イチイ科学名:Taxaceae)は、裸子植物

イチイ科
分類
: 植物界 Plantae
: 球果植物門 Pinophyta
: マツ綱 Pinopsida
: マツ目 Pinales
: イチイ科 Taxaceae
学名
Taxaceae S.F.Gray
和名
イチイ科

形態

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常緑針葉樹で、ほとんどが雌雄異株。葉は枝にらせん状に配列するが、ねじれて左右2列に向くものが多い。雄花序は長さ2–5mmで晩春に花粉を出す。雌花序は退化し、種子鱗片と胚珠各1個のみからなる。種子が成熟すると鱗片は肉質の仮種皮になり種子の全部または一部を包む。種子は翼を持たない。

生態

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マツ科ヒノキ科といった北半球の代表的な針葉樹が種子を風で飛ばすのに対し、イチイ科は動物による種子の散布に期待して進化したグループといわれる。

人間との関わり

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木材

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イチイ属の木材は辺材と心材が明確に分かれ、緻密な年輪を持ち(つまり肥大成長は遅いということである)、光沢を持つ。産出量が少ないこともあって日本では高級な木材の一つに入る。建材としてもつかわれるが、大木が手に入りにくいことや加工しやすいこともあり、彫り物の原料として使われることが多い。岐阜県の高山地方には一位一刀彫という彫り物がある。また、北海道先住民のアイヌは弓に用いたという。ヨーロッパにおいても古くから木材として利用されており、イタリアの氷河で1991年に見つかった3000年前のミイラ化した遺体アイスマン(英:Ötzi the Iceman)ではイチイ属を柄に使った斧を持っていた。

食用

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カヤ属(Torreya)の種子は油を搾る原料になる。イチイ属では種子を包み込む赤い部分(仮種皮)は食用になるが、種子自体や枝葉は有毒である。アガサ・クリスティの推理小説ポケットにライ麦を(原題:A pocket full of rye)ではイチイの毒を使った殺人事件が描かれている。イチイの毒はイチイ属の属名タクサス(Taxus)からタキシンと呼ばれており、心臓に作用するという。

薬用

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分類

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系統

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形態的な特徴から新エングラー体系などでは独立のイチイ綱イチイ目とされていたが、現在では分子系統解析 (Chase et al., 1993; Price, 2003) および微細形態 (Anderson & Owens, 2003) に基づき、マツ綱マツ目(すべての針葉樹を含む)にまとめられる。イチイ科には6属が現生し、その系統関係は次のとおり[2]。一部(具体的には諸説あった)をイヌガヤ科 (学名:Cephalotaxaceae )とする説があったが、系統的には否定されており[2]、現在はイチイ科に含めるのが一般的である。

イチイ科

Austrotaxus

Taxus イチイ属

Pseudotaxus

Cephalotaxus イヌガヤ属

Torreya カヤ属

Amentotaxus

伝統的には、★すなわちイヌガヤ属は、単型イヌガヤ科 Cephalotaxaceae に属していた。また、Cheng et al. (2000) などは、☆以下の3属をイヌガヤ科とした。Hao et al. (2008) などは、さらに新科 Amentotaxaceae を分離した[2]。しかし図のように、いずれのイヌガヤ科もイチイ科に系統的に内包され、科の地位は支持されない。

一方、Price (2003) などはこの6属全体をイチイ科とした。比較して論じる場合は、これを広義のイチイ科、イヌガヤ科(等)を分離する場合の残りを狭義のイチイ科と呼ぶ。

下位分類

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  • Amentotaxus
和名未定の属。アジアに分布する5種が含まれる
  • Austrotaxus
和名未定の属。ニューカレドニアに分布するAustrotaxus spicata(和名未定)だけからなる単型。
  • イヌガヤ属 (学名:Cephalotaxus
10種ほどが含まれる。日本にはイヌガヤC. harringtonia)が分布する。仮種皮は種子を完全に包み込む。発芽は地上生(英:epigeal)
  • Pseudotaxus
和名未定の属。中国に分布するPseudotaxus chienii(和名未定)だけからなる単型。P. chienji(中国名:白豆杉)は最大5m程度にしかならない低木であるという
  • イチイ属(学名:Taxus
30種ほどが含まれる。日本にはイチイT. cuspidata)が分布する
  • カヤ属(学名; Torreya
6種程度が含まれ、日本にはカヤT. nucifera)が分布する。分布の中心はアジアであるが、2種だけアメリカ大陸にも分布する。仮種皮は種子を完全に包み込む。属名はアメリカ人植物学者ジョン・トーリー(John Torrey)に因む。発芽は地下性(英:hypogeal)

参考文献

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  • Anderson, E. & Owens, J. N. (2003). Analysing the reproductive biology of Taxus: should it be included in Coniferales? Acta Hort. 615: 233-234.)
  • Chase, M. W. et al. (1993). Phylogenetics of seed plants, an analysis of nucleotide sequences from the plastid gene rbcL. Ann. Missouri Bot. Gard. 80: 528-580.
  • Price, R. A. (2003). Generic and familial relationships of the Taxaceae from rbcL and matK sequence comparisons. Acta Hort. 615: 235-237.

脚注

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  1. ^ a b c Pires, Etiene F.; Guerra-Sommer, Margot (2004), “Sommerxylon spiralosus from Upper Triassic in southernmost Paraná Basin (Brazil): a new taxon with taxacean affinity”, Anais da Academia Brasileira de Ciências 76 (3): 595-609 
  2. ^ a b c Ghimire, Balkrishna; Heo, Kweon (2014), Cladistic analysis of Taxaceae s.l., Plant Systematics and Evolution 300 (2): 217-223. doi:10.1007/s00606-013-0874-y

外部リンク

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