は、ハングルを構成する子音字母のひとつ。現在は使用されない古いハングル字母である。呼称はバンチウム반치음, 半歯音)・バンシオッ반시옷、半歯音のシオッ)などがある。有声歯茎摩擦音[z]の音価を持っていたと推定されている。

ハングル字母
基本字母
合成字母
古字母

歴史的には、配列順は『訓民正音』当時は子音字母の最後に位置し、最初の「ㄱ」から濃音を含めなければ17番目、濃音も含めれば23番目であり、『訓蒙字会』では14番目であった。

音韻

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訓民正音初声体系では不清不濁半歯音に分類されており、訓民正音の世宗序では「半齒音如穰字初發聲」と規定されている。有声歯茎摩擦音[z]を表したと推定されている。現れる条件が決まっており、必ず有声音と有声音の間で使われた。なお『訓民正音解例』終声解に終声字母としては挙げられていないが、一貫して終声として使われている。

16世紀末頃には消失したと考えられ、その多くは子音の音価を失ってで表される母音から始まる音節となった。/i/ または /j/ で始まることが多い。中には/, /のような子音に変化した単語もある。なお現代文法で不規則動詞に母音語尾がつくと、が脱落するのは、当時、語幹のが母音に挟まれるととなっていたことに由来する。

漢字音表記では、中国語の日母に対応して使われた。

字形

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『訓民正音解例』制字解によると歯音と同様に歯の形に象った異体の字とされる。

名称の問題

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古くは『訓蒙字会』(1527年)により「而(/zi/ズィ、現在の発音は、イ)」と名付けられていたが、字母がその音価を失ったため、名付けられる適当な名称がなくなった。そこでその表された音の分類である「半歯音(バンチウム)」と呼ばれるようになった(半歯音に属する字母はのみである)。しかし、それはあくまでも音の名称であって字母の名称にはふさわしくないという考え方があり、同じく歯の形を象り、音価も対照的な字母(シオッ)の名称を使って、バンシオッ(半歯音のシオッ)との名称が広く使われている。しかし、これに対してシオッの音価と対照的であることが分かりやすいヨリンシオッ(音の弱いシオッ)などの名称をつかうべきだとの意見もあり、意見の一致をみていない。

文字コード

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Unicodeにおける文字コード
名称 種類 コード HTML実体参照コード 表示
HANGUL LETTER BANSIOS 単体字 U+317F ㅿ
HANGUL CHOSEONG BANSIOS 初声用 U+1140 ᅀ
HANGUL JONGSEONG BANSIOS 終声用 U+11EB ᇫ