トリメチルアミン
魚の腐敗臭の原因となる有機化合物
トリメチルアミン (trimethylamine) は有機化合物の一種で、最も基本的な第三級アミンである。魚の臭い。
トリメチルアミン[1] | |
---|---|
トリメチルアミン | |
別称 N,N-ジメチルメタンアミン | |
識別情報 | |
略称 | TMA, Me3N |
CAS登録番号 | 75-50-3 |
PubChem | 1146 |
EC番号 | 200-875-0 |
KEGG | C00565 |
RTECS番号 | 1.1.78 – 31.1.87 |
| |
| |
特性 | |
化学式 | C3H9N |
モル質量 | 59.11 g/mol |
示性式 | (CH3)3N |
外観 | 無色透明の気体 |
密度 | 0.67 g/mL (0 ℃) |
融点 |
-117.08 °C, 156 K, -179 °F |
沸点 |
2.87 °C, 276 K, 37 °F |
水への溶解度 | 任意に混和 |
塩基解離定数 pKb | 4.13 |
危険性 | |
安全データシート(外部リンク) | ICSC 1484 |
NFPA 704 | |
Rフレーズ | R12 R20/22 R34 |
Sフレーズ | (S1/2) S3 S16 S26 S29 S36/37/39 S45 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
性質
編集水に非常に溶けやすい。低濃度では魚臭、高濃度ではアンモニア状の臭気を有する。
魚類は、浸透圧調節作用を持つ成分として、トリメチルアミン-N-オキシド (TMAO) を持ち、還元されることでトリメチルアミンとなる。トリメチルアミンは魚が腐敗したときの臭いの原因の一つである。
合成
編集パラホルムアルデヒドと塩化アンモニウムから、トリメチルアミン塩酸塩を経てトリメチルアミンを得る合成法が報告されている[2]。
- (NaOH で中和)
多くのアミンと同じく窒素上に非共有電子対を持つため塩基性を示し、求核剤としてハロゲン化アルキルと反応し、アルキルトリメチルアンモニウム塩を生成する。
トリメチルアミン尿症は、フラビン含有モノオキシゲナーゼ (FMO) が欠損もしくは低活性であることにより、汗や尿にトリメチルアミンが含まれる、という病気である。
心血管疾患との関係
編集食品中に含まれるレシチン(コリン)が一部の腸内細菌によりトリメチルアミン(TMA)に代謝され、さらに肝臓においてFMO酵素によりTMAOへと代謝され、これがマクロファージを変化させアテローム性動脈硬化などの心血管疾患に結びついているとする論文[3]がある。また赤肉などに含まれるカルニチンも同様に腸内細菌 - 肝臓代謝を経てTMAOとなりこれがアテローム性動脈硬化のリスクを高めているという報告[4][5]もある。
出典
編集- ^ Merck Index, 11th Edition, 9625.
- ^ Adams, R.; Brown., B. K. (1921). “Trimethylamine.” Org. Synth. 1: 75.
- ^ Z. Wang et al. (2011). “Gut flora metabolism of phosphatidylcholine promotes cardiovascular disease”. Nature 472: 57–63. doi:10.1038/nature09922.
- ^ R.A. Koeth et al. (2013). “Intestinal microbiota metabolism of L-carnitine, a nutrient in red meat, promotes atherosclerosis”. Nature Medicine 19: 576–585. doi:10.1038/nm.3145 2014年1月22日閲覧。.
- ^ “肉食の心血管病リスクに関する「カルニチン論争」” (pdf). 日経メディカルオンライン(日経BP社) (2013. 7. 1). 2014年1月22日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集- 国際化学物質安全性カード トリメチルアミン(40%水溶液) (ICSC:1484) 日本語版(国立医薬品食品衛生研究所による), 英語版