シナミア・ククリヒメ (Sinamia kukurihime) は日本から産出した、絶滅した淡水魚の一種である[1]。属名 Sinamia(シナミア)は「支那アミア」を意味し、種小名 kukurihime(ククリヒメ)は白山比咩神社に祀られている菊理媛神に因み名付けられた[1][2][3]

シナミア・ククリヒメ
生息年代: 130.0 Ma
地質時代
中生代 前期白亜紀
ベリアシアンオーテリビアン
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: アミア目 Amiiformes
: シナミア科 Sinamiidae
: シナミア属 Sinamia
: シナミア・ククリヒメ
S. kukurihime
学名
Sinamia kukurihime
Yabumoto2014

産状

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本種の化石は白山周辺にある石川県白峰村桑島化石壁から産出し、中生代前期白亜紀(約1億3000万年前;ベリアシアンオーテリビアン)に当たる、手取層群石徹白亜層群いとしろ あそうぐん)の淡水性堆積物の中から見出された[1][4]

手取層群の魚類化石は1987年に桑島化石壁から発見された歯骨以来、岐阜県荘川村の大黒谷層からシナミア属の断片的な化石が知られていた[5]。魚類ではセミオノートゥス目セミオノートゥス科レピドーテス属パキコルムス属パキコルムス科の化石も共産する[5]。2002年までに300点近いガノイン鱗が見つかっていた[5]

形態

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同属別種 (Sinamia sp.) の化石。

推定全長は60 cmセンチメートルで、これまで発見されたシナミア属魚類の中では最長[4]。現生のものでは北アメリカ大陸の川や湖に生息しているアミア・カルヴァと外観が似ている[3]。シナミア科魚類の特徴である、頭頂骨が1対ではなく1つであること、体がガノイン鱗で覆われることが認められる[2]

舌顎骨頭骨鰓蓋下顎骨をつり下げている骨)の形状のほか[2][3]前鰓蓋骨上擬鎖骨の形状、前頭骨の感覚管開孔の大きさが同属の他6種と異なることで識別される[1]

シナミア属 Sinamia の種間の比較[1]
種名 前頭骨表面
surface of frontal
前頭骨の感覚管開孔
pores of sensory canal of frontall
眼窩
concavity of orbit of frontal
左右前頭骨の縫合
suture between right and left frontals
皮翼耳骨表面
surface of the dermopterotic
上顎骨後関節突起
anterior articular process of maxilla
前鰓蓋骨の弓なり
preopercle crescent-shaped
上擬鎖骨
supracleithrum
後縁
posterior margin of scales
S. kukurihime 滑らか 比較的大きい 浅い やや波状 滑らか 長く頑丈 狭い 靴べら 滑らか
S. liaoningensis 滑らか 小さい 浅い やや波状 滑らか - 深い 背側が窪む 滑らか
S. zdanskyi 明瞭な稜あり 小さい 深い やや波状 稜や皺あり より小さい 深い 背側が腹側より幅広い 滑らかまたは鋸歯縁[注釈 1]
S. chinhuaensis 稜あり - 深い まっすぐ 稜や皺あり - 狭い - 鋸歯縁
S. poyangica 皺あり - 深い まっすぐ 稜や皺あり - 深い 頑丈 鋸歯縁
S. huananensis - - 深い まっすぐ - - 狭い - 滑らか
S. luozigouensis - - - - - - - - 滑らか

発見

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1987年から2013年にかけ、石川県白山市桑島化石壁より市民らが発掘した41点の化石を北九州市立自然史博物館藪本美孝(よしたか)学芸員が調査したところ、厚さ1 mmミリメートル弱、長さ7 mm 前後の鱗の化石などがあり、シナミア科の淡水魚の特徴と一致した。舌顎骨の化石も見つかり、これまで中国白亜紀の地層から見つかっていた6種のシナミア属のものと形状が異なることから、新種と断定された[4][6]

そして2014年10月1日発行の日本古生物学会の国際学術誌 Paleontological Research に論文が掲載され、Sinamia kukurihime の学名がつけられた[1][2][7]。また、同日記者会見が行われた[6]。シナミア属の化石が中国以外で確認されたのは初のことである[3]。日本における新種の発見は東アジアの白亜紀にシナミア科魚類が広く生息・多様化していたことを示している[2]

新種発見に際し、白山恐竜パーク白峰にて公開されている[6]

脚注

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注釈

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  1. ^ 尾部に生えるものの後方は滑らかだが、他の部分では鋸歯縁

出典

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  1. ^ a b c d e f Yabumoto 2014, pp. 211–223.
  2. ^ a b c d e 化石壁産出新種化石について_09”. 白山市. 2014年11月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月23日閲覧。
  3. ^ a b c d “白山で新種の淡水魚化石 1億3千万年前の地層から”. 北國新聞 (石川県金沢市: 北國新聞社). (2014年10月2日). オリジナルの2014年10月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20141004090722/https://www.hokkoku.co.jp/subpage/H20141002102.htm 2014年11月23日閲覧。 
  4. ^ a b c 恐竜パーク白峰ニュース 新種発見 シナミア ククリヒメ』(プレスリリース)http://city-hakusan.com/wp-content/uploads/2014/10/6899296f63e5d46030d916f2bc0b94c4.pdf2014年11月23日閲覧 
  5. ^ a b c 藪本 2002, pp. 43–44.
  6. ^ a b c PLAYはくさん 桑島化石壁から魚類の新種化石が発見されました!”. 白山市地域振興公社. 2014年11月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月23日閲覧。
  7. ^ 新種化石09「桑島化石壁産出の魚類化石に学名がつきました」”. 白山市 (2022年2月8日). 2023年11月15日閲覧。

参考文献

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関連項目

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