アライアンスTW
アライアンスTW(Aliance TW Team)は、チェコに本社を置く企業3社によって構成される企業グループ。チェコやスロバキアを中心に、路面電車車両の新造や旧型車両の近代化を行っている[1][2][3][4][5]。
概要
編集チェコスロバキアが社会主義国家であった時代、同国の路面電車車両はプラハに工場を有したČKDタトラが生産を行っていた。だが、チェコスロバキアを含む東側諸国の民主化やビロード離婚に伴うチェコ・スロバキアの分離などの社会情勢の変化によりČKDタトラの需要は大幅に減少し、2000年に倒産した。その一方、分離後のチェコでは同社が製造した路面電車車両・タトラカーの近代化を目的に路面電車事業に参入する事業者が現れており、その1つが以下の3社によって2001年に設立された企業グループのアライアンスTWである[1][2][3][4][5]。
- プラゴイメックス(Pragoimex s.v.) - 1991年に設立された株式会社。アライアンスTWの中心企業で、路面電車車両の製造・近代化改造に加え、鉄道車両やトロリーバスの部品や主電動機の製造、交通工学に基づいた設計作業を実施する[6][4]。
- クルノフ修理機械工場(Krnovské opravny a strojírny s.r.o.、KOS) - 元は1872年のオロモウツ - オパヴァ線開通に併せてクルノフで操業を開始した、鉄道車両の修繕や部品製造を担当する工場で、1992年に鉄道車両の修理工場・機械工場の民営化が決定した事に伴い有限会社として再出発を遂げた。客車や貨車の製造や改造、鉄道車両の部品製造、歴史的車両の修繕も行っており、チェコやスロバキアのみならずポーランド、ロシア、フランス、イギリスなどヨーロッパ各国に実績を残している[2]。
- VKVプラハ(VKV Praha s.r.o.) - 1996年に設立された有限会社。アライアンスTWの一員として路面電車車両の設計等に携わる一方、2003年以降鉄道車両用の真空トイレシステムの製造も行っており、チェコにおいて最大のシェアを獲得している[7][8]。
設立当初はチェコやスロバキアの各都市に導入されていたタトラT3の近代化工事が主体であったが、2004年から展開が始まったヴァリオLF(VarioLF)を皮切りに超低床電車(部分超低床電車)市場に参入し、T3の台車や機器を流用した車両に加えてアライアンスTWの独自車両の生産も始まった。2015年には車内全体の床面高さを350 mmに統一した100%超低床電車であるEVOが発表されている。これらの車両開発はプラゴイメックスが中心となって行われ、設計や試験はVKVプラハが担当し、製造にはクルノフ修理機械工場の施設が用いられる。2020年現在、チェコやスロバキア各都市の路面電車に加えてロシア連邦やウズベキスタンでも納入実績を残している[1][2][3][4][5]。
主要製品
編集アライアンスTW 主要製品 | |||||
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形式 | 車種 | 運転台 | 編成 | 低床率 | 備考 |
T3R.EV | 機器流用車 (タトラT3) |
片運転台 | 単車(ボギー車) | 0% | [9] |
T3R.PV | 機器流用車 (タトラT3) |
片運転台 | 単車(ボギー車) | 0% | [10] |
ヴァリオLF | 新造車 | 片運転台 | 単車(ボギー車) | 36% | [11][12] |
ヴァリオLFR.E | 機器流用車 (タトラT3) |
片運転台 | 単車(ボギー車) | 36% | [5] |
ヴァリオLFR.R | 機器流用車 (タトラT3) |
片運転台 | 単車(ボギー車) | 36% | [5] |
T3R.PLF | 機器流用車 (タトラT3) |
片運転台 | 単車(ボギー車) | 36% | [11][13] |
T3R.SLF | 機器流用車 (タトラT3) |
片運転台 | 単車(ボギー車) | 36% | [11][13][14] |
ヴァリオLF プラス | 新造車 | 片運転台 | 単車(ボギー車) | 36% | ヴァリオLFから高床部分の床面高さを下げた形式[15] |
ヴァリオLF プラス/o | 新造車 | 片運転台 | 単車(ボギー車) | 36% | オロモウツ市電向け車両 乗降扉は両側面に存在[16][17] |
ヴァリオLF2.E | 新造車 | 片運転台 | 2車体連接車 | 43% | [11][12] |
ヴァリオLF2R.E | 機器流用車 (タトラK2) |
片運転台 | 2車体連接車 | 43% | [11] |
ヴァリオLF2R.S | 機器流用車 (タトラK2) |
片運転台 | 2車体連接車 | 43% | [11] |
ヴァリオLF2/2 IN | 新造車 | 両運転台 | 2車体連接車 | 43% | [16] |
ヴァリオLF2 プラス | 新造車 | 片運転台 | 2車体連接車 | 43% | ヴァリオLF2から高床部分の床面高さを下げた形式[15] |
ヴァリオLF3 | 新造車 | 片運転台 | 3車体連接車 | 50% | [11][18][12][19] |
ヴァリオLF3/2 | 新造車 | 両運転台 | 3車体連接車 | 50% | [11][18][20] |
ヴァリオLF3 プラス | 新造車 | 片運転台 | 3車体連接車 | 50% | 計画のみ[21] |
ヴァリオLF4 | 新造車 | 片運転台 | 4車体連接車 | 61% | 計画のみ[12] |
ヴァリオLF4 プラス | 新造車 | 片運転台 | 4車体連接車 | 61% | 計画のみ[21] |
VV60LF | 新造車 | なし(付随車) | 単車(ボギー車) | 60% | 乗降扉は右側面に設置[22][23] |
EVO1 | 新造車 | 片運転台 | 単車(ボギー車) | 100% | [3][24] |
EVO1/o | 新造車 | 片運転台 | 単車(ボギー車) | 100% | オロモウツ市電向け車両 乗降扉は両側面に存在[25] |
EVO2 | 新造車 | 片運転台 | 2車体連接車 | 100% | [26] |
ギャラリー
編集関連項目
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c 「チームで地位の強化を図るチェコのトラムメーカー」『海外鉄道技術情報 (World Railway Technology)』第10巻第1号、鉄道総合技術研究所、2019年1月、8頁、2020年1月12日閲覧。
- ^ a b c d “Company Profile” (英語). Krnovské opravny a strojírny. 2020年1月12日閲覧。
- ^ a b c d “Barrier-free Tramcar EVO1” (英語). Pragoimex. 2020年1月12日閲覧。
- ^ a b c d e 宇都宮浄人 2019, p. 107.
- ^ a b c d e 宇都宮浄人 2019, p. 108.
- ^ “Pragoimex” (英語). 2020年1月12日閲覧。
- ^ “Production” (英語). VKVPraha s.r.o.. 2020年1月12日閲覧。
- ^ “VKV Praha s.r.o.” (英語). InnoTrans Virtual Market Place. 2020年1月12日閲覧。
- ^ Libor Hinčica (2019年7月11日). “Jedinou českou tramvaj T3R.EV s designem „Pelikán“ čeká přestavba” (チェコ語). Československý Dopravák. 2020年1月12日閲覧。
- ^ “tramwaje - T3R.PV” (チェコ語). Opravna tramvají. 2020年1月12日閲覧。
- ^ a b c d e f g h “Tram Vario” (英語). Krnovské opravny a strojírny. 2020年1月12日閲覧。
- ^ a b c d “VarioLF2”. Aliance TW. 2020年1月24日閲覧。
- ^ a b “tramwaje - T3R.PLF” (チェコ語). Opravna tramvají. 2020年1月12日閲覧。
- ^ Libor Hinčica (2018年5月23日). “DALŠÍ NÍZKOPODLAŽNÍ TRAMVAJE T3 PRO LIBEREC” (チェコ語). Československý Dopravák. 2020年1月12日閲覧。
- ^ a b “Tram Vario Plus” (チェコ語). Krnovské opravny a strojírny. 2020年1月12日閲覧。
- ^ a b “VarioLF2/2IN” (英語). Pragoimex. 2020年1月12日閲覧。
- ^ 宇都宮浄人 2019, p. 111-113.
- ^ a b “Tramvaj VarioLF3, VarioLF3/2” (チェコ語). Pragoimex. 2020年1月12日閲覧。
- ^ “Vario LF3” (チェコ語). Dopravní podnik Ostrava. 2020年1月12日閲覧。
- ^ “Vario LF3/2” (チェコ語). Dopravní podnik Ostrava. 2020年1月12日閲覧。
- ^ a b “VarioLF2plus”. Aliance TW. 2020年1月24日閲覧。
- ^ “TRAMTRAILER VV60LF” (チェコ語). Krnovské opravny a strojírny. 2020年1月12日閲覧。
- ^ “Vlečný vůz VV60LF” (チェコ語). Dopravní podnik Ostrava. 2020年1月12日閲覧。
- ^ “EVO Project” (チェコ語). Krnovské opravny a strojírny. 2020年1月12日閲覧。
- ^ Libor Hinčica (2018年9月14日). “Do Olomouce dorazila první tramvaj EVO1” (チェコ語). Československý Dopravák. 2020年1月12日閲覧。
- ^ “Barrier-free Tramcar EVO2” (英語). Pragoimex. 2020年1月12日閲覧。
- ^ “Uralvagonzavod Ready to Upgrade Czech Cars in the Tram Fleet of Russia”. Rostec (2017年11月23日). 2020年5月31日閲覧。
- ^ “BUDOU SE TRAMVAJE VARIOLF VYRÁBĚT V RUSKU?”. Československý Dopravák (2016年5月17日). 2020年5月31日閲覧。
- ^ “ГКП «Днепропетровский электротранспорт»” (ロシア語). Татра-Юг (2015年8月19日). 2020年1月12日閲覧。
参考資料
編集- 宇都宮浄人「海外のLRT事情・LRTをめざすチェコ ~路面電車製造の老舗の現状」『路面電車EX vol.13』、イカロス出版、2019年6月20日、107-113頁、ISBN 9784802206778。
外部リンク
編集- プラゴイメックスの公式ページ”. 2021年1月25日閲覧。 “
- クルノフ修理機械工場の公式ページ”. 2021年1月25日閲覧。 “
- VKVプラハの公式ページ”. 2021年1月25日閲覧。 “