いろんな色のインクで
『いろんな色のインクで』(いろんないろのインクで)は、丸谷才一が著した書評集。
いろんな色のインクで | ||
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著者 | 丸谷才一 | |
イラスト | 装丁:和田誠 | |
発行日 | 2005年9月15日 | |
発行元 | マガジンハウス | |
ジャンル | 書評集 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 上製本 | |
ページ数 | 400 | |
コード | ISBN 978-4838713912 | |
ウィキポータル 文学 | ||
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2005年9月15日、マガジンハウスより刊行された。装丁は和田誠。取り上げられている書物の数は80。それに加えてフェデリコ・フェリーニの映画『8 1/2』とサンドロ・ボッティチェッリの絵画『春』が論じられている。
取り上げられている主な作品
編集- アレッサンドロ・マンゾーニ 『いいなづけ』上・下(河出書房新社、1991年10月、平川祐弘訳)
- 初出は『本の話』1995年11月号。従来の翻訳(『婚約者』岩波文庫)が頭に入らない訳文でいくら頑張っても読めなかったところ、平川祐弘の新訳[1]が出たおかげで一気に読むことができたと述べている。「この壁画的な大長篇小説は、イタリア社会を上流から下層まで縦断する多様な群像が描かれてゐて、どれもみなすばらしい」[2]
- 森嶋通夫 『なぜ日本は没落するか』(岩波書店、1999年3月)
- 初出は「毎日新聞」1999年5月2日。「日本人はなぜ、学生から政治家まで、ものを考へるのが苦手なのか。一番直接的には、日本近代化が西洋十九世紀の素直な受容であつたせいだらう。祖述がすなはち学問であれば、師は弟子に思考法を教へることができない。そして、模倣と継承を尊ぶこの態度は、実は儒教や仏教を受入れたときも同じであつた。(中略) さういふ社会で、この本の意味は大きい」[3]
- 村上春樹 『スプートニクの恋人』(講談社、1999年4月)
- 初出は「毎日新聞」1999年5月16日。登場人物の失踪の不可解性について、丸谷は「ノヴル(小説)の方法ではなくて、ロマンス(伝奇)の方法だ」と述べる。「これは一つには村上の師事する文学系統がノヴル中心のイギリス小説ではなく、ロマンス中心のアメリカ小説であるといふ事情による」[4]「綺譚といふ冒険によつてしか世界は正確に把握されないといふのはボルヘスの短篇小説の方法であつたが、村上はあのラテン・アメリカの巨匠に学び、長篇小説といふ形式で敢へて綺譚を書かうとする」[5]
- 『新約聖書Ⅰ マルコによる福音書・マタイによる福音書』(岩波書店、1995年6月、佐藤研訳)
- 初出は「毎日新聞」1995年8月7日。1964年に発表した評論「未来の日本語のために」[6]で『マタイによる福音書』の文語訳(大正6年)と口語訳(昭和29年)を引用し、後者を「イエスの口から断じて出るはずがない、平板で力点がなくて、たるみにたるんでいる駄文」と評した丸谷は、佐藤研の新しい翻訳を絶賛する。「戦後五十年の記念として絶好のものだらうと、わたしは感慨にふけることになつた」と述べている。