日本SF大会
日本SF大会(にほんエスエフたいかい)は、アメリカで毎年開催されている世界SF大会をもとに、1962年から継続して開催されている、SFファンが集まるお祭りである[1]。開催を希望する団体が立候補し、ファンの代表者の集まりである『日本SFファングループ連合会議』にて開催権をどの団体に与えるかが決定され、その団体が『実行委員会』として、その年の大会運営をおこなう[2]。作家、翻訳家、イラストレイター、マンガ家、編集者などSF出版物に関わるプロはもちろん、様々な分野の科学者や専門家を招き、講演やパネルディスカッション、お茶会など様々な企画がおこなわれる[1]。日本で開かれるSF大会であり、日本全国のSFファンやSF同人サークルが一堂に集う祭りである。
概要
編集1962年(昭和37年)5月に東京の目黒で第1回大会(MEG-CON)が開かれて以来、何度か存続の危機を迎えながらも毎年日本のどこかで開かれている。運営は日本SFファングループ連合会議の承認のもと、連絡を取りつつ、主催SFファングループが行う。コンベンションの「コン」とひっかけて、開催地の名称にちなんだ「XXコン」という愛称が付けられ、その名で呼ばれることも多い。正式名称は第n回日本SF大会。
当該日本SF大会の参加者の投票によって、前年に発表された優れたサイエンス・フィクションの中から優秀作を選び、星雲賞を授与する(1970年(昭和45年)より毎年開催)。選考対象は日本のSF作家による作品だけでなく、海外のSF作家の作品の邦訳、特撮映画、アニメーションなど映像作品も含める。
なお、毎年1000〜1500人の参加者を集める年次全国大会である「日本SF大会」と区別する為、京都SFフェスティバル、SFセミナー、DAINA☆CONといった参加者100〜200人の小規模大会は、地方大会(ローカルコン)、地方コンと呼ばれる。
第59回日本SF大会 F-CONは新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた政府の要請を踏まえて延期したため、第60回日本SF大会 SF60より後に開催されることとなった。
参加方法
編集その年の大会開催中に、日本SFファングループ連合会議の席上で立候補があった場合、翌々年までの大会の開催が正式承認される。正式決定後、各大会の実行委員会が参加者の募集を開始する(あわせてSFマガジンなどで告知されることが多い)。
申込手段
編集- ほとんどの場合、会場で翌年の大会の参加を受け付ける(翌々年の大会については、準備状況によるが受付けを行っていないことが多い)。
- 公式WebsiteやSFマガジンの情報等より指定された方法による。
- 地方のSFイベント、コミックマーケット等で受け付ることもある
申込区分
編集入場することの出来る本登録と入場することは出来ないが公式出版物の配布や星雲賞の投票権利のある予備登録の2つの参加区分が用意される(区分の名称は異なる場合がある)。通常、追加費用を支払うことで予備登録から本登録に切り替えることができる。
参加費
編集日本SF大会の参加費は大会のスタイル(合宿費用を含むかどうか等)により大きく異なる。一般参加者の本登録費用は大会にもよるが1万〜3万円以上、予備登録は5000円前後。SF作家などの関係者は一般参加者とは別に委員会から招待されることもある。
なお早期に参加申込みをする場合のほうが安価に設定されていることが多い。
日本SF大会で行われる活動(「企画」)
編集日本SF大会では開会式(オープニング)と閉会式(クロージング)を参加者が一堂に集まって行い、多くの場合が土日での一泊二日開催というパターンのため、分科会形式で小さなイベントがいくつも行われ、参加者は自分の参加したい分科会に自由に参加することができる。「企画」と呼ばれている。
分科会のテーマはSFに関連すると称することができるものであればよく、ほぼ無制限である。主催者が主体のものもあれば、参加者(有志)が主体のものもあり、明確には区別されない。
分科会の例としては以下のようなものがある。
- パネルディスカッション
- SF作家や翻訳家、書評家、編集者を招いて、SFに関連するテーマで討議を行う。
- 講座
- SF作家や編集者が小説の書き方を指南したり、宇宙開発事業などSFに関連した業界にいる科学者や技術者がその業界の現状などを伝える。プロからアマチュアへの知識の移転という意味合いがある。一般に知られない現場の現状、暴露話などがされることもある。
- 朗読会
- 作家が自らの作品を朗読する。また、作品の創作過程やストーリー、世界観設定、次回作等に関する発表や質疑応答なども同時に行なわれることがある。
- 研究発表
- SFファンが自分の研究した事柄について発表を行う。SFに関連したことは限らず、神社や変な飲料水など雑多なテーマが扱われる。液体窒素などを用いた物理や化学の実験の実演も行なわれる。
- パーティ
- 主に雑談しながら飲食を行う。成人の場合はアルコール飲料を含む。会場のみならず、船等を借り切って行う場合もある。
- ゲーム
- SFにちなんだ大規模なシミュレーションゲームやRPGが行なわれる。艦隊による宇宙戦争のような軍事シミュレーションや、異なった星の生命が遭遇したときに交流を確立するファーストコンタクトシミュレーションなどがある。
- 上映会
- 参加者が作ったSFに関する映像作品や、海外のSF作品で日本では知られていない作品を上映する。 SF映画やテレビなどの鑑賞も行なわれる。
- 展覧会
- 参加者が作ったフィギュアや絵画等の展示を行う。本職のイラストレータによるSFやファンタジーをテーマにした絵の展示や漫画の原画の展示も行なわれる。
- カラオケ
- アニメや特撮の主題歌・挿入歌を一昼夜ぶっ通しで歌い続ける合唱形式のカラオケ。
- コンサート
- アニメや特撮の主題歌・挿入歌を歌った歌手による正式なコンサート。
- マスカレード(=コスプレ)
- 参加者は会場内で自由にコスプレをしても良いことになっている。参加者は思い思いの格好で会場内を闊歩している。親子で行うものも多い。優れたコスプレイヤーを選出し、表彰するコンテストやコスプレイヤーによる寸劇が行われることもある。
- ディーラーズルーム
- SFに関連した古本や復刻版、アイテム、フィギュア、同人誌の販売を行う。次回以降の日本SF大会の参加申込み受付けや、その他イベントの受付を行う場合もある。
- PX
- 大会期間中に参加者に対して軽食や飲料(アルコール類を含む)の提供を行う場所。PXの意味は米軍の基地などで売店の事をPX(Post exchange)と称していた事による(日本語では酒保(しゅほ))。主に合宿型大会で行われる企画である。
- 飲食店
- 大会期間中に参加者に対して軽食や飲料(アルコール類を含む)の提供を行う。SFに因んでマッドサイエンティストの研究室をイメージさせる演出がなされることがある(スタッフが白衣とメガネ着用で「ハカセ」と呼ばれる)。主に「カフェ・サイファイティーク」や「理系機構」というサークルが自主企画として行っている。
- 新聞発行
- 時刊新聞が主力である。他に時間報等がある。会場の一角に執筆編集スペースとリソグラフを設置し、時刊新聞は各企画の進行中は名前通り1時間に1号、ときにはそれ以上刊行されている。掲載されているのは各分科会で起きた椿事や著名なゲストの来訪、分科会の予告と宣伝、参加中のファンやゲストによるコメントやイラストである(告知等も載るメディアであるが、実行委員会とは独立して運営されている)。
- ファン同士の交流
- SF大会は見知らぬ他人同士が知り合うための場でもあり、遠隔地に離れ離れとなった知人と顔を合わせる場でもある。
- 日本SFファングループ連合会議定期総会
- 全国から参加した加盟SFファングループが、その大会で発行される星雲賞各賞の承認、翌々年の日本SF大会開催地決定などを行う。
- 暗黒星雲賞への投票
- 大会が開催されている会場内で行なわれたことになら何でも投票できる投票内容無制限の投票が開催期間中行なえる。組織票その他の不正手段を講じることが許されている。会場となったホテルや旅館の食事・対応が良いと、そこの女将が投票され受賞したり、単に天候が受賞することがある。
- 各種賞の発表・授与
- 主に閉会式(クロージング)で行われる(一部は開会式で行われることもある)。各種賞については下記参照。
- キッズルーム(キッズコン)
- 親子で参加する参加者が増えたために子供が遊ぶために設けられたコーナー。
- 食事
- 大会として実行される場合とされない場合があるが、地方での場合、重要視されることがある。参加者の目の前で「牛の丸焼き」や「マグロの解体ショー」、「マンガ肉の会食」などが催された事もある。
- 移動
- 大会が首都圏から離れた場所等で開催される場合等、実行委員会あるいは有志の企画として、大会会場への移動手段が用意される場合がある。この場合、借切りないしは一部借切りを図るため、大会参加者のプレ企画あるいはプレ宴会会場の様相を示すことがある。過去には、船・鉄道・バス等各種の交通手段を借り切って行われた例がある。
- 合宿
- 都市型大会の場合、大会で宿泊を用意しないため、大会公認の合宿や、非公認で参加者独自の合宿が開かれる。その中でも分科会がさらに行われることもあるが、往々にして宴会が最大の分科会になることもある。
- 睡眠
- 合宿形式の場合、分科会が深夜に及ぶため、参加者の体力に応じぎりぎりまで削られる。都市型形式の場合は、比較的とりやすいがそれでも公認・非公認の合宿が実施される場合があり、その場合は削られる。
- 入浴
- 厳密には分科会ではないが、開催地が温泉地である場合に重要なイベント。
シール交換
編集見知らぬゲストとシール交換をする。特定の数集めると缶バッジがもらえ、2冊目へと突入する。シールを会場で作ることも可。
日本SF大会席上で授与される主な賞
編集日本SF大会の歴史
編集1960年代
編集- 1962年 第1回
- 1963年 第2回
- 開催地:東京都
- 愛称:TOKON
- 開催日:1963年10月26日〜27日
- 開催場所:毎日ホール
- 参加者:約300名
- 1964年 第3回
- 1965年 第4回
- 開催地:東京都
- 愛称:TOKON 2
- 開催日:1965年8月28日〜29日
- 開催場所:日本学生会館・科学技術館
- 参加者:約400名
- 1966年 第5回
- 開催地:名古屋市
- 愛称:MEICON
- 開催日:1966年8月20日〜21日
- 開催場所:名古屋観光会館・葵記念会館
- 参加者:約180名
- 1967年 第6回
- 開催地:東京都
- 愛称:TOKON 3
- 開催日:1967年8月19日〜20日
- 開催場所:日本学生会館・洋服会館
- 参加者:約180名
- 1968年 第7回
- 開催地:東京都
- 愛称:TOKON 4
- 開催日:1968年8月31日〜9月1日
- 開催場所:洋服会館・岩波ホール
- 参加者:約250名
- 1969年 第8回
1970年代
編集- 1970年 第9回
- 開催地:東京都
- 愛称:TOKON 5
- 開催日:1970年8月22日〜23日
- 開催場所:洋服会館・岩波ホール
- 参加者:約250名
- 1971年 第10回
- 1972年 第11回
- 開催地:名古屋市
- 愛称:MEICON 2
- 開催日:1972年8月19日〜20日
- 開催場所:東別院青少年会館
- 参加者:約350名
- 1973年 第12回
- 1974年 第13回
- 開催地:京都府
- 愛称:MIYACON
- 開催日:1974年8月3日〜4日
- 開催場所:京都教育文化センター
- 参加者:約320名
- 1975年 第14回
- 1976年 第15回
- 開催地:東京都
- 愛称:TOKON 6
- 開催日:1976年8月14日15日
- 開催場所:日本経済新聞ビルホール
- 参加者:約700名
- 1977年 第16回
- 開催地:横浜市
- 愛称:HINCON
- 開催日:1977年8月27日〜28日
- 開催場所:横浜産業貿易センター
- 参加者:約300名
- 1978年 第17回
- 1979年 第18回
- 開催地:名古屋市
- 愛称:MEICON 3
- 開催日:1979年8月25日〜26日
- 開催場所:港湾会館
- 参加者:約700名
1980年代
編集- 1980年 第19回
- 開催地:東京都
- 愛称:TOKON 7
- 開催日:1980年8月9日〜10日
- 開催場所:浅草公会堂
- 参加者:約1300名
- 1981年 第20回
- 開催地:大阪市
- 愛称:DAICON 3
- 開催日:1981年8月22日〜23日
- 開催場所:森之宮ピロティホール
- 参加者:約1200名
- 1982年 第21回
- 開催地:東京都
- 愛称:TOKON 8
- 開催日:1982年8月14日〜15日
- 開催場所:都市センターホール
- 参加者:約1500名
- 1983年 第22回
- 開催地:大阪市
- 愛称:DAICON 4
- 開催日:1983年8月20日〜21日
- 開催場所:大阪厚生年金会館
- 参加者:約4000名
- 1984年 第23回
- 開催地:北海道
- 愛称:EZOCON 2
- 開催日:1984年8月27日〜29日
- 開催場所:定山渓ホテル
- 参加者:約1000名
- 1985年 第24回
- 1986年 第25回
- 1987年 第26回
- 開催地:石川県
- 愛称:URACON '87
- 開催日:1987年8月8日〜9日
- 開催場所:山中町 社会教育会館・婦人児童館・周辺旅館
- 参加者:約1200名
- 1988年 第27回
- 1989年 第28回
1990年代
編集- 1990年 第29回
- 開催地:東京都
- 愛称:TOKON 9
- 開催日:1990年8月18日〜19日
- 開催場所:浅草公会堂・ビューホテル
- 参加者:約1000名
- 1991年 第30回
- 開催地:金沢市
- 愛称:i-CON
- 開催日:1991年7月26日〜28日
- 開催場所:ルネス金沢・金沢市文化センター
- 参加者:約1500名
- 1992年 第31回
- 開催地:横浜市
- 愛称:HAMACON
- 開催日:1992年8月21日〜23日
- 開催場所:パシフィコ横浜
- 参加者:約1600名
- 1993年 第32回
- 開催地:大阪市
- 愛称:DAICON 6
- 開催日:1993年8月21日〜22日
- 開催場所:大阪国際交流センター・吉野旅館
- 参加者:約1600名
- 1994年 第33回
- 開催地:沖縄県
- 愛称:RYUCON
- 開催日:1994年7月1日〜3日
- 開催場所:ココガーデンリゾートオキナワ・沖縄厚生年金休暇センター
- 参加者:約300名
- 1995年 第34回
- 1996年 第35回
- 開催地:北九州市
- 愛称:コクラノミコン
- 開催日:1996年8月23日〜25日
- 開催場所:リーガロイヤルホテル小倉
- 参加者:約1200名
- 1997年 第36回
- 1998年 第37回
- 開催地:名古屋市
- 愛称:CAPRICON 1
- 開催日:1998年8月29日〜30日
- 開催場所:名古屋国際会議場
- 参加者:約1100名
- 1999年 第38回
- 開催地:長野県
- 愛称:やねこん
- 開催日:1999年7月3日〜4日
- 開催場所:ホテルグリーンプラザ白馬
- 参加者:約1300名
2000年代
編集- 2000年 第39回
- 開催地:横浜市
- 愛称:Zero-CON
- 開催日:2000年7月3日〜4日
- 開催場所:パシフィコ横浜
- 参加者:約1600名
- 2001年 第40回
- 2002年 第41回
- 2003年 第42回
- 2004年 第43回
- 2005年 第44回
- 開催地:横浜市
- 愛称:HAMACON 2
- 開催日:2005年7月16日〜17日
- 開催場所:パシフィコ横浜
- 参加者:約1800名
- 2006年 第45回
- 2007年 第46回
- 開催地:横浜市
- 愛称:Nippon 2007(世界SF大会・ワールドコンとの共催)
- 開催日:2007年8月30日〜9月3日
- 開催場所:パシフィコ横浜
- 参加者:約3400名
- 2008年 第47回
- 開催地:岸和田市
- 愛称:DAICON 7
- 開催日:2008年8月23日〜24日
- 開催場所:岸和田市立浪切ホール
- 参加者:約1200名
- 2009年 第48回
- 開催地:栃木県
- 愛称:T-con2009
- 開催日:2009年7月4日〜5日
- 開催場所:塩原温泉 ホテルニュー塩原
2010年代
編集- 2010年 第49回
- 2011年 第50回
- 2012年 第51回
- 開催地:夕張市
- 愛称:Varicon2012
- 開催日:2012年7月7日〜8日
- 開催場所:合宿の宿 ひまわり
- 2013年 第52回
- 2014年 第53回
- 2015年 第54回
- 開催地:米子市
- 愛称:米魂(こめこん)
- 開催日:2015年8月29日〜30日
- 開催場所:米子コンベンションセンター
- 参加者:881名[8]
- 2016年 第55回
- 開催地:三重県
- 愛称:いせしまこん
- 開催日:2016年7月9日〜10日
- 開催場所:温泉旅館 伊勢志摩・鳥羽 戸田家
- 2017年 第56回
- 2018年 第57回
- 2019年 第58回
2020年代
編集脚注
編集注釈
編集- ^ 当初開催日を2020年8月22日~23日(開催場所はホテル華の湯)としていたが新型コロナ感染症拡大防止のために2021年3月13日・14日に延期した。しかし感染症拡大が収束しなかったことから2022年に再延期した結果、2021年開催の第60回大会よりも後の日程での開催となった。
出典
編集- ^ a b “日本SF大会とは – 第60回日本SF大会 SF60”. 2022年11月15日閲覧。
- ^ “日本SF大会とは – 第61回日本SF大会 Sci-Con 2023”. 2022年11月15日閲覧。
- ^ SFファンジン大賞
- ^ “SFファンジン大賞|日本SFファングループ連合会議”. www.sf-fan.onn.jp. 2023年2月19日閲覧。
- ^ 柴野拓美章|第54回日本SF大会 米魂 2015.8.29-30 - ウェイバックマシン(2016年3月5日アーカイブ分)
- ^ “第49回日本SF大会 2010 TOKON10”. 第49回日本SF大会 2010 TOKON10. 2023年9月6日閲覧。
- ^ “Home | ドンブラコンL”. www.donbura.com. 2023年9月6日閲覧。
- ^ 『第54回日本SF大会レポート』第54回日本SF大会実行委員会、2016年7月1日、47頁。
- ^ “大宮で埼玉初「日本SF大会」 SF賞「星雲賞」や「暗黒星雲賞」授賞式も”. 大宮経済新聞. 2023年9月6日閲覧。