みずがめ座U星[1] (U Aquarii, U Aqr[2]) は、みずがめ座の領域にある恒星で、かんむり座R型変光星に分類される変光星恒星大気中の炭素の存在量が酸素よりも多い炭素星で、その中でも、水素吸収線がほとんど見られない「水素欠乏型炭素星 (HdC, hydrogen deficient carbon star) 」に分類される。太陽系からの距離は、ガイア計画の第2回データリリースの年周視差からは17,000光年、第3回初期データリリースからは38,000光年と、未だ十分に定まっていない。

みずがめ座U星[1]
U Aquarii[2]
星座 みずがめ座
見かけの等級 (mv) 11.17[2]
(変光)10.6 - 15.9[3]
変光星型 RCB[2][3]
分類 水素欠乏型炭素星[2]
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  22h 03m 19.6990459470s[4]
赤緯 (Dec, δ) −16° 37′ 35.281076709″[4]
赤方偏移 0.000299[2]
視線速度 (Rv) +89.49 km/s[2]
固有運動 (μ) 赤経: 2.780 ミリ秒/年[4]
赤緯: -1.907 ミリ秒/年[4]
年周視差 (π) 0.0859 ± 0.0222ミリ秒[4]
(誤差25.8%)
距離 約17,000光年[注 1]
約38,000光年[注 2]
みずがめ座U星の位置
物理的性質
スペクトル分類 C-Hd[2]
他のカタログでの名称
BD -17 6424[2], HIP 108876[2], Gaia DR2 6826788566384202496[2]
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水素欠乏型炭素星としては初めてs過程元素の強い存在量を示した星である[5]。1979年、恒星大気スペクトル観測から、非常に強いストロンチウム (SrII) とイットリウム (YII) の輝線の存在と、バリウムの輝線がほとんどないとする研究結果が発表された[5]。1985年には、当初考えられていたほどストロンチウムとイットリウムは強くないが、ジルコニウムが過剰であることが示された[6]。これらの、軽いs過程元素が過剰で、重いs過程元素がほとんど見られないという恒星大気の元素構成比の特徴が、赤色巨星の中心核に中性子星が合体してできるとされる仮説上の天体「ソーン-ジトコフ天体」において予測されている特徴と一致することから、その候補天体とされた[1][7]。1999年の研究では、モリブデン亜鉛などの元素が少ないことからソーン-ジトコフ天体の有力候補ではなく、そのs過程元素のパターンはむしろ後漸近巨星分枝星 (post AGB星) の桜井天体に似ているとされた[7]

注釈

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  1. ^ GaiaDR2の年周視差[2]から、1÷年周視差(秒)×3.2615638で計算。星間減光は考慮していない。
  2. ^ GaiaEDR3の年周視差[4]から、1÷年周視差(秒)×3.2615638で計算。星間減光は考慮していない。

出典

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  1. ^ a b c 鳴沢真也『連星から見た宇宙 超新星からブラックホール、重力波まで』講談社ブルーバックス〉、2020年12月17日、161頁。ISBN 978-4065213544 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l V* U Aqr -- Variable Star of R CrB type”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2021年3月13日閲覧。
  3. ^ a b Samus’, N. N.; Kazarovets, E. V.; Durlevich, O. V.; Kireeva, N. N.; Pastukhova, E. N. (2017). “General catalogue of variable stars: Version GCVS 5.1”. Astronomy Reports 61 (1): 80-88. Bibcode2017ARep...61...80S. doi:10.1134/S1063772917010085. ISSN 1063-7729. https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ604c288801ef&-out.add=.&-source=B/gcvs/gcvs_cat&recno=1459. 
  4. ^ a b c d e f Gaia Collaboration. “Gaia data early release 3 (Gaia EDR3)”. VizieR On-line Data Catalog: I/350. Bibcode2020yCat.1350....0G. https://vizier.cds.unistra.fr/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ604c2ecf9de6&-out.add=.&-source=I/350/gaiaedr3&-c=330.83209225156%20-16.62647544030,eq=ICRS,rs=2&-out.orig=o. 
  5. ^ a b Bond, H. E.; Luck, R. E.; Newman, M. J. (1979). “The extraordinary composition of U Aquarii”. The Astrophysical Journal 233: 205. Bibcode1979ApJ...233..205B. doi:10.1086/157382. ISSN 0004-637X. 
  6. ^ Malaney, R. A. (1985). “On the nature of the neutron exposure event of U Aquarii”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 216 (3): 743-752. Bibcode1985MNRAS.216..743M. doi:10.1093/mnras/216.3.743. ISSN 0035-8711. 
  7. ^ a b Vanture, Andrew D.; Zucker, Daniel; Wallerstein, George (1999). “Is U Aquarii a Thorne‐Żytkow Object?”. The Astrophysical Journal 514 (2): 932–938. Bibcode1999ApJ...514..932V. doi:10.1086/306956. ISSN 0004-637X.