いらちの愛宕詣り(いらちのあたごまいり)は上方落語の演目の一つ。東京に移植されて『堀の内』の題で演じられる。「いらち」とは大阪弁で「あわて者」「せっかちな者」の意味。

笑福亭一門のお家芸の一つで、古くは4代目笑福亭松鶴が得意とした。SPレコードも残されている。

あらすじ

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あわて者の喜六、自分の「いらち」を治すには「伊勢にゃ七たび、熊野に三度、愛宕さんへは月詣り」という歌で有名な愛宕山に参詣しようと、女房に弁当と百つなぎという一文銭をつないだものをもらい「三文お賽銭やで。あとはあんさんの小づかいやで。」と念を押され、早速愛宕山へ向かう。

歩くうちに神社が見えてきた。通りがかりの人に「ここが愛宕山ですかいな。」と訊くと、「ここは北野の天神さんじゃ。愛宕山やったら反対どすがな。」

道を変えて進むうち「何や。どっかで見たような町内やなあ。…あれ、あっこで喋ってンのうちのかかそっくりやで。」といぶかると、「ちょっと、おさきはん、あこでうろうろしてんの、あんたとこの喜イさんちゃうか。」「そんなあほな。うちの人朝の早うから愛宕さんへお詣りにいってるがな。…まア、うちの人やわ。ちょっと、もう行ってきたンか!?」「…え。こらわしの家やがな。」と、あっちへうろうろ、こっちへうろうろ。喜六はようようのことで愛宕山に着く。

「もうし、愛宕さん。わいのいらち治してや。」と勢いよく賽銭を投げたのはいいが、手元に三文残しあとすべて神社に挙げてしまう。「あ、盗人や。」と叫んで、神主が駆け付ける騒ぎに。「えらいすいまへん。賽銭まちごたんで返しておくんなはれ。」「そんなことでけへんがな。」「ええっ!何じゃ小づかいとられてしもたがな。」と喜六はおおむくれするが金は返ってこない。

仕方なく参道の茶店に入り弁当を食べようとするが、包みを開けてみると、何と女房の腰巻に枕。

「何やこれは。あのかか、俺に恥かかしやがった。」と怒り心頭に発した喜六、家に飛んで帰って「こら! おのれは! 弁当やと思たら、お前の腰巻に枕やないかい。こうしてくれる!」と殴りかかる。「ああ…何するのン。」「何ぬかしとるネン。ようも恥かかしやがって…」「ちょ、ちょっと待ちなはれ。あんた、隣の喜イさんやないか。」「えっ! あっ! 隣やがな。」

喜六、我が家に飛び込んで女房に「えらい、ただ今は不調法。」

概略

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愛宕山」とならぶ、愛宕山を主題とした上方落語の代表的演目だが、こちらの方は単純なストーリーで笑いが多く、3代目桂米朝をはじめ多くの落語家が演じている。

笑福亭鶴瓶が若手時代から得意にしていた(噺の中でオートバイが登場したり、多少ブッ飛んでいる)が、喜六が家に帰ったあと、子供を風呂に連れて行き一騒動を引き起こし「お父さん、床のタイル洗ろてる」でサゲる東京の『堀の内』の演出を採用していた。

東京の『堀の内』は大阪とほぼ同じ内容だが、参詣する場所が「堀の内のお祖師様」となっている。東京でも、8代目橘家圓蔵10代目桂文治をはじめ演者が多い人気ネタである。

関連項目

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