クリスタルエクスプレス トマム & サホロ
クリスタルエクスプレス トマム & サホロ[1] (Crystal Express TOMAMU & SAHORO) は、北海道旅客鉄道(JR北海道)が1989年(平成元年)12月[2]から2019年(令和元年)9月まで運用していた鉄道車両(気動車)で、ジョイフルトレインと呼ばれる車両の一種である。機能的にはキハ183系に属し、5100番台を称する。
概要
編集JR北海道が団体・臨時列車用として企画した「リゾート列車」のひとつで、石勝線方面への観光輸送を主目的として、自社の苗穂工場で設計、製作された[3]。同社保有の気動車ジョイフルトレインとしては5番目の編成である。
走行装置は「ニセコエクスプレス」と同様の仕様で、最高速度は 120 km/h である[3]。走行用機関(DMF13HZ・330 PS/2,000 rpm)をキハ183形に2基、キハ182形に走行用機関1基と電源用機関(DMF13HS-G・180 kVA)1基を搭載する。液体式変速機はDW14改。台車も同様のボルスタレス式で、動力台車は一軸駆動のDT53、付随台車はTR239である。ブレーキ装置は自動空気ブレーキであるが、運転席が2階に移ったことにより空気配管を省略するため、ブレーキハンドルは縦軸式の設定器となっている。
1990年度の通商産業省グッドデザイン商品(現・日本産業デザイン振興会グッドデザイン賞)に選定されている。
老朽化のため2019年に引退した。車両は解体されたが、札幌市東区苗穂にある北海道鉄道技術館において側面マークと3号車個室のドアのみ保存されている。
車両詳説
編集「全面展望」を設計コンセプトの主軸とし、内装はハイデッカー構造や展望車が中心となっている。座席はバケットタイプのリクライニングシートで、シートピッチは960 mmである。
当初は3両編成で登場したが、翌1990年(平成2年)12月にダブルデッカー車両のキサロハ182-5101を増結し、4両編成となった。
- キハ183形(5101・5102)
- キハ182形 (5101)
- 2号車として使用される中間車。定員は56人。
- 車体断面はキハ183形よりさらに大きくとり、屋根肩部に天窓を設けるとともに妻部にも窓を設けた「ドームカー」として360度の展望を確保している。各席にシート液晶モニターが設置されていたが、2003年(平成15年)に撤去され、その後は各車車端部と展望室ならびにグリーン個室に大型液晶モニターが設置されている。
- キサロハ182形 (5101)
- 2階客席は4人用のボックスシート(普通席)を7組配置し、1階には4人用のグリーン個室を3室設置する。シートはソファタイプである。2階部分と平屋部分車端部の2か所にラウンジを設け、平屋部に設けられたラウンジには、妻面にかかる曲面ガラスを設けて斜め方向の展望を確保している。
- なお、2010年時点ではグリーン個室は普通個室扱いとなっており、山陽新幹線の700系E編成「ひかりレールスター」で運行される列車と同様な利用制度になっているが、形式はキサロハのままで個室はフルムーン夫婦グリーンパスでも利用可能である。
- 登場当時の車内にはオーディオサービス・TVモニター・大型テーブル・デラックスソファーなどを備えていた。
車内の設備
編集登場当時、車内には荷物室、スキー室、インフォメーションボード、マルチチャンネルAV(25インチ液晶モニター)などの設備を備えていた。
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車内(キハ183形)
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先頭部展望スペース(キハ183形)
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普通席ボックスシート(キサロハ182形)
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グリーン車個室(キサロハ182形)
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ラウンジ(キサロハ182形)
運用の変遷
編集運行開始時より季節ごとの臨時列車に使用されていた。臨時特急「トマムサホロスキーエクスプレス」(札幌 - 新得間)の運用を主とし、2000年代以降は「フラノラベンダーエクスプレス」(札幌 - 富良野間)、その他多客期の臨時特急「とかち」(札幌 - 帯広間)などにも用いられた。2013年(平成25年)冬から2014年(平成26年)7月末まで、エンジントラブルにより「北斗」のキハ183系が長期に運休となっていたため代替車両として運転された。
しかし2019年時点で運用開始から30年が経過し車両の老朽化が目立ってきたことから[6]、同年9月29日の札幌駅 - 富良野駅(函館本線・根室本線経由)間の往復運行をもって引退[2][6]。同年11月30日付で廃車された[7]。翌2020年5月からは苗穂工場と五稜郭車両所で車両の解体が開始された[8]。
商標
編集「クリスタルエクスプレス」は、北海道旅客鉄道が商標として登録している[9]。
登録項目等 | 内容等 |
---|---|
商標 | クリスタルエクスプレス |
称呼 | クリスタルエクスプレス |
出願番号 | 商願平04-270864 |
出願日 | 1992年(平成4年)9月29日 |
登録番号 | 第3021049号 |
登録日 | 1995年(平成7年)1月31日 |
権利者 | 北海道旅客鉄道株式会社 |
役務等区分 | 39類(旅客車による輸送) |
脚注
編集- ^ 弘済出版社「鉄道ダイヤ情報」1990年5月号 No.73 p.76
- ^ a b “リゾート列車・クリスタルエクスプレスがラストラン JR北海道”. 産経ニュース. 産業経済新聞社. (2019年9月29日) 2019年9月30日閲覧。
- ^ a b 『鉄道ダイヤ情報』第73号、弘済出版社、1990年5月、78頁。
- ^ 『鉄道ジャーナル』第526号、2010年8月、147頁。
- ^ 『鉄道ファン』第666号、交友社、2016年10月、43頁。
- ^ a b “クリスタルエクスプレスが最終運行 多くのファン見送る”. どうしん電子版. 北海道新聞社. (2019年9月29日). オリジナルの2019年12月14日時点におけるアーカイブ。 2020年11月7日閲覧。
- ^ 「JR旅客会社の車両配置表」『鉄道ファン』、交友社、2020年7月。
- ^ “JR北海道 クリスタルエクスプレス 一部解体が始まる”. 鉄道チャンネル. 株式会社エキスプレス. (2020年5月19日) 2020年5月19日閲覧。
- ^ “商標「クリスタルエクスプレス」の詳細情報”. Toreru商標検索. 株式会社Toreru. 2022年8月2日閲覧。
参考文献
編集関連項目
編集外部リンク
編集- クリスタルエクスプレス(183系) 車両の紹介 - JR北海道 列車ガイド(ウェブアーカイブ)