エラスモサウルスElasmosaurus)は、最もよく知られている首長竜で、中生代白亜紀後期の北アメリカに生息していた。分類は爬虫綱 - 双弓亜綱 - 首長竜目 - プレシオサウルス亜目 - エラスモサウルス科。一般には「くびながりゅう」で通用しているが、正しい和名長頸竜(ちょうけいりゅう)。学名は「リボンのトカゲ」を意味する。

エラスモサウルス
生息年代: 中生代白亜紀後期, 83.5–70.5 Ma
[1]
エラスモサウルス
エラスモサウルスの骨格模型
エラスモサウルス
復元イラスト
地質時代
中生代白亜紀後期
(約8,350万 ~ 7,050万年前)
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
上目 : 鰭竜類 Sauropterygia
: 首長竜目 Plesiosauria
亜目 : プレシオサウルス亜目 Plesiosauroidea
: エラスモサウルス科 Elasmosauridae
: エラスモサウルス属 Elasmosaurus
学名
Elasmosaurus platyurus
Cope1868

形態

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人間との大きさ比較

首の長さは6.1-7.1メートル[2]と首長竜の中でも極めて長く、全長は10.3メートルに達する[3]。首は76個の頸椎からできていて、自分の身体の側面まで自在に動かすことができたといわれる[4]。ただしこうした動きは水の抵抗を高めるため、泳ぎながら首を曲げる動作はしなかったのではないかとされる[5]。ビア樽状の胴体は短く、腹肋を持っていたため[6]柔軟性に欠け、尾は短くは無い。そのため胴体をくねらす泳ぎ方は出来なかった。四肢は鰭脚になっており、前方の一対の方が長い[5]

生態

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エラスモサウルスの首の柔軟性[注釈 1]

エラスモサウルスの首は下方向に75–177度、上方向に87–155度, 横方向に94–176度動いたとされる。1869年にコープが推定したような、白鳥のように首を水面から出す姿勢を行うことは不可能であったとされた[7]。その長い首の役割は不明ではあるものの[8]、首を下向きに動かすことで、海底に近い場所に生息する獲物を捕食することが可能であったと推測されている[9]。3Dモデルを用いた推測では、長い首を持つ首長竜は短い首を持つものと比べて抗力は通常増加していないが、首を横に曲げた姿勢では増加することが分かった[10]。また、別の研究では、長い首は前方へ泳ぐ際の抵抗が増加するが、大きな胴体によって相殺されるとも推測されている[11]

コープによる原記載では、胃の内容物から魚の鱗が発見されたという内容が記されている[12]。エラスモサウルス類は漂泳区分帯における活発な捕食者であったとみられ[7]、近縁のスティクソサウルスの例ではエンコドゥスなどを捕食していたということがわかっている[13]。これに混じって時折胃石が発見されることがあるが、これには遠く離れた場所の石が混ざっていることもあり、遠洋まで遊泳する習性があったとされる[14]

繁殖形態は、上陸が困難であると推定されることから、おそらくは卵胎生であったのではないかとされる[15][注釈 2]

化石戦争

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1867年、北アメリカで発見された化石は古生物学エドワード・ドリンカー・コープの元に持ち込まれたが、この化石は脊柱肩帯腰帯の一部のみの不完全なものであった。これを復元する際、コープは仮想の頭骨を尾の先につけるというミスをしてしまい、そのまま論文で発表してしまった。

これが誤りであると指摘したのは、当時まだ交流があったオスニエル・チャールズ・マーシュであった。この際の遺恨が後に「Bone Wars」とよばれる化石発掘闘争へと発展した[16]

脚注

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注釈

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  1. ^ A - かつて示された白鳥のように首をもたげる姿勢
    B - 正面に首を伸ばした姿勢
    C - 底生の獲物を捕食するときの姿勢
    D - 水平方向に大きく首を曲げた姿勢
    E - 首を蛇行させた姿勢
  2. ^ 2011年、1987年に発掘された首長竜の一種であるポリコティルスの化石の体内に胎児の骨格が残っていることがアメリカの研究チームによって確認された。このことから、首長竜が胎生(卵胎生)であったことは間違いないと見られている。

出典

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  1. ^ Elasmosaurus PBDB
  2. ^ Taylor, Michael P.; Wedel, Mathew J. (2013-02-12). “Why sauropods had long necks; and why giraffes have short necks”. PeerJ 1: e36. doi:10.7717/peerj.36. ISSN 2167-8359. PMC 3628838. PMID 23638372. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3628838/. 
  3. ^ O'Gorman, José Patricio (2016-06-01). “A Small Body Sized Non-Aristonectine Elasmosaurid (Sauropterygia, Plesiosauria) from the Late Cretaceous of Patagonia with Comments on the Relationships of the Patagonian and Antarctic Elasmosaurids” (英語). Ameghiniana vol. 53, no. 3. doi:10.5710/amgh.29.11.2015.2928. ISSN 0002-7014. http://sedici.unlp.edu.ar/handle/10915/108247. 
  4. ^ 川崎悟司『絶滅したふしぎな巨大生物』PHP研究所、2011年6月10日、116-117頁。ISBN 978-4-569-79636-9 
  5. ^ a b リチャードソン 2005, p. 152.
  6. ^ 金子隆一 1995, p. 178.
  7. ^ a b Zammit, Maria; Daniels, Christopher B.; Kear, Benjamin P. (2008-06-01). “Elasmosaur (Reptilia: Sauropterygia) neck flexibility: Implications for feeding strategies”. Comparative Biochemistry and Physiology Part A: Molecular & Integrative Physiology 150 (2): 124–130. doi:10.1016/j.cbpa.2007.09.004. ISSN 1095-6433. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1095643307015838. 
  8. ^ Falkingham, Peter (2015年2月1日). “PALAEONTOLOGY online | Article: Fossil Focus > Fossil Focus: Elasmosaurs” (英語). PALAEONTOLOGY[online]. 2024年5月10日閲覧。
  9. ^ Noè, L. F.; Taylor, M. A.; Gómez-Pérez, M. (2017). “An integrated approach to understanding the role of the long neck in plesiosaurs”. Acta Palaeontologica Polonica 62 (1): 137–162. doi:10.4202/app.00334.2016. オリジナルのJuly 29, 2017時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170729190105/https://www.app.pan.pl/archive/published/app62/app003342016.pdf July 24, 2017閲覧。. 
  10. ^ Troelsen, Pernille V.; Wilkinson, David M.; Seddighi, Mehdi; Allanson, David R.; Falkingham, Peter L. (2019-03-04). “Functional morphology and hydrodynamics of plesiosaur necks: does size matter?” (英語). Journal of Vertebrate Paleontology 39 (2): e1594850. doi:10.1080/02724634.2019.1594850. ISSN 0272-4634. https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/02724634.2019.1594850. 
  11. ^ Gutarra, Susana; Stubbs, Thomas L.; Moon, Benjamin C.; Palmer, Colin; Benton, Michael J. (2022-04-28). “Large size in aquatic tetrapods compensates for high drag caused by extreme body proportions”. Communications Biology 5: 380. doi:10.1038/s42003-022-03322-y. ISSN 2399-3642. PMC 9051157. PMID 35484197. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9051157/. 
  12. ^ Cope, E. D. (1869). “Synopsis of the extinct Batrachia, Reptilia and Aves of North America, Part I”. Transactions of the American Philosophical Society 14: 44–55. doi:10.5962/bhl.title.60482. hdl:2027/nyp.33433090912423. オリジナルのNovember 8, 2017時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20171108153137/https://www.biodiversitylibrary.org/page/39852057#page/48/mode/1up November 8, 2017閲覧。. 
  13. ^ Everhart, M. (2001). “An elasmosaur with stomach contents and gastroliths from the Pierre Shale (Late Cretaceous) of Kansas”. Transactions of the Kansas Academy of Science 104 (3–4): 129–143. doi:10.1660/0022-8443(2001)104[0129:AEWSCA]2.0.CO;2. 
  14. ^ Noè, L. F.; Gómez–Pérez, M. (2007). “Postscript to Everhart, M.J. 2005. "Elasmosaurid remains from the Pierre Shale (Upper Cretaceous) of western Kansas. Possible missing elements of the type specimen of Elasmosaurus platyurus Cope 1868?" – PalArch's Journal of Vertebrate Palaeontology 4, 3: 19–32”. PalArch's Journal of Vertebrate Palaeontology 2 (1). オリジナルの2017-11-14時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20171114041109/http://www.palarch.nl/2007/04/noe-lf-m-gomez-perez-2007-postscript-to-everhart-mj-2005-%E2%80%9Celasmosaurid-remains-from-the-pierre-shale-upper-cretaceous-of-western-kansas-possible-missing-elements-of-the-type-spec/ 2017年11月13日閲覧。. 
  15. ^ ヘインズ & チェンバーズ 2006, p. 131.
  16. ^ 金子隆一 1995, pp. 151–154.

参考文献

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関連項目

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