インヴィンシブル級潜水艦
インヴィンシブル級潜水艦(インヴィンシブルきゅうせんすいかん、英語: Invincible-class submarine)は、シンガポール海軍の通常動力型潜水艦の艦級。218SG型と呼称され、ドイツの214型潜水艦に212A型潜水艦の技術を取り入れた改設計型となっている[5]。
インヴィンシブル級潜水艦 | |
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インヴィンシブル級潜水艦計画図 | |
基本情報 | |
種別 | 通常動力攻撃型潜水艦 |
建造所 | ティッセンクルップ・マリン・システムズ |
運用者 | シンガポール海軍 |
建造期間 | 2014年 - 建造中[1] |
同型艦 | 214型潜水艦(準同型艦) |
計画数 | 4隻 |
建造数 | 3隻 |
前級 | アーチャー級 |
次級 | 最新 |
要目 | |
基準排水量 | 2,000 t |
水中排水量 | 2,200 t |
全長 | 70 m |
最大幅 | 6.3 m |
機関方式 | ディーゼル・エレクトリック方式 |
最大速力 |
水上:10ノット (19 km/h) 水中:15ノット (28 km/h) |
航海日数 | 28 - 42日(シュノーケルなしの水中航行時)[2] |
乗員 | 28名[3] |
兵装 |
来歴
編集2013年11月、シンガポール国防省はチャレンジャー級潜水艦およびアーチャー級潜水艦の後継として、ドイツのティッセンクルップ・マリン・システムズが提案した218SG型潜水艦の採用を決定し[6]、11月29日にティッセンクルップ・マリン・システムズと潜水艦2隻および訓練パッケージ等を総額13億6,000万米ドルで発注した[7]。潜水艦2隻は2020年から2021年にかけて納入予定とされた[8]。
2017年5月16日にング・エン・ヘン国防大臣は2隻の追加発注を発表し[9]、追加発注分は2024年から2025年にかけて納入予定とされた[10]。
1番艦は2014年からドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州キールにあるティッセンクルップ・マリン・システムズ造船所で建造を開始し[11]、2019年2月18日に進水式が行われた[12]。1番艦は2020年9月に海上公試、2020年中に引き渡される予定だったが[13]、新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって2022年へ引き渡し延期になると2020年6月に発表されたほか[14]、2021年4月には海上公試中に艦内で火災が発生した[15]。
2番艦は2018年1月、キールのティッセンクルップ・マリン・システムズ造船所で鋼材切断式が行われた[16][17]。2022年12月20日、2番艦「インペッカブル」と3番「イラストリアス」がTKMSにて進水した。2023年にシンガポール海軍へ引き渡される予定となる[18][19]。
2023年1月、シンガポール国防省はインヴィンシブル級潜水艦4隻の取得費用が約18億ドル(24億シンガポールドル) であることを発表した[20]。
2024年9月24日、1番艦「インヴィンシブル」と2番艦「インペッカブル」が就役した[21]。
設計
編集本級は、シンガポール防衛科学技術庁、シンガポール海軍、ティッセンクルップ・マリン・システムズが共同設計を行い、ドイツの輸出向け潜水艦である214型潜水艦をベースにシンガポール海軍が要求した沿海域戦闘能力、シーレーン防衛、情報・監視・目標捕捉および偵察能力(ISTAR:Intelligence, surveillance, target acquisition, and reconnaissance)、特殊作戦運用能力などが盛り込まれた[22]。
本級には、非大気依存推進(AIP:Air-Independent Propulsion)が搭載され、シュノーケル航走なしで約4から6週間の潜行が可能であるほか[23]、後舵装置(X舵)を採用したことにより、浅瀬の多いシンガポール海峡や南シナ海でも高い水中機動性を発揮することができる[24]。また、艦内は居住区画が214型潜水艦より拡大して人間工学に基づいた配置がなされ、シャワー増設、独立式二段ベッドの設置、収納スペースの追加などが行われている[25]。
装備
編集STエンジニアリングとドイツのアトラス・エレクトロニークが共同開発した戦闘管制システムおよびシンガポール防衛科学技術庁が開発したデータ分析・意思決定支援エンジンの搭載によって広範な自動化が可能となり、乗員は8時間の3交代制で運用でき[26]、乗員数も28名と少人数での運用が可能となっている[27]。
兵装としては艦首に533mm魚雷発射管8門を備え、魚雷、艦対艦ミサイル、機雷の装備が可能である[28]。また、水平多目的エアロック(HMPL:Horizontal Multi-Purpose Airlock)を備え、魚雷、潜水艦発射巡航ミサイル、特殊部隊員の発射などに使用できる。なお、垂直多目的エアロック(VMPL:Vertical Multi-Purpose Airlock)がオプションで装備可能となっている[29]。
同型艦
編集艦名 | 建造 | 起工 | 進水 | 就役 |
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インヴィンシブル Invincible |
ティッセンクルップ・ マリン・システムズ |
2019年 2月18日 |
2024年 9月24日[21] | |
インペッカブル Impeccable |
2022年 12月13日 |
2024年 9月24日[21] | ||
イラストリアス Illustrious |
||||
イニミタブル Inimitable |
2024年 4月22日 |
脚注
編集出典
編集- ^ “IMDEX Asia 2017: Singapore Navy Procuring 2 more Type 218SG submarines from TKMS”. navyrecognition.com (2017年5月16日). 2020年2月27日閲覧。
- ^ “Why Russia Is Completely Ignoring This New German-Made Submarine”. nationalinterest.org (2020年2月27日). 2020年2月27日閲覧。
- ^ “Key TKMS Type 218SG details revealed after partial unveiling”. gentleseas.blogspot.com (2015年9月3日). 2020年2月27日閲覧。
- ^ “Invincible-class Submarine - See far, act fast”. mindef.gov.sg (2019年2月18日). 2020年2月27日閲覧。
- ^ “Singapore Navy's First Type 218SG Invincible-Class Submarine Started Sea Trials”. navalnews.com (2020年9月2日). 2020年9月2日閲覧。
- ^ “TKMS beats rival DCNS in Singapore”. intelligenceonline.com (2013年12月4日). 2022年11月13日閲覧。
- ^ “Singapore Buys New Class of German Attack Submarines”. news.usni.org (2013年12月4日). 2022年11月13日閲覧。
- ^ “Singapour acquiert deux sous-marins ThyssenKrupp”. ouest-france.fr (2013年12月2日). 2022年11月13日閲覧。
- ^ “Singapore Navy orders two more Type 218SG submarines”. navaltoday.com (2017年5月16日). 2022年11月13日閲覧。
- ^ “Singapore doubles submarine order”. mags.shephardmedia.com (17 May 2017-05-17). 2022年11月13日閲覧。
- ^ “Singapore MINDEF to buy two additional Type 218SG submarines from German TKMS”. naval-technology.com (2017年5月16日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “Invincible, first of Singapore's biggest and most advanced submarines, launches in Germany”. straitstimes.com (2019年2月18日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “New Type 218SG submarine "Invincible" built for Singapore Navy starts factory sea trials”. navyrecognition.com (2020年9月2日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “COVID-19 delays new submarines, but delivery of F-35 fighter jets on track: Ng Eng Hen”. channelnewsasia.com (2020年6月29日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “Bei Probefahrt: Feuer an Bord von U-Boot in Kiel”. Lübecker Nachrichten. 2022年11月23日閲覧。
- ^ “TKMS Started Construction of 2nd Batch Type 218SG Submarines for Singapore”. navyrecognition.com (2018年1月17日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “Singapore starts construction of second batch of Type 218SG submarines”. navaltoday.com (2018年1月16日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ TKMS Launches Two Type 218SG Submarines For Singapore
- ^ TKMS Launches New Type 218SG Submarines Named ‘Impeccable’ and ‘Illustrious’ For Singapore
- ^ Singapore MINDEF reveals Type 218SG submarines cost $1.8bn
- ^ a b c “Singapore commissions first two Invincible-class submarines”. janes.com (2024年9月24日). 2024年9月24日閲覧。
- ^ “Singapore's Submarine Invincible Launched”. maritime-executive.com (2019年2月18日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “Singapore discloses further details of Invincible-class submarines”. janes.com (2019年2月19日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “Singapore launches next-gen submarine in Germany”. asiatimes.com (2019年2月21日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “S'pore buys 4 new submarines, the first is ready for use”. mothership.sg (2019年2月19日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “IMDEX 19: Singapore’s new generation sub-surface fleet”. edrmagazine.eu (2019年5月21日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “First Custom-Built Submarine for the Navy”. dsta.gov.in (2019年11月8日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “This is Why Russia Could Care Less About Germany's Newest Submarine”. nationalinterest.org (2019年12月30日). 2022年11月23日閲覧。
- ^ “Republic of Singapore Navy RSS Invincible Type 218SG Submarine Started Sea Trials”. militaryleak.com (2020年9月5日). 2022年11月23日閲覧。