[1]。クラマス人はカルデラの壁を登るなどの危険なことを行うビジョン・クエスト英語版でクレーター湖を使用していた。その儀式に成功した人はしばしばより多くの霊的な力を持っているとされた。クラマス族は今もなお、クレーター湖を霊地として高く尊敬している[28][29]

脚注・出典

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  1. ^ a b Klamath Tribes Language Project”. The Klamath Tribes (2012年). March 21, 2016閲覧。
  2. ^ "Crater Lake". Global Volcanism Program. Smithsonian Institution. 2008年12月18日閲覧
  3. ^ a b c Facts about Crater Lake”. Oregon Explorer. オレゴン州立大学. 2009年2月5日閲覧。
  4. ^ a b Bacon, CR; Gardner, JV; Mayer, LA; Buktnenica, MW et al. (June 2002). “Morphology, volcanism, and mass wasting in Crater Lake, Oregon”. GSA Bulletin 114 (6): 675–692. Bibcode2002GSAB..114..675B. doi:10.1130/0016-7606(2002)114<0675:mvamwi>2.0.co;2. http://ccom.unh.edu/sites/default/files/publications/Bacon%20et%20al.%202002.pdf. 
  5. ^ a b 9 of the World’s Deepest Lakes” (English). Encyclopaedia Britannica. 8 April 2017時点のオリジナルよりアーカイブ。8 May 2017閲覧。 “#9 Crater Lake (1,943 feet [592 meters]), #8 Great Slave Lake (2,015 feet [614 meters])”
  6. ^ a b c Juillerat, Lee (2007年11月29日). “Into the Deep: Crater Lake's ranking as one of the world's deepest lakes varies by how list is determined” (英語). Herald and News. http://www.craterlakeinstitute.com/crater-lake-new-archives/2007-2/2007-07/ 2021年3月12日閲覧。 
  7. ^ a b Crater Lake, On Average, Is Deepest Lake in North America” (see story comments as well). National Parks Traveler (2007年11月14日). 2013年7月8日閲覧。
  8. ^ Kartchnerand, W.E.; Doerr, J.E., Jr. (September 1938). “Wind Currents In Crater Lake As Revealed By The Old Man Of The Lake”. Nature Notes from Crater Lake National Park XI (3). オリジナルの2008-06-11時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20080611203611/http://www.nps.gov/archive/crla/notes/vol11-3c.htm. 
  9. ^ “On the Trail The Old man of Crater Lake” (Video). CBS News. (October 9, 2016). http://www.cbsnews.com/news/on-the-trail-the-old-man-of-crater-lake/ October 9, 2016閲覧。 
  10. ^ The Fish of Crater Lake”. National Park Service. 2010年2月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年10月2日閲覧。
  11. ^ Goetze, Janet (August 26, 2002). “Crater Lake plates aglow with color”. The Oregonian (Portland, Oregon): p. B4 
  12. ^ The Oregon Quarter: The United States Mint”. U.S. Department of the Treasury. 2009年9月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年6月29日閲覧。
  13. ^ Crater Lake National Park: Directions”. National Park Service. 2009年12月10日閲覧。
  14. ^ Tilden, Freeman (1968). The National Parks. New York: Alfred A. Knopf 
  15. ^ Runkel, H.J. (1953). “Crater Lake Discovery Centennial”. Nature Notes from Crater Lake National Park XIX. オリジナルの2008-12-04時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20081204232255/http://www.nps.gov/archive/crla/notes/vol19b.htm. 
  16. ^ Andalkar, Amar (2003年12月18日). “Crater Lake (Mount Mazama)”. Skiing the Cascade Volcanoes. skimountaineer.com. 2013年7月8日閲覧。
  17. ^ Gibbons, Helen (September 2000). “CMG Maps Bottom of Crater Lake, Oregon”. U.S. Geological Survey. 2010年5月16日閲覧。
  18. ^ Evans, C.T. (2007年). “Lake Baikal”. Northern Virginia Community College. 2013年7月8日閲覧。
  19. ^ Jaros, Garret (2010年3月16日). “A snowshoe view: Take a ranger-guided winter trek around snowy Crater Lake” (Oregon Life section). The Register-Guard (Eugene, Oregon): p. D1. http://projects.registerguard.com/csp/cms/sites/web/sports/outdoors/24516398-44/lake-park-kuehnert-snow-winter.csp 2013年7月8日閲覧。 
  20. ^ Topinka, Lyn (2008年4月18日). “Mount Mazama Volcano and Crater Lake Caldera, Oregon”. Cascades Volcano Observatory. U.S. Geological Survey. 2013年7月8日閲覧。
  21. ^ Jewell and McRae, p. 571
  22. ^ チャールズ, ベーコン; James V. Gardner; Larry A. Mayer; Mark W. Buktenica; Peter Dartnell; David W. Ramsey; Joel E. Robinson (2002). “Morphology, volcanism, and mass wasting in Crater Lake, Oregon”. アメリカ地質学会会報 114 (6): 675–692. Bibcode2002GSAB..114..675B. doi:10.1130/0016-7606(2002)114<0675:MVAMWI>2.0.CO;2. http://gsabulletin.gsapubs.org/content/114/6/675.short. 
  23. ^ Nathenson, Manuel; Charles R. Bacon; David W. Ramsey (2007). “Subaqueous geology and a filling model for Crater Lake, Oregon”. Hydrobiologia 574: 13–27. doi:10.1007/s10750-006-0343-5. 
  24. ^ Geologic History of Crater Lake”. Oregon Explorer. オレゴン州立大学. 2009年2月5日閲覧。
  25. ^ National Oceanic and Atmospheric Administration; Climate at a Glance: Oregon Climate Division 5 (High Plateau) October to June Precipitation
  26. ^ CRATER LAKE NPS HQ, OREGON (351946)”. Western Regional Climate Center. June 12, 2016閲覧。
  27. ^ Facts and Figures about Crater Lake” (PDF). U.S. National Park Service. 2012年1月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年1月3日閲覧。
  28. ^ Park History” (PDF). National Park Service. 2012年1月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年1月3日閲覧。
  29. ^ Crater Lake as Sacred Site”. Sacred Destinations. 2009年6月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月2日閲覧。

参考文献

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  • Fire Mountains of the West: The Cascade and Mono Lake Volcanoes, Stephen L. Harris, (Mountain Press Publishing Company, Missoula; 1988) ISBN 0-87842-220-X
  • Geology of National Parks: Fifth Edition, Ann G. Harris, Esther Tuttle, Sherwood D. Tuttle, (Iowa, Kendall/Hunt Publishing; 1997) ISBN 0-7872-5353-7
  • Bacon, Charles R.; Lanphere, Marvin A. (2006). “Eruptive history and geochronology of Mount Mazama and the Crater Lake region, Oregon”. Geological Society of America Bulletin 118 (11–12): 1331–1359. Bibcode2006GSAB..118.1331B. doi:10.1130/B25906.1. 
  • Oregon, Moon Handbooks, Judy Jewell, W. C. McRae, (Avalon Travel, Berkeley; 2012, 9th edition) ISBN 978-1-59880-885-8

関連項目

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外部リンク

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