エレットロニカ・ニュートン
エレットロニカ・ニュートン(英語: Elettronica Newton)は、イタリアのエレットロニカ・サンジョルジョ・エルサーグ(後にレオナルド S.p.Aが吸収合併)社が開発した艦載用の電子戦システム[1]。アメリカ合衆国のAN/SLQ-32と同様のモジュール化設計を採用しており、各サブシステムを適宜組み合わせることで、様々な大きさの艦艇に対応した様々なバージョンが存在する[2]。
サブシステム
編集- 電波探知装置
- ELT/123 - 初期のシステムの中核的なサブシステムとなったレーダー警報受信機(RWR)。インターフェースとしては小型のキーパッドが用いられており、専任のオペレータは不要である。単体ではファラッドと称されている[1]。
- ELT/261 - ELT-123を補完するIFM受信機および操作コンソール。コンソールは一人用の大画面型で、脅威情報の管理や情報ライブラリの参照が可能であり、また電波妨害装置の統制、艦の戦術情報処理装置との連接も担当した。空中線部は4つの無指向性アンテナから構成されていた。ELT/123と連動して、2-18ギガヘルツの帯域に対応可能とされていた[1]。
- ELT/211 - ELT/123とELT/261を統合したサブシステム。
- 電波妨害装置
バリエーション
編集- ニュートン・アルファ
- 100-500トン級の艇のためのシステム。ELT/211に加えて、ELT/318またはELT/521を搭載する[1]。
- ニュートン・ベータ
- 250-1,000トン級の艦のためのシステム。ELT/211に加えて、ELT/318(ELT/814アンテナ×2基)とELT/521(ELT/828アンテナ×2基)を搭載する[1]。
- ニュートン・ガンマ
- 1,000-3,000トン級の艦のためのシステム。ELT/211に加えて、ELT/318×1基とELT/521(ELT/828アンテナ×2-3基)×2基、ELT/814×2-3基を搭載する。2-18ギガヘルツを4つのバンドとしてカバーしており、これは、パルス波と連続波を識別して2基のCRTに表示される。また他の2基のCRTには信号の解析結果が表示され、5基目のCRTにはDバンドのデータが表示される。また電波妨害装置は、捜索中追尾レーダーに対するレーダ角度妨害にも対応している[1]。
- ニュートン・ラムダ(SLQ-D/SLR-4)
- ELT/211に加えて、ELT/318×1基とELT/521×3基、あるいはELT/318×2基とELT/521×2基を搭載する。空中線部としてはそれぞれELT/828×4基を搭載する[1]。
- ニュートン・イプシロン(SLQ-B,C/SLR-4)
- ヘリコプター巡洋艦「ヴィットリオ・ヴェネト」用のシステム。ELT/211, ELT/318×2基, ELT/521×3基から構成される[1]。
また、ニュートン・ラムダをもとに、ELT-211用に2つ目のコンソールを追加したネットゥーノ(Nettuno)、さらに空中線部に改正を加えたネットゥーネル(Nettunel)が派生した。なお本国のイタリア海軍においては、下記のような専用機が用いられているほか、オランダ海軍のSLQ-01も本機の派生型である。
- SLR-3 - 公式には、サブシステムごとにSPR-D, SLQ-B,Cと称されているが、これはそれぞれELT/814をもとに、高周波数または低周波数に対応した小改正型と考えられている。またフリゲートでは1機種で全帯域に対応したSLQ-Dが用いられる。
- SLR-4 - ELT/261の信号処理能力を増強したものと考えられている。
中華人民共和国においても、1985年に第723研究所(揚州船用電子儀器研究所)により、ニュートン・ベータをもとにした山寨版として981型(HZ-100、輸出名はNRJ5)が開発された。さらに発展型の984型や985型も開発されて、同国海軍の多くの艦に搭載されている[1][4]。
採用国と搭載艦
編集- イタリア海軍
- オランダ海軍
- ファン・スペイク級フリゲート - ニュートン・ガンマ
- コルテノール級フリゲート - ニュートン・ラムダ、オランダ海軍では後日ラムセス・システムと換装されて撤去
- スペイン海軍
- デスクビエルタ級コルベット - ニュートン・ベータ
- 中国人民解放軍海軍
- 053H2型フリゲート(江滬III型) - 981型
- 053H1G型フリゲート(江滬V型) -981型
- 052A型駆逐艦(旅滬型) - 984型
- 052B型駆逐艦(広州級) - 984型
- 054/054A型フリゲート(江凱型) - 985型
- タイ海軍
- ナレースワン級フリゲート - 981型ないしニュートン・ベータ
参考文献
編集- ^ a b c d e f g h i j k l m Norman Friedman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. pp. 498-500. ISBN 9781557502681
- ^ 野木恵一「イタリア製艦載兵器オンパレード」『世界の艦船』第365号、海人社、1986年6月、110-111頁。
- ^ a b Flightglobal (1989年10月21日). “Flight International” (PDF) (英語). 2014年5月6日閲覧。
- ^ 陸易「中国軍艦のコンバット・システム」『世界の艦船』第748号、海人社、2011年10月、94-97頁、NAID 40018965309。