ゲイリー・マーカス
ゲイリー・フレッド・マーカス(Gary Fred Marcus 、1970年2月8日- )は、アメリカ合衆国の認知科学者、実業家、作家である[1][2]。人工知能分野での実績で知られる[3]。
マーカスはニューヨーク大学の教授であり、2014年には機械学習企業である「Geometric Intelligence」を創設した[4][5] 。
来歴
編集マーカスはハンプシャーカレッジで認知科学を専攻し[6]、マサチューセッツ工科大学の修士課程に進み、形態論や子供の言語習得についての研究を行った[7][8]。博士課程ではスティーブン・ピンカーに師事した[9]。
2015年には、機械学習企業である「Geometric Intelligence」を共同で創設した。2016年に同社がUberに買収されると、マーカスは同社のAIチームのディレクターになった。2017年に同社を退職したが、アドバイザーの立場に留まった[10][11]。
2019年、マーカスはスタートアップの「Robust AI」を、iRobotの共同創設者でルンバの開発に貢献したロドニー・ブルックスとともに創設した。Robust AIはサードパーティのゲーム開発者が利用できるゲームエンジンと同様の形態の、実用的な自律型ロボット向けの機械学習プラットフォームの構築を目指している[12][9]。
人物
編集人工知能についての見解
編集マーカスは人工知能を巡る誇大広告への批判で知られており、人工知能の規制、大衆のAIリテラシーの向上と、潜在的なAIリスクを検討するための十分な資金力のある公共シンクタンクを提唱している[13]。現在のAIは、特にバイアスに起因するリスクを含んでいるかもしれない顔認識、スクリーニングなどの分野で未熟なままで運用されており、それは現在の深層学習の技術が正確性を担保する形式的な検証を行うことができないためであると主張している[14]。
マーカスは現在の大規模言語モデルは「言語の理解というよりも言語の利用の近似」であると分析している[9]。
マーカスは「信頼できないが、広く普及した平凡なAI」による短期的なリスクを指摘しており[15]、2023年3月にはイーロン・マスク、スティーブ・ウォズニアック、ヨシュア・ベンジオ、スチュアート・ラッセルらの著名人や専門家とともに、適切なセーフガードが実装可能になるまで、最新の大規模言語モデルであるGPT-4より強力なAIの訓練を少なくとも6ヶ月停止するように要請した[16][17][18]。
脚注
編集- ^ “50歳と65歳の熟年コンビが設立のロボット企業、Robust.AIが16億円調達”. Forbes. 2023年5月23日閲覧。
- ^ “Machines that think like humans: Everything to know about AGI and AI Debate 3” (英語). ZDNET. 2023年1月11日閲覧。
- ^ “Gary Marcus”. The New Yorker. 2023年5月23日閲覧。
- ^ Etherington, Darrell (2016年12月5日). “Uber acquires Geometric Intelligence to create an AI lab” (英語). TechCrunch. 2023年1月11日閲覧。
- ^ “Uber Bets on Artificial Intelligence With Acquisition and New Lab” (英語). The New York Times. (2016年12月5日). ISSN 0362-4331 2018年5月20日閲覧。
- ^ “Gary Marcus 86F” (英語). Hampshire College. 2023年1月11日閲覧。
- ^ Marcus, Gary F. (1993-01-01). “Negative evidence in language acquisition” (英語). Cognition 46 (1): 53–85. doi:10.1016/0010-0277(93)90022-N. ISSN 0010-0277. PMID 8432090 .
- ^ Marcus, Gary F. (1995). “Children's overregularization of English plurals: a quantitative analysis*” (英語). Journal of Child Language 22 (2): 447–459. doi:10.1017/S0305000900009879. ISSN 1469-7602. PMID 8550732 .
- ^ a b c Anadiotis, George (November 12, 2020). “What's next for AI: Gary Marcus talks about the journey toward robust artificial intelligence” (英語). ZDNet. 2023年3月30日閲覧。
- ^ Bhuiyan, Johana (2017年3月8日). “Uber's new head of its AI labs has stepped down from his role” (英語). Vox. 2023年3月30日閲覧。
- ^ Fried, Ina (2017年3月8日). “The head of Uber's AI labs is latest to leave the company” (英語). Axios. 2023年3月30日閲覧。
- ^ Feldman, Amy. “Startup Founded By Cognitive Scientist Gary Marcus And Roboticist Rodney Brooks Raises $15 Million To Make Building Smarter Robots Easier” (英語). Forbes. 2023年3月30日閲覧。
- ^ Marcus, Gary (2022年8月7日). “Siri or Skynet? How to separate AI fact from fiction” (英語). The Observer. ISSN 0029-7712 2023年3月31日閲覧。
- ^ Georges, Benoît (November 26, 2019). “" Les machines ne savent pas gérer les situations imprévues "” (フランス語). Les Echos. 2023年3月30日閲覧。
- ^ Marcus, Gary (March 28, 2023). “AI risk ≠ AGI risk” (英語). The Road to AI We Can Trust. 2023年3月30日閲覧。
- ^ “イタリア当局、人工知能チャットボット「ChatGPT」を一時的にブロック”. BBC. 2023年4月5日閲覧。
- ^ “Musk, scientists call for halt to AI race sparked by ChatGPT”. The Asahi Shimbun. 2023年4月5日閲覧。
- ^ “Letter signed by Elon Musk demanding AI research pause sparks controversy”. The Guardian. 2023年4月5日閲覧。
外部リンク
編集- ウィキメディア・コモンズには、ゲイリー・マーカスに関するカテゴリがあります。
- イタリア語版ウィキクォートに本記事に関連した引用句集があります:Gary Marcus
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