イソ吉草酸血症
イソ吉草酸血症(いそきっそうさんけつしょう、Isovaleric acidemia、Isovaleric aciduria、Isovaleric acid CoA dehydrogenase deficiency)は分岐鎖アミノ酸であるロイシンの代謝異常を原因とする、珍しい常染色体劣性先天性代謝異常症であり、古典的な有機酸血症である[1][2][3]。また、指定難病に指定されている[4]。
イソ吉草酸血症 | |
---|---|
イソ吉草酸 | |
概要 | |
診療科 | 内分泌学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | E71.1 |
ICD-9-CM | 270.3 |
OMIM | 243500 |
DiseasesDB | 29840 |
症状
編集汗をかいた足の裏のような独特の尿臭が特徴である。[5]この臭いはイソ吉草酸の蓄積によって引き起こされる。
半数の症例で、生後数日以内に哺乳不良・嘔吐・痙攣・昏睡をもたらす疲労などが見られる。これらは通常生命に関わるほど深刻である。他の症例では、小児期にゆっくりと症状が現れる。感染症、高タンパク食品を引き金に発症することもある。
診断
編集質量分析法による尿のスクリーニングにより早期診断が可能。[3]尿中のイソバレリルグリシン、血漿中のイソバレリルカルニチンの濃度上昇が見られる。
遺伝学
編集この疾患は常染色体劣性遺伝する。つまり、父母双方から異常な遺伝子を受け継いだ場合に発症する。片方の親からのみ受け継いだ場合、子供はキャリアとなるが、たいてい発症はしない。
病態生理
編集IVD遺伝子にコードされるイソバレリルCoAデヒドロゲナーゼ(EC 1.3.99.10)は、タンパク質中の必須アミノ酸、ロイシンの代謝分解に関わる。IVD遺伝子の変異はこの酵素の活性を落とし、ロイシンの分解能力を低下させる。これによってイソ吉草酸が蓄積し、脳神経障害が起こる。
治療
編集タンパク質、特にロイシンの制限が行われる。急性の増悪には、イソ吉草酸と結合するグリシンやカルニチンが投与される。
また、ビオチンが投与されることもある。ビオチンはロイシン・イソロイシンの代謝に不可欠で、多くの有機酸血症患者がビオチンの恩恵を受けることができる。[6]また、他の原因でビオチンが欠乏しても、血中の有機酸濃度が上昇し、有機酸血症に似た深刻な症状が現れる。[7]ビオチン欠乏は血中の3-ヒドロキシイソ吉草酸濃度上昇によって検出できる。
疫学
編集参照
編集出典
編集- ^ Online 'Mendelian Inheritance in Man' (OMIM) 243500
- ^ Lee, Yw; Lee, Dh; Vockley, J; Kim, Nd; Lee, Yk; Ki, Cs (September 2007). “Different spectrum of mutations of isovaleryl-CoA dehydrogenase (IVD) gene in Korean patients with isovaleric acidemia”. Molecular genetics and metabolism 92 (1–2): 71–7. doi:10.1016/j.ymgme.2007.05.003. PMID 17576084.
- ^ a b Dionisi-Vici C, Deodato F, Raschinger W, Rhead W, Wilcken B (2006). “Classical organic acidurias, propionic aciduria, methylmalonic aciduria, and isovaleric aciduria: long-term outcome and effects of expanded newborn screening using tandem mass spectrometry”. J Inherit Metab Dis. 29 (2–3): 383–389. doi:10.1007/s10545-006-0278-z. PMID 16763906.
- ^ “難病と診断された皆さまへ”. 厚生労働省. 2021年3月30日閲覧。
- ^ Tokatli A, Oskun T, Ozalp I (1998). “Isovaleric acidemia. Clinical presentation of 6 cases”. Turk J Pediatr. 40 (1): 111–119. PMID 9673537.
- ^ http://www.ommbid.com/OMMBID/the_online_metabolic_and_molecular_bases_of_inherited_disease/b/abstract/part9/ch93
- ^ http://www.metametrix.com/learning-center/case-studies/2004/biotin-detoxification-needs-in-cognitively-delayed-adult