カゴノキ(鹿子の木[7]学名: Litsea coreana)はクスノキ科ハマビワ属の樹木。暖地の常緑樹林に生える。大きくなると樹皮が鹿の子模様になる。

カゴノキ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : モクレン類 Magnoliids
: クスノキ目 Laurales
: クスノキ科 Lauraceae
: ハマビワ属 Litsea
: カゴノキ L. coreana
学名
Litsea coreana H.Lév. (1913)[1]
シノニム
和名
カゴノキ

名称

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和名は「鹿子の木」の意であり、樹皮の様子が鹿の子模様を思わせることによる[7][8]。別名にコガノキ[7]、カゴカシ、カノコガがある[9]中国名は、鹿皮斑木橿子(別名:朝鮮木姜子)[1]

分布と生育環境

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日本では本州関東福井県以西、四国九州に、それに朝鮮南部に分布する[10][7]

湿潤な傾斜地を好むが環境適応力は広く、成長は早い[11]タブノキシイカシ類の林に混成することが多く、また四国の瀬戸内海沿岸には群生が多い[12]

形態・生態

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常緑性高木で、大木になる[13]。高さ20メートル (m) [7]、胸高直径は60センチメートル (cm) に達することもある。樹皮は紫黒色から淡灰黒色だが、鱗片となって薄く剥がれるため斑模様になる[7]。新枝は褐緑色で毛がなく[7]、その表面にはその年の内に長楕円形の皮目が出来る。

冬芽は黄褐色で、葉芽は細長い披針形、花芽は球形である[7]頂芽(葉芽)と側芽はほぼ同じ大きさで[7]鱗片が覆瓦状に並んでおり、先端はやや尖る。鱗片は先端が丸く、背面には絹毛を密生する。また鱗片の色は褐色[10]。丸い花芽は葉の基部や枝に直接数個つく[7]

は枝先に集まって互生に出て葉柄がある[7]葉身は長楕円形から倒卵状披針形で、長さ5 - 9 cmで、葉柄は8 - 15ミリメートル (mm) 、先端は少し突き出してその先端は鈍く尖る。基部側は幅広い楔形。葉の縁は滑らかになっている。質は薄い革質[7]。葉の裏面は当初は絹毛があるが、すぐに無くなって両面とも無毛となる。葉の表側は緑色で裏側は粉白色になっている。

雌雄異株で花期は9月。花芽は葉腋から3 - 4個纏めて出て球形をしており、柄はない。花序が出るのは枝の先端より下方、葉のない部分から葉のある部分の下の方にかけてから出る[10]。花は散形花序をなし、基部に総苞片がある。花序には数個の花が含まれ、花は黄色、雄花序は大きくてより多くの花が付き、雌花序はより小さく、含まれる花の数も少ない[10]

雄花序の総苞片は4枚あり、楕円形で長さ3.5 - 4 mm。花柄は太くて長さ3 mm、毛があり、花床は皿状になっている。花被は6枚あって楕円形で長さ3 mm。雄しべは9本、長さ6 mm、花糸は毛があり、葯は4つの弁があって開く。内側に位置する3本の雄しべの基部にはそれぞれ2個の腺体がある。雌しべは1つ、長さ1.5 mmで先端が尖り、稔性はない。

雌花序の総苞片は4枚で円形になっており、長さ2.5 - 3.5 mm。花柄は太くて花床は皿状になっている。花被片は6枚あり、長楕円形で長さ1.5mmで反り返る。仮雄しべは9本あって糸状で毛があり、内側3本の基部にはそれぞれ2つの腺体がある。雌しべは1つで長さは3 mm、子房は球形で、花柱は長さ2mmで柱頭は広がって裂け、その裂片は反り返る。果実は年を越えて次の夏に赤く熟す。果実は楕円形で長さ9 mm、果柄は太くて長さ5 - 8 mm、幅2 mm。果柄の先端は肥厚する[10]。花床は浅く裂けて皿状となる。これはバリバリノキなどでは果実の基部を包むが、本種では包まない。

類似種など

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ハマビワ属には世界的には種数が多いが、日本では4種のみ知られている。そのうち、アオモジ L. citriodora落葉樹で、葉が薄いうえにつやもない。逆にハマビワ L. japonica は海岸地域に多い種で、葉が厚いうえに裏面に綿毛が密生している。したがって、この2種は本種とあまり似ていない。もう1種のバリバリノキ L. acuminata は常緑高木だが、葉が細長いうえに先端が長くとがり、長さ10-15cmにもなる[14]ので、これも見間違えることはない。

外見的にはタブノキアオガシも似ているが、本種では葉の基部が葉柄に流れないのがよい区別点となる[11]

利用

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材は器具や楽器、建材や薪炭などに用いられる[15]。床柱に使われることもある[12]

出典

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  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Litsea coreana H.Lév. カゴノキ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年7月11日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Litsea lancifolia auct. non (Roxb. ex Nees) Fern.-Vill. カゴノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年7月11日閲覧。
  3. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Litsea zuccarinii Kosterm. カゴノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年7月11日閲覧。
  4. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Actinodaphne lancifolia (Blume) Meisn. カゴノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年7月11日閲覧。
  5. ^ Actinodaphne lancifolia (Sieb. & Zucc.) Meisn.”. Global Biodiversity Information Facility. 2017年9月4日閲覧。
  6. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Litsea orientalis C.E.Chang カゴノキ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年7月11日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j k l 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 237
  8. ^ 鹿子の木(カゴノキ)とは - コトバンク”. 朝日新聞社. 2017年9月4日閲覧。
  9. ^ カゴノキ(鹿子の木) - コトバンク”. 朝日新聞社. 2017年9月4日閲覧。
  10. ^ a b c d e 佐竹他編(1999),p.123
  11. ^ a b 邑田(2004)p.116
  12. ^ a b 菱山監修(2011)p.104.
  13. ^ 以下、主として北村・村田(1986),p.186-187
  14. ^ 佐竹他編(1999),p.122-123
  15. ^ 北村・村田(1986),p.187

参考文献

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  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、237頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 北村四郎村田源、『原色日本植物図鑑・木本編II』改訂14刷、(1989)、保育社
  • 佐竹義輔他編、『日本の野生植物 木本編 I』新荘版、(1999)、平凡社
  • 菱山忠三郎監修、『樹皮・葉でわかる 樹木図鑑』、(2011)、成美堂出版
  • 邑田仁監修、『新訂 原色樹木大圖鑑』、(2004)、北隆館