かぶりとは、鉄筋コンクリートの設計に用いる項目のひとつで、鉄筋からコンクリート表面までの最短距離のこと。コンクリート工学の用語。建築用語ではかぶり厚という。

概要

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かぶりは鉄筋を酸化錆び)から守る役割を果たしている。 打設されたばかりのコンクリートはアルカリ性のため、内部の鉄筋を錆から守る機能を果たすが、施工不良や経年変化により中性化すると徐々に亀裂が生じて雨水が侵入[1]。ここで、かぶり厚みが足りないと雨水が鉄筋に達し、酸化(錆びて膨張)を始める。特に、塩害がある地域では進行が早まる可能性がある。 やがて鉄筋からコンクリートが浮き出し、建築物であれば表面に施工したタイルが剥落[2]したり、コンクリートが塊で落下して被害を及ぼす原因となることがある。

このため日本では、建築物の鉄筋コンクリートは建築基準法により、必要なかぶり厚が床スラブなどの部位に分けられて指定されている[3]

かぶり厚の不足は、設計ミス[4]や施工不良などである。 これらは年月が経過してから発覚することも多い。構造物全体に及ぶ場合には大規模な補修が必要となるが、施工を行った建設会社にクレームを申し立てても会社自体が倒産していたり、 旧民法が定める除斥期間(20年)を超えている場合には拒絶されることもある[5]

脚注

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  1. ^ 不動産価値も下がる?かぶり厚さ不足で起こるトラブルと対策”. イエイ (2018年4月17日). 2022年12月24日閲覧。
  2. ^ 鉄筋のかぶり不足によるタイル落下。原因と対策について解説”. 基礎から学ぶ左官建材マガジン (2021年7月2日). 2022年12月24日閲覧。
  3. ^ 建築基準法施行令”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2008年11月22日閲覧。 “第七十九条(鉄筋のかぶり厚さ) 鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、耐力壁以外の壁又は床にあっては二センチメートル以上、耐力壁、柱又ははりにあっては三センチメートル以上、直接土に接する壁、柱、床若しくははり又は布基礎の立上り部分にあっては四センチメートル以上、基礎(布基礎の立上り部分を除く。)にあつては捨コンクリートの部分を除いて六センチメートル以上としなければならない。”
  4. ^ 11cm確保したのにかぶり不足”. 日経クロステック (2020年5月11日). 2022年12月24日閲覧。
  5. ^ 手抜き工事20年経てば修繕不要か 三重のリゾートマンション、「責任消滅」主張のゼネコン提訴へ”. 産経新聞 (2022年12月25日). 2022年12月24日閲覧。

関連項目

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