アルソフォカスの書
『アルソフォカスの書』(アルソフォカスのしょ、原題:英: The Black Tome of Alsopho-cus)は、イギリスのホラー小説家マーチン・S・ハーネスが1980年に発表した短編小説。クトゥルフ神話の一つ。
『New Tales of the Cthulhu Mythos』のために書き下ろされた[1]。ハワード・フィリップス・ラヴクラフトの断章『いにしえの書』[2]を補作したものであり、ダーレス神話の要素が入っている。新ク解説にて、那智史郎は、異色揃いの『New Tales of the Cthulhu Mythos』の中では違和感を覚えさせる正調神話作品と解説している[1]。
あらすじ
編集朽ちかけた古書店で「わたし」が手に取った古書には、禍々しい術式が記されていた。わたしが代金を支払おうとしても、老主人は受け取ろうとはしない。帰り道、わたしは何者かに後をつけられているような恐怖感に襲われる。帰宅して屋根裏部屋に鍵をかけ、書を読み上げる。
当時、わたしには家族がおり、召使も大勢いたはずだが、それがいつであったのか、どうなってしまったのか、今ではもう思い出すことができない。本を読んで以来、数知れぬ年月と次元を巡り、わたしの時間の観念は変わってしまい、もはや一分と一世紀の区別もつけられない。
わたしは高まった超能力を駆使して、惑星シャールノスへと飛ぶ。何事もなく戻って来れると慢心していたが、恐怖王ナイアルラトホテップを目の前にしてなす術はなく、屈服する。続いてシャールノスから発した怪光が、地球へと射し込む。わたしの魔力を利用して旧神の封印を突破したナイアルラトホテップが、地球へと帰還したのである。わたしの肉体は、ナイアルラトホテップの霊を宿して、地球上を歩み、人類に苦難をもたらす。取り残されたわたしの精神は空虚化し、やがて思考も途絶える。