アサリ属
アサリ属(アサリぞく、浅蜊属、Ruditapes)は、 マルスダレガイ科、アサリ亜科 Tapetinaeに属する二枚貝の分類群である。
アサリ属 | |||||||||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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外観
編集貝殻はやや前後に長く、殻頂は前方に寄り前後非対称的で、殻の表面に細くて弱い成長脈が刻まれ放射肋と交わり光沢が無い貝をRuditapesと呼ばれることが多い。靭帯は後方に外在、蝶番の主歯は、左右にほぼ3個ずつ認めら交互に咬み合わされる。套湾入は丸みがあり、深くはない。閉殻筋は2個で、強い足を持ち足糸は出さない[2]。水管は比較的太く、吸入管と排出管が先端近くまで融合している場合と(アサリ)、根もと近くから分かれる種がある(ヒメアサリ[3]、ヨーロッパアサリ[4])。本属の殻外面の模様や内面の色は変化に富む。 主に熱帯域に生息するリュウキュウアサリ属Tapesは、殻表に円肋が刻まれるが、放射肋は刻まれず、殻内面はほぼ白色で光沢があることで本属と区別される[2][5]。オキアサリやコタマガイは分子系統的にはアサリと近縁であるが[6][7]、貝殻の形が前後対称的であることからGomphina属や、Macridiscus属に分類されてきた。コタマガイの水管は細くて根元から分かれる[2]。
和名 | アサリ | ヒメアサリ | ヨーロッパアサリ | コタマガイ |
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学名 | R. philippinarum | R. variegatus | R. decussatus | M. melanaegis |
水管 | 先端で分かれる | 基部近くで二つに分かれる | 根元から二叉に分かれる | 細くて二叉に分かれる |
成長輪脈 | 強い | 弱い | 弱い | 弱い |
殻の形 | 楕円形的 | やや細い楕円形 | やや鋭角的 | 前後対称的 |
小月面 | 暗色で明瞭 | 狭く不明瞭 | 同色で不明瞭 | やや狭く不明瞭 |
内面の色 | 閉殻筋痕や套線で紫色 | 淡紅色ないし黄白色 | 白色ないし黄色 | 白色 |
套線の湾入 | やや浅い | やや浅い | やや深い | やや浅い |
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Chen (2011)[6], Mikkelsen (2006) [7]らによるマルスダレガイ科の分子系統図よりアサリ亜科Tapetinaeの要約 |
種類
編集かつてはTapes属にふくまれていたが、近年ではRuditapes属に分けられるようになった。属名の“Rudi”は「粗」 (crude) の意味をもつ[8]。化石によると、始新世 (Eocene) から中新世 (Miocene)にかけて本属ふくむアサリ亜科Tapetinaeの種が分化している[9]。欧米では大西洋産の近縁の種がVenerupis属に分類されることから、本属の種もVenerupis属とで記されることが多い[10][11]。 近年の分子系統解析の結果Ruditapes属の種はいくつかの分類群 (クレード) に別れていて単系統ではないことが示唆されている[6]。
本属名で呼ばれてきた種として、以下のような種がある[1]。
- アサリ属 Ruditapes
- アサリ Ruditapes philippinarum (Venerupis philippinarum) (A. Adams et Reeve, 1850)
サハリン以南の東アジア産だが、外来種として地中海で見つかっている[4]。
- ヒメアサリ Ruditapes variegatus (Venerupis aspera) (Quoy & Gaimard, 1835)
- †キオロシアサリ Ruditapes variegatus kioroshiensis (Hirayama & Ando, 1954)[12]
- ヨーロッパアサリ Ruditapes decussatus (Venerupis decussatus) (Linnaeus, 1758)
- Ruditapes aureus (Polititapes aureus) (Gmelin, 1791)[14]
大西洋欧州岸産。
- Ruditapes bruguieri (Hanley, 1845)
内面が淡紅色、済州島以南[15]。
- Ruditapes largillierti (Venerupis largillierti) (Phillippi, 1847)
ニュージーランドに生息。
- †ミヤムラアサリ Ruditapes miyamurensis (糸魚川淳二)
人との関係
編集広く食用とされ美味い。欧米はヨーロッパアサリが“Littleneck clam”や“quahog”とともに古くから食材とされてきた。最近の日本での産地偽装についてはアサリの項参照。
出典
編集- ^ a b “Ruditapes”. WoRMS. 2022年2月6日閲覧。
- ^ a b c 世界文化生物大図鑑 貝類 松隈明彦. 世界文化社. (2004/6/15)
- ^ a b c 相良順一郎 (1952). “ヒメアサリとアサリの差異について”. Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries 18: 133.
- ^ a b c d Vedrana Nerlović, Marino Korlević and Brankica Mravinac (2016). “Morphological and Molecular Differences Between the Invasive Bivalve Ruditapes philippinarum (Adams & Reeve, 1850) and the Native Species Ruditapes decussatus (Linnaeus, 1758) from the Northeastern Adriatic Sea”. J. of Shellfish Research 35: 31. doi:10.2983/035.035.0105.
- ^ 『中国北部湾潮間帯現生貝類図鑑』 430綴錦蛤-435菲律賓蛤仔. 科学出版社. (2016/6/1)
- ^ a b c Jun Chen, Qi Li, Lingfeng Kong and Xiaodong Zheng (2011). “Molecular phylogeny of venus clams (Mollusca, Bivalvia, Veneridae) with emphasis on the systematic position of taxa along the coast of mainland China”. Zoologica Scripta 40 (3): 260-271 .
- ^ a b c Paula M. Mikkelsen, Rüdiger Bieler, Isabella Kappner und Timothy A. Rawlings (2006). “Phylogeny of Veneroidea (Mollusca: Bivalvia) based on morphology and molecules”. Zoological Journal 148 (3): 439-521 .
- ^ “rudi”. Glosbe. 2020年5月30日閲覧。
- ^ Maximiliano Jorge Alvarez (2019). “Phylogenetic analysis of the genus Retrotapes del Río, 1997 (Bivalvia, Veneridae) and systematic analysis of its taxa from Chile”. J. of Paleontology 93: 685.
- ^ “Venerupis phillippinarum”. Dave Cowles (2006), Wallawalla.edu. 2020年6月14日閲覧。
- ^ “Ruditapes variegatus”. WoRMS. 2020年6月14日閲覧。
- ^ “Tapes (Ruditapes) variegatus kioroshiensis (Hirayama & Ando, 1954)”. 東京大学. 2021年5月3日閲覧。
- ^ “ヨーロッパアサリ”. 微小貝データベース. 2020年6月14日閲覧。
- ^ Brian Morton & Priscilla T.Y. Leung (2018). “The Discovery and Identification of Ruditapes aureus (Gmelin, 1791) (Bivalvia: Veneridae: Tapetinae) Introduced alongside an earlier alien Venerid, R. decussatus (Linaeus, 1758), into the lagoon of Fajã de Santo Cristo on São Jorge, AÇORES”. AÇOREANA 11: 205.
- ^ Alla V. Silina (2014). “Habitat Preferences and Growth of Ruditapes bruguieri (Bivalvia: Veneridae) at the Northern Boundary of Its Range”. The Scientific World Journal 2014. doi:10.1155/2014/235416.
- ^ “化石データベース アサリ属”. 2020 NariNari@TrekGEO),. 2020年6月14日閲覧。
外部リンク
編集- 現生および化石Ruditapes属の形態解析 林誠司
- 中部更新統渥美層群の軟体動物化石 川瀬基弘ら 瑞浪市化石博物館
- Polititapes aureus General Shell Portal
- Polititapes aureus Ictioterm