カタラン予想( -よそう、: Catalan's conjecture)とは、1844年ベルギー人の数学者・ウジェーヌ・シャルル・カタランが提示した予想である。2002年プレダ・ミハイレスクによりその完全な証明が行われた[1]。2005年に、自身で証明を簡素化した[2]

予想の内容

編集

次の不定方程式について、

xayb = 1
x, a, y, b > 1

上記を満たす自然数解の組み合わせは

x = 3, a = 2, y = 2, b = 3

だけであるというものである。

歴史

編集

この問題の歴史は、少なくともゲルソニデスにまでさかのぼる。ゲルソニデスは1343年に、この予想の特殊なケースとして (x, y) が (2, 3) または (3, 2) の場合を証明した。1850年にヴィクトル・アメデ・レベスグが b =2 の場合を扱ったのが、カタランが予想を立ててから最初の重要な進歩であった[3]

1976年、 ロバート・タイデマン英語版は超越数論のベイカーの方法を適用して a, b の境界を定め、 x, ya, b で制限する既存の結果を用いて、 x, y, a, b の有効な上限を与えた。ミシェル・ランゲビンはこの上限を   と計算した[4]。これにより、有限の数の場合を除いてカタラン予想が解決された。それにもかかわらず、定理を証明するために必要な有限の計算は、時間がかかりすぎるものであった。

カタラン予想は、2002年4月にプレダ・ミハイレスクによって証明され、2004年の Journal für die reine und angewandte Mathematik に掲載された。この証明は円分体ガロワ加群の理論を多用している。証明の解説は、セミネール・ブルバキのユーリ・ビルが行っている[5]。2005年、ミハレスクは簡略化された証明を公開した[6]

一般化

編集

すべての自然数 n に対して、差が n となる累乗数のペアは有限にしか存在しないと考えられている。以下のリストで、 n ≤ 64 に対する1018未満の累乗数について全ての解を示す(A076427)。最小解( > 0)はA103953 を参照せよ。

n 解の個数 kk + n がいずれも累乗数となる数 k n 解の個数 kk + n がいずれも累乗数となる数 k
1 1 8 33 2 16, 256
2 1 25 34 0 none
3 2 1, 125 35 3 1, 289, 1296
4 3 4, 32, 121 36 2 64, 1728
5 2 4, 27 37 3 27, 324, 14348907
6 0 none 38 1 1331
7 5 1, 9, 25, 121, 32761 39 4 25, 361, 961, 10609
8 3 1, 8, 97336 40 4 9, 81, 216, 2704
9 4 16, 27, 216, 64000 41 3 8, 128, 400
10 1 2187 42 0 none
11 4 16, 25, 3125, 3364 43 1 441
12 2 4, 2197 44 3 81, 100, 125
13 3 36, 243, 4900 45 4 4, 36, 484, 9216
14 0 none 46 1 243
15 3 1, 49, 1295029 47 6 81, 169, 196, 529, 1681, 250000
16 3 9, 16, 128 48 4 1, 16, 121, 21904
17 7 8, 32, 64, 512, 79507, 140608, 143384152904 49 3 32, 576, 274576
18 3 9, 225, 343 50 0 none
19 5 8, 81, 125, 324, 503284356 51 2 49, 625
20 2 16, 196 52 1 144
21 2 4, 100 53 2 676, 24336
22 2 27, 2187 54 2 27, 289
23 4 4, 9, 121, 2025 55 3 9, 729, 175561
24 5 1, 8, 25, 1000, 542939080312 56 4 8, 25, 169, 5776
25 2 100, 144 57 3 64, 343, 784
26 3 1, 42849, 6436343 58 0 none
27 3 9, 169, 216 59 1 841
28 7 4, 8, 36, 100, 484, 50625, 131044 60 4 4, 196, 2515396, 2535525316
29 1 196 61 2 64, 900
30 1 6859 62 0 none
31 2 1, 225 63 4 1, 81, 961, 183250369
32 4 4, 32, 49, 7744 64 4 36, 64, 225, 512

ピライの予想

編集
数学の未解決問題
各正の整数が累乗数の差として現れる回数は高々有限回か?  

ピライの予想: Pillai's conjecture)は、累乗数(オンライン整数列大辞典の数列 A001597)の一般的な違いに関するものである。これは、スバッヤ・ピライ英語版が最初に提示した未解決問題であり、累乗数の列の差は無限大になる傾向があるという予想である。この予想は、各正の整数が累乗数の差として有限回しか現れないと言い換えられる。より一般に、1931年に、ピライは、固定された正の整数 A, B, C に対して、方程式   は有限の数の解 (x, y, m, n) しか持たないことを予想した。ただし、解は (mn) ≠ (2, 2) とする。ピライは、1未満の λ について、差  mn で均一になることを証明した[7]

この一般化された予想はABC予想から導かれると考えられている[7][8]

ポール・エルデシュは、いくつかの正の定数 c とすべての十分に大きな n に対して、累乗数の昇順列    を満たすと予想した[要出典]

外部リンク

編集
  • Ivars Peterson's MathTrek
  • Weisstein, Eric W. "Catalan's conjecture". mathworld.wolfram.com (英語).
  • On difference of perfect powers
  • Jeanine Daems: A Cyclotomic Proof of Catalan's Conjecture

参考文献

編集

脚注

編集
  1. ^ Mihăilescu(2004). これに先立ってBull. AMS誌の記事 Metsänkylä, Tauno (2003) でその概略が解説されている。
  2. ^ REFLECTION, BERNOULLI NUMBERS AND THE PROOF OF CATALAN'S CONJECTURE(英語)
  3. ^ Victor-Amédée Lebesgue (1850), “Sur l'impossibilité, en nombres entiers, de l'équation xm=y2+1”, Nouvelles annales de mathématiques, 1re série 9: 178–181 
  4. ^ Ribenboim, Paulo (1979), 13 Lectures on Fermat's Last Theorem, Springer-Verlag, p. 236, ISBN 0-387-90432-8, Zbl 0456.10006 
  5. ^ Bilu, Yuri (2004), “Catalan's conjecture”, Séminaire Bourbaki vol. 2003/04 Exposés 909-923, Astérisque, 294, pp. 1–26, http://www.numdam.org/book-part/SB_2002-2003__45__1_0/ 
  6. ^ Mihăilescu 2005
  7. ^ a b Narkiewicz, Wladyslaw (2011), Rational Number Theory in the 20th Century: From PNT to FLT, Springer Monographs in Mathematics, Springer-Verlag, pp. 253–254, ISBN 978-0-857-29531-6, https://archive.org/details/rationalnumberth00nark 
  8. ^ Schmidt, Wolfgang M. (1996), Diophantine approximations and Diophantine equations, Lecture Notes in Mathematics, 1467 (2nd ed.), Springer-Verlag, p. 207, ISBN 3-540-54058-X, Zbl 0754.11020 

関連項目

編集