イソシアン酸メチル(イソシアンさんメチル、methyl isocyanate)は化学式 C2H3NO で表される、最も構造が単純なイソシアネートであり、各原子は H3C−N=C=O のようにつながっている。イソシアナトメタン、メチルカルビルアミン、 MIC とも呼ばれる。イソシアン酸のメチルエステルとして1888年に発見された。

イソシアン酸メチル
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識別情報
CAS登録番号 624-83-9 チェック
PubChem 12228
ChemSpider 11727 チェック
UNII C588JJ4BV9 チェック
ChEBI
6290
特性
化学式 C2H3NO
モル質量 57.051 g/mol
外観 無色の液体
匂い 刺激臭[1]
密度 0.9230 g/cm3 at 27 °C
融点

−45 °C [2]

沸点

38.3 ~ 41 °C [2]

への溶解度 10% (15°C)[1]
蒸気圧 57.7 kPa
構造
双極子モーメント 2.8 D
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −92.0 kJ·mol−1[2]
標準燃焼熱 ΔcHo -1.1275E+06 J/mol[3]
危険性
GHSピクトグラム 急性毒性(高毒性) 経口・吸飲による有害性 可燃性 腐食性物質 急性毒性(低毒性)
Hフレーズ H225, H300, H311, H315, H317, H318, H330, H334, H335, H361d
Pフレーズ P201, P202, P210, P233, P240, P241, P242, P243, P260, P261, P264, P270, P271, P272
NFPA 704
3
4
3
引火点 −7 °C (19 °F; 266 K)
発火点 534 °C (993 °F; 807 K)
爆発限界 5.3–26%[2]
許容曝露限界 TWA 0.02 ppm (0.05 mg/m3) [皮膚][1]
半数致死量 LD50 120 mg/kg (経口, マウス)
51.5 mg/kg (傾向, ラット)[4]
半数致死濃度 LC50 6.1 ppm (ラット, 6時間)
12.2 ppm (マウス, 6時間)
5.4 ppm (モルモット, 6時間)
21 ppm (ラット, 2時間)[4]
関連する物質
関連物質 イソチオシアン酸メチル
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

用途

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カルバリルカルボフランメソミルアルジカルブといったカルバメート農薬の合成中間体である。ゴム接着剤の生産にも使われる。

危険性

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非常に毒性が高く、0.4 ppm 程度を吸引、経口摂取、または接触した場合、咳、胸部疾患、呼吸困難喘息などの症状があらわれ、あるいは眼・鼻・喉・皮膚に損傷を受ける。21 ppm 以上の高濃度にさらされた場合、数時間後に肺水腫肺気腫、肺出血、気管支炎などが起こる可能性があり、死に至る場合もある。イソシアン酸メチルのにおいが感じられるのは許容濃度の3倍以上からである。

1984年12月にインドで発生したボパール化学工場事故では、約4万キログラム (kg, 40トン (t))のイソシアン酸メチルが住宅街に流出し、15,000人以上が死亡した。ソニーエナジー・デバイスの当時の社名「ソニーエバレディ」変更の契機ともなった。

出典

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  1. ^ a b c NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0423
  2. ^ a b c d Lide, David R., ed (2006). CRC Handbook of Chemistry and Physics (87th ed.). Boca Raton, FL: CRC Press. ISBN 0-8493-0487-3 
  3. ^ Lemoult (1898). Comptes Rendus Hebdomadaires des Séances de l'Académie des Sciences 126: 43. 
  4. ^ a b Methyl isocyanate”. 生活や健康に直接的な危険性がある. アメリカ国立労働安全衛生研究所英語版(NIOSH). 2024年11月15日閲覧。
  5. ^ NFPA Hazard Rating Information for Common Chemicals”. nmsu.edu. 2015年2月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年6月10日閲覧。

関連項目

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外部リンク

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