浮絵
江戸時代に描かれた浮世絵の様式のひとつ
解説
編集西欧の透視画法(遠近法)を用いて、屋内の様子などを遠近感を強調して描いたもの。近景がまるで浮き出て、奥行きが深まって見えるのでそのように名付けられた。またの名を「くぼみ絵」、「遠視画」ともいう。劇場内部や室内の様子を描いた作品が多くみられる。ただし西洋画の遠近法に直接学んだというよりもむしろ、その影響を受けた中国版画の流入により生み出されたとされる。さらにこの浮絵が、後にレンズを通して見る眼鏡絵につながっていく。
浮絵は奥村政信が初めて描いたと見られ、記録によると享保(1716年-1736年)の頃の作品が最も古いとされており、初期には西村重長などの作品が残っている。肉筆浮世絵による浮絵もある。さらにその後、明和から天明(1764年-1789年)にかけては歌川豊春による作品が多く、その後葛飾北斎やその弟子の柳々居辰斎、昇亭北寿ら多数の浮世絵師が浮絵を描いている。しかし天保(1830年-1844年)以降はあまり描かれなくなり、通常の風景画が描かれるようになっていった。
参考文献
編集- 吉田漱 『浮世絵の基礎知識』 雄山閣、1987年
- 吉田漱 『浮世絵の見方事典』 北辰堂、1987年