ゴッホ 最期の手紙
『ゴッホ 最期の手紙』(ゴッホさいごのてがみ、Loving Vincent)は、2017年のポーランド・イギリス・アメリカ合衆国のアニメ・伝記・ドラマ映画。監督はドロタ・コビエラとヒュー・ウェルチマン。画家のフィンセント・ファン・ゴッホの生涯とその死を描いている。史上初の全編絵画の長編アニメーション映画である[8]。ポーランド映画協会からの資金提供のほか、Kickstarterのキャンペーンによる支援も受けた[9]。
ゴッホ 最期の手紙 | |
---|---|
Loving Vincent | |
監督 |
ドロタ・コビエラ ヒュー・ウェルチマン |
脚本 |
ドロタ・コビエラ ヒュー・ウェルチマン ヤツェク・デネル |
製作 |
ヒュー・ウェルチマン ショーン・ボビット イヴァン・マクタガード |
製作総指揮 |
クローディア・ブリュームフーバー ガード・シェパーズ イアン・ハッチンソン シャーロッテ・ウベン ラウリー・ウベン エドヴァルト・ノルトナー デヴィッド・パーフィット |
出演者 | |
音楽 | クリント・マンセル |
撮影 |
トリスタン・オリヴァー ウカシュ・ジャル |
編集 |
ユスティナ・ヴィエルシンスカ ドロタ・コビエラ |
製作会社 |
BreakThru Productions Trademark Films |
配給 |
アルティトゥード・フィルム・ディストリビューション ネクスト・フィルム[1] パルコ |
公開 |
2017年6月12日 (アヌシー)[2] 2017年9月22日 2017年10月6日[1] 2017年10月13日[3] 2017年11月3日 |
上映時間 | 95分[4] |
製作国 | |
言語 | 英語 |
製作費 | $5,500,000[5] |
興行収入 |
$30.2 million[6] 1.5億円以上[7] |
2008年当初は7分の短編映画として構想されていたが[8]、画家でもあるコビエラが技法とファン・ゴッホの物語を学んだことにより長編化が実現した[10]。
6万5000フレームに及ぶこの映画は125人の画家で構成されたチームによりファン・ゴッホと同じ技法を用いてキャンバス上に油絵で描かれ、制作された[11]。プレミア上映は2017年のアヌシー国際アニメーション映画祭で行われた[2]。第30回ヨーロッパ映画賞長編アニメ映画賞を受賞し、また第90回アカデミー賞長編アニメ映画賞にもノミネートされている。
ストーリー
編集この作品記事はあらすじの作成が望まれています。 |
キャスト
編集括弧内は日本語吹替声優である[12]。
- フィンセント・ファン・ゴッホ: ロベルト・グラチーク(三宅健太) - 自殺したとされる画家。回想シーンのみ登場。
- アルマン・ルーラン: ダグラス・ブース(山田孝之) - フィンセントから弟テオに宛てた手紙を届けようとする青年。
- ポール・ガシェ: ジェローム・フリン(村治学) - フィンセントの主治医。フィンセントの芸術家仲間。
- マルグリット・ガシェ: シアーシャ・ローナン(伊藤かな恵) - ポールの娘。
- ルイーズ・シュヴァリエ: ヘレン・マックロリー(幸田直子) - ガシェ家の家政婦。
- 郵便配達人ジョゼフ・ルーラン: クリス・オダウド(イッセー尾形) - アルマンの父親。郵便局長。フィンセントの友人。
- タンギー爺さん: ジョン・セッションズ(鈴木清信) - パリの画材屋。
- アドリアーヌ・ラヴー: エレノア・トムリンソン(冬馬由美) - フィンセントが滞在していた宿屋の娘。
- 貸しボート屋: エイダン・ターナー(丸山壮史)
- ドクター・マゼル: ビル・トーマス (板取政明)
- ミリエ少慰: ロビン・ホッジス (塩見宗真)
- ポール・ゴーギャン: ピョートル・パムワ (落合福嗣)
- テオ: ツェザリ・ウカシェヴィチ (中村公彦)
- ヨー: ボジェナ・ベルリンスカ=ブリゼック (水瀬郁)
- ズアーブ兵: ジョッシュ・バーデット (平修)
- ラ・ムスメ: ホリー・アール (島野愛野)
- その他の日本語吹き替え = 梅村紗瑛/山下直卓/速水達也/西岡麻衣/寺下由夏/坂田将吾
製作
編集映画製作者たちはセルアニメーターではなく古典的な技術を持つ画家の起用を選択した。ウェルチマンは「パーソナライズされたスタイル」のアニメーターを避け、「非常に純粋な油絵画家」である人々を選んだと述べた[13]。合計で20カ国以上から125人の画家の招集が計画されていたが、資金調達の難航によりスタッフの作業時間は短縮された。応募者は約5000人におよび、その多くはオンライン上の求人広告により興味を持った者だった[13]。
制作はグリーンスクリーンで実際にキャストに演じさせて開始された。撮影終了後、各フレームはキャンバス上に投影され、画家たちがそれに合わせて描画した。キャストの撮影から絵画の完成までの全過程には4年を要し、ウェルチマン自身も「我々はこの120年で最も遅い映画制作法を発明した」と振り返った[14]。
評価
編集興行収入
編集2018年1月28日までに全世界で約3020万ドルを売り上げている。アメリカ合衆国とカナダで併せて約650万ドル、韓国で約290万ドル、イタリアで約150万ドル、中国で約1080万ドルに達している[6]。
批評家の反応
編集Rotten Tomatoesでは125件のレビューで支持率は83%、平均点は7.1/10となっている[15]。またMetacriticでは21件のレビューで加重平均値は62/100と示されている[16]。
受賞とノミネート
編集年 | 賞 | 部門 | 対象 | 結果 | 参照 |
---|---|---|---|---|---|
2017 | ヨーロッパ映画賞 | 長編アニメ映画賞 | 『ゴッホ 最期の手紙』 | 受賞 | [17] |
ハリウッド・ミュージック・イン・メディア賞 | 作曲賞 | クリント・マンセル | ノミネート | [18] | |
フロリダ映画批評家協会 | アニメーション映画賞 | 『ゴッホ 最期の手紙』 | ノミネート | [19][20] | |
2018 | ゴールデングローブ賞 | アニメ映画賞 | ドロタ・コビエラ ヒュー・ウェルチマン |
ノミネート | [21] |
セントルイス映画批評家協会 | アニメ映画賞 | ノミネート | [22] | ||
ワシントンD.C.映画批評家協会賞 | アニメ映画賞 | ノミネート | [23] | ||
サテライト賞 | アニメーション・ミックスメディア映画賞 | 『ゴッホ 最期の手紙』 | ノミネート | [24] | |
ボストン映画批評家協会 | アニメ映画賞 | 2位 | [25][26] | ||
クリティクス・チョイス・アワード | アニメ映画賞 | ドロタ・コビエラ ヒュー・ウェルチマン |
ノミネート | [27] | |
アカデミー賞 | 長編アニメ映画賞 | ドロタ・コビエラ ヒュー・ウェルチマン イヴァン・マクタガード |
ノミネート | ||
アニー賞 | 長編インディペンデント作品賞 | ヒュー・ウェルチマン イヴァン・マクタガード |
ノミネート | [28] | |
アニメ映画音楽賞 | クリント・マンセル | ノミネート | |||
アニメ映画脚本賞 | ドロタ・コビエラ ヒュー・ウェルチマン ヤツェク・デネル |
ノミネート | |||
英国アカデミー賞 | アニメ映画賞 | コビエラ ヒュー・ウェルチマン イヴァン・マクタガード |
ノミネート | [29] | |
ノーステキサス映画批評家協会 | アニメ映画賞 | ドロタ・コビエラ ヒュー・ウェルチマン |
2位 | [30] | |
セントルイス映画批評家協会 | アニメ映画賞 | ノミネート | [31] | ||
フェニックス映画批評家協会 | アニメ映画賞 | 『ゴッホ 最期の手紙』 | ノミネート | [32] | |
EDA賞 | アニメ映画賞 | 受賞 | [33] | ||
デンバー映画批評家協会 | アニメ映画賞 | ノミネート | [34] | ||
ジョージア映画批評家協会 | アニメ映画賞 | ノミネート | [35] | ||
美術監督組合 | アニメ映画プロダクションデザイン賞 | マシュー・ボタン | ノミネート | [36] | |
ゴールデン・イーグル賞 | 外国語映画賞 | 『ゴッホ 最期の手紙』 | 受賞 |
出典
編集- ^ a b “LOVING VINCENT IS RELEASED IN POLAND, CANADA AND VIETNAM”. Loving Vincent. 19 November 2017閲覧。
- ^ a b “‘Loving Vincent’ Gets Standing Ovation at Annecy”. Variety (14 June 2017). 7 September 2017閲覧。
- ^ “Loving Vincent”. Altitude. 18 August 2017閲覧。
- ^ “LOVING VINCENT (12A)”. British Board of Film Classification. 30 August 2017閲覧。
- ^ “Van Gogh, a new film and a tantalising question: was Vincent murdered?”. The Daily Telegraph (27 June 2016). 3 July 2017閲覧。
- ^ a b “‘Loving Vincent’ Passes $20 Million at Worldwide Box Office”. Variety. 11 December 2017閲覧。
- ^ 『キネマ旬報』2019年3月下旬特別号 p.69
- ^ a b Macdonald, Fiona (16 October 2017). “Loving Vincent: The film made entirely of oil paintings”. BBC. 21 October 2017閲覧。
- ^ “Watch the Mesmerizing Trailer for a Movie About Van Gogh Fully Animated From Oil Paintings”. Slate (29 February 2016). 2 March 2016閲覧。
- ^ “An interview with ‘Loving Vincent’ director Dorota Kobiela” (英語). The Daily Californian. (2017年9月28日) 2018年1月17日閲覧。
- ^ “How do you paint 65,000 pictures like Van Gogh?”. BBC (29 October 2016). 2 December 2016閲覧。
- ^ “CAST”. 2018年2月25日閲覧。
- ^ a b “‘Loving Vincent’: 6 Facts About The First Oil Painted Animated Feature”. Cartoon Brew. 26 October 2017閲覧。
- ^ “"Loving Vincent" Van Gogh: How the world's first hand-painted film was made” (英語). CBSニュース. (2017年10月21日) 2020年4月22日閲覧。
- ^ “Loving Vincent Movie Reviews”. Rotten Tomatoes. 14 November 2017閲覧。
- ^ “Loving Vincent Reviews”. Metacritic. 14 November 2017閲覧。
- ^ “European Film Awards Nominations: ‘The Square’, ‘Loveless’, ‘On Body And Soul’ & More”. Deadline. 2018年2月25日閲覧。
- ^ Pond, Steve (26 October 2017). “Hollywood Music in Media Awards Announces Nominees in Film, TV, & Video Game Music”. Shoot Online. 26 October 2017閲覧。
- ^ “‘The Shape of Water’ Leads 2017 Florida Film Critics Awards Nominations”. Florida Film Critics Awards (December 23, 2017). December 20, 2017閲覧。
- ^ “‘Dunkirk’ Wins Top Prizes in 2017 Florida Film Critics Awards”. Florida Film Critics Awards (December 23, 2017). December 23, 2017閲覧。
- ^ “Golden Globes Winners: Complete List”. Variety (January 7, 2018). January 8, 2018時点のオリジナルよりアーカイブ。January 8, 2018閲覧。
- ^ Amidi, Amid (December 12, 2017). “Annual StLFCA Awards”. Sf. Louis Film Association. December 12, 2017閲覧。
- ^ Brown, Tracy (December 7, 2017). “The 2017 WAFCA Awards”. Washington D.C. Film Critics Association December 6, 2017閲覧。
- ^ Pond, Steve (28 November 2017). “‘Dunkirk,’ ‘The Shape of Water’ Lead Satellite Award Nominations”. TheWrap. 29 November 2017閲覧。
- ^ “Boston Society of Film Critics - Current Winners”. Boston Society of Film Critics (December 10, 2017). December 10, 2017閲覧。
- ^ “Boston Society of Film Critics - Past Award Winners”. Boston Society of Film Critics (December 10, 2017). December 10, 2017閲覧。
- ^ “Critics' Choice Awards: 'The Shape of Water' Leads With 14 Nominations”. The Hollywood Reporter (December 6, 2017). December 6, 2017閲覧。
- ^ Hipes, Patrick (4 December 2017). “Annie Awards: Disney/Pixar's 'Coco' Tops Nominations”. Deadline.com. 4 December 2017閲覧。
- ^ Tartaglione, Nancy (January 9, 2018). “‘The Shape Of Water’ Leads BAFTA Film Awards Nominations – Full List”. Deadline.com. January 9, 2018閲覧。
- ^ Tapley, Kristopher (December 23, 2017). “Best of 2017 from the NTFCA”. North Texas Film Critics Association. December 23, 2017閲覧。
- ^ Amidi, Amid (December 12, 2017). “Annual StLFCA Awards”. Sf. Louis Film Association. December 12, 2017閲覧。
- ^ Amidi, Amid (December 14, 2017). “Phoenix Film Critics Society”. 2017 Awards NOMINATIONS. December 14, 2017閲覧。
- ^ “2017 AWFJ EDA Award Nominees”. 女性映画ジャーナリスト同盟 (January 3, 2018). January 3, 2018時点のオリジナルよりアーカイブ。January 3, 2018閲覧。
- ^ “‘Call Me By Your Name’ Leads Denver Film Critics Society (DFCS) Nominations”. Awards Watch (January 9, 2018). January 9, 2018閲覧。
- ^ “2017 Awards”. ジョージア映画批評家協会 (January 8, 2018). January 8, 2018閲覧。
- ^ “Art Directors Guild Awards: 'Dunkirk,' 'Shape of Water,' 'Blade Runner 2049' Among Nominees”. The Hollywood Reporter (January 9, 2017). January 9, 2017閲覧。